今日は5月1日。
先ほど午後1時ごろ、昼食をとるために青山通りを1丁目交差点(ホンダ本社ビル前)
から外苑方向に歩いていると、遠くから何やらシュプレヒコールらしき拡声器の音が
聞こえてきます。
外苑前の交差点で立ち止まって見ていると、労働組合の旗や幟(のぼり)を先頭に、
デモ行進の列が次々に通り過ぎて行きます。
今日の天候は晴れ。気温は25度近くあるでしょう。もう夏日です。
私はサマ―ジャケットを脱いで、「全厚生」(注・現在もこの名称なのか定かではな
いが、厚生労働省(旧厚生省)の労働組合の集団)の一団が来るかどうかしばし眺め
ていましたが、残念ながら見当たらず。
とうに通り過ぎていったのでしょう。
12時のNHKニュースを見ていたら、「全労連」(注・共産党系の労働組合の全国組織)
主催のメーデー中央集会が代々木公園で開催され、主催者発発表で約2万名の参加者と
の報道が。
確かだいぶ前から、労働者の祭典・メーデーは「連合」(旧社会党系労働組合の全国
組織)と全労連が対立して分離開催されており、それも連合主催のメーデーは「お祭
り」の趣旨に重きを置いて、5月1日ではなくその前の土曜日などの休みの日に開催さ
れていました。
各官庁の労働組合の多くが加盟している「全労連」は、メーデーの歴史的意義を踏ま
えて5月1日に実施しているようです。
だからシュプレヒコールの内容も「賃金を上げろ!」といった従来からの普遍的な労
働者のスローガンと共に、「原発をなくせ!」「憲法改悪反対!」といった、時局を
反映したテーマも叫ばれています。
それにしても、参加者が少なくなったようです。それも若者の参加が。
街宣車のスピーカーから流れる、女性の元気なシュプレヒコールの声だけが風に空し
くかき消され、街宣車に引きずられるようにノロノロと行進している参加者は、殆ど
が中高年。
私がメーデーに毎年参加していた頃は、代々木公園から青山通りに出て、表参道、外
苑前、青山1丁目、赤坂見附とたどり、国会・議員会館前を通り、虎ノ門、新橋まで行
進したものですが、今日のそれは外苑前を神宮球場の方へ左折していたので、大幅に
デモ行進の距離が短縮されたようです。
主催者側が参加者の疲労を考慮したのか。それとも警察(国家)の許可が降りないの
か。
それでも、外苑前の地点で、すでに皆さんくたびれた表情で、シュプレヒコールを唱
和する人は皆無。
かっては、各組合が競い合って創作した張りぼての神輿を担ぐ光景も皆無(プラカー
ドはありました)。
メーデーに関する歌を合唱しながら行進を行っている一団も、皆無。
これではメーデーに参加した手ごたえや喜びは感じられないでしょう。
近年は労働組合に加入する若者が激減し、どの組合も組織率の低下に苦慮している現
状なので、まだメーデーの体をなしているだけヨシ、とするところでしょうが。
それにつけても全国の労働組合の役員たちや、各組合を指導する人々の指導力不足は
否めず、「あんたら、社会党でも共産党でも公明党でもいいが、全国の労働組合を大
同団結させる者が、この日本で誰もいないのか?!」と、腹立たしくなります。
それ以上に、昼食を終え、加え楊枝で「今日はメーデーかよ?」などと傍観している
若い人々や、自分はさも経営者側であるかのように「賃金を上げたら、会社の自己資
本比率が悪化し、結局は会社倒産につながるのが、彼らにはわからないのかねえ。組
合なんて権利ばかり主張してる馬鹿連中ばかりだ」などと、酒の席で気炎をあげてい
る中年の連中には、情けなくなります。
私は以前から一貫して自己のスタンスを述べていますが、政治でも宗教でも一党一宗
派に与(くみ)する気持は全くありません。党員や信者になることはなおさらです。
しかし、自己の信条に照らし合わせて「総論」で大同団結することが、自己実現や社
会の平和と発展のために必要な場合は、積極的に関わっていくことが民主主義の社会
を守る上で好ましいことだと、私は思っています。
その総和となるキーワードは、私にとっては「恩愛」。
だから、私は労働組合活動もすすんで行ってきました。
どこかの政党や宗派に加盟させ、社会を制覇することを究極の目的にするのではなく、
社会的に弱い立場にいる人、経済的に困っている人、孤独な毎日を送っている人など
に対し、「皆が協力して助け合っていこう」という極めて単純な信念から、組合活動
を行ってきたのです。
政治も宗教も、会社も地域組織も、その寄って立つ精神と活動の中から、人へのいつ
くしみや情けが消失したら、単なる利己的・排他的・暴力的集団に堕してしまうでし
ょう。
今の日本は、まさに我利我欲の集団ばかりの様な気がしてなりません。
青空のもと、ヨロヨロしながらもデモ行進をしているメーデー参加者を眺めながら、
シュプレヒコールのマイクで「世界をつなげ、花の輪に!」とか、フオークソング
「若者たち」の歌をリードしながら先頭を切って行進する、かっての自分の面影をダ
ブらせていました。
そして「全厚生」の一団が見えたら、周囲の見境もなく「がんばれよ〜!」と大声を
かけようと心をときめかせていたのですが、かないませんでした。
いずれにしろあと数年すると、メーデーは全国高齢者・年金受給者のデモ行進の日に
なるのかも知れません。
「私には、批判するほどの若さはもう無い。
でも何かをするほどの若さは残っている」
どこかで聞いたこんな言葉を、ふっと思い出した2014年のメーデーでした。
それでは良い週末を。