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東井悠友林


   ~ 続けたい人間関係 ~
     201327日記)                            
                                          当法人理事長
                                             東井 朝仁
東井朝仁氏写真


「続けられるバイトより、続けたいバイトがいい」。
どこかでこのコピー(宣伝文句)をご覧になった方もおられるでしょう。
私は、今日(2月7日)の帰りの田園都市線の車中で、何気なく目にしました。
「最近のつまらない広告が氾濫する中で、なかなか決まっているじゃないか!」と感心。
この広告主はアルバイト人材派遣会社(と思う)。
人材派遣会社の元祖・リクルートから始まって、やはりこの手の業界はコピーが上手いで
すね。
私は「続けられる仕事より、続けたい仕事がいいよな」と一人読み替えをしながら、我が
身の37年間の役人生活を想い出し、思わず苦笑。以前にも述べましたが、若い頃は霞ヶ関
を「つまらない、変化のないルーテイン・ワークの毎日。国家公務員試験の資格序列で将
来が決まってしまっている、希望のない職場」と痛感していたので、年中、転職を考えて
いました。その転職先の職種の一つとして、コピーライターも考えていたので、24~5歳
の頃、退庁後に午後8時から始まる、銀座の「久保田宣伝研究所」の講習に通学していま
した。
この研究所は日本初のコピーライター養成学校で、毎回の授業は将来のプロを目指す意欲
に満ちた若い男女で溢れかえっていました。
4月から週一でスタートした講座も、6月の入梅の頃を迎えていたある日、斯界では著名な
講師が、突然「それでは、今日は創作にしましょう。最近、日本にもワイシャツ(白シャ
ツ)に混じって、カラーシャツがビジネス社会でも普及してきましたが、このカラーシャ
ツを買い手に訴求する、新聞を媒体としたコピーを、今から10分以内に考えてください」
と指示。
すると皆、配付された紙を睨みながら、真剣に沈思黙考しています。
私は、「どうってことないな。閃きだよ、ヒラメキ」と斜に構え、いまの梅雨の時期を考
慮してさらさらと、こう書きました。
「雨の日は、カラーシャツが良く映える」と。
そして前の方から順番に各人の出来栄えを覗きこみながらやってくる講師を、やや胸をと
きめかして待っていました。
そして私の席のところで、しばし佇んで・・・。ということはなく、チラリと覗きこんで、
すぐに他の席に歩を進めていったのです。
それでも「少しは脳裏に刻み込まれているだろう」との期待を抱きながら、黒板に書かれ
る優秀作の発表を待ちました。
「皆さんよく考えています。でも無難と言うか印象に残るものがないなあ・・。その中で、
ちょっとおもしろかったのはこれです」と言ってチョークを黒板に走らせました。
書かれたのは「白もカラーのうち!」
カラーシャツも良いけど、ワイシャツ(ホワイト・シャツ)もカラーの王道だよ、と逆説
的にシャツの原点・基本の魅力を相対的に浮き立たせたかったのでしょう。
私は「だからどうだというんだ・・・・」と腑に落ちない気持で、少し悩みました。
その後、夏休みを挟んで休講になり、いつしか足も遠のいて受講生を辞め、この時点で
「続けたい仕事」への願望の一つは消去されたのです。

役所は余ほどのことがない限り、免職や停職はありません。
出来が悪いからと言って陰湿なパワハラなどで、「自己都合退職」に追い込まれることは
なく、せいぜい閑職への人事異動。本人は「楽珍な仕事で給料はかわらないもねー」と、
痛くもかゆくもありません。だから現在でも「続けたい情熱」など露ほどもなくても「仕
事を続けられる」のです。
独断と偏見で言わせていただくと、税金と国債で給与が担保されている日本中の公務員や、
役所から補助金や助成金を貰い、あるいは法律で規定されて手数料等を得られる行政関係
団体に勤める多くの勤労者(天下り者)が、ノウノウとして「仕事を続けられる」社会と
言うのは、まさに共産圏国家の構造を想起してしまいます。
自分達だけは「社会主義的制度」を享受し、その他の圧倒的民間人は「資本主義・市場主
義」の生存競争にさらされている日本。
はてさて、改革なくしてこの構造はいつまで続くことやら、です。

話は変わって。
今週の月曜日の夕方は、「一般社団法人・東井悠友林」の初顔合わせ・交歓会を南青山会
館で開催しました。
1時間のミーテイングの後は、会場を和室の大広間に替えて2時間にわたる交歓会でした。
まずは、一部の方々に入会のお誘いをさせていただいたのですが、殆どの方が快諾され、
正会員40名ほど、賛助会員10名ほどが入会いたしました(当初の目標予定数は30名でし
た)。
賛助会員の方は遠方の地方在住の方が殆ど。正会員は東京在住の方が多いですが、それで
も4~5名の方は地方在住。
そうした構成の中、30名近い方々が参集し、とても和気あいあいとした楽しいひと時を過
ごすことが出来ました。
表参道に向う帰りの夜道、私は春を思わせるぬるい夜風に吹かれながら、ミーテイングで
の挨拶の中でもう少し話したかったことを想い出していました。
それは、俳優であり農業生産法人代表でもある菅原文太さんが、昨年「いのちの党」を結
成された時、「どのような党ですか?」との記者の質問に「同じ志を持つサムライたちの
緩(ゆる)やかな集まり」と答えていたことです。
まさに、当法人の性格の一端と同質なことを述べておられるな、と嬉しく思ったのです。
また、現在読んでいる「歌、いとしきものよ」(星野哲郎著・岩波書店)の中で、星野氏
はこう書いています。
「作曲家の巨匠・吉田正氏と京都の大文字送り火の見物にご一緒し、納涼席にいた間中、
挨拶に訪れる方が絶えなかった。吉田先生は「ここの席に来るのは30年間、不動のメンバ
ーだよ」とおっしゃられていた。
30年間の御縁・友情。
嘘や我慾があったら続かない」と星野氏は感心・感動されていました。

「続けられる人間関係より、続けたい人間関係を大切にしたい!」
下手なコピーで結語といたします。
     

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