暑中お見舞い申し上げます。
連日、猛暑日(35度以上)とか真夏日(30度以上)が続いていますが、皆さんお元気
でお過ごしのことと思います。
さて、世界のあちこちでは、今日も一触即発で第三次世界大戦が勃発する危険をはら
んだ、予断を許さない紛争が続いています。
一方日本国内では、自公政権の独裁的な政治運営により、なし崩し的な集団自衛権の
行使容認や原発の再稼働の既定事実化が進み、弱少野党の多くは為す術もなくこれに
賛同するだけで、国会の無力化が進行しています。
また社会では、国からの膨大な研究費獲得を企図した理化学研究所の不正論文事件や、
各電力会社による原子力発電に伴う巨額の政治献金バラマキに象徴されるように、政
治家も研究者も企業家もモラルハザード(倫理の荒廃)に陥っているようです。
「サムライ・ジャパン」「思いやりと謙譲の美徳を持つ日本人」の潔い言葉は、何な
のか。
全く聞いてあきれる現状です。
さらに、危険ドラッグの蔓延や、女子高校生による残虐な殺人、猟奇的な保険金殺人、
ストーカ―殺人の多発、そして卑劣な詐欺・虚偽表示事件の激増、身勝手で危険な自
転車運転者の増加に見られる公衆道徳の著しい低下、何でも自己中心的に権利を主張
するモンスター・ペアレント等々の増殖。
このような現代の社会状況を見るにつけ、つくづくと「世も末」と痛感せざるを得ま
せん。
毎週のように日本列島を襲う台風や豪雨。
昔から、「政治や人心が荒廃する時代は、異常気象など天変地異が起こりやすい」と
言われていますが、「まさに、今がそれ」の感を否めません。
こうした嫌なことは、幾ら個人が抗(あらが)っても、詮無いこと。
最近の私は「これは時代の潮流であり、日本の歴史的バイオリズムの現象なのだろう」
と、諦観しています。
そして、先日述べた「調心」を図るための一方策として、以前にカルチャーセンター
で習っていた「篠笛」を再開しました。
今度はグループ・レッスンではなく、個人レッスン。
このため、昨日は午前11時に地下鉄「半蔵門駅」近くの教室に行ってきました。
先生は、福原道子氏。
You tubeで検索すると氏の演奏が聴けますし、氏の名声はまさに全国区です。
私の古い知人の紹介。
福原師は、人間国宝・福原百ノ助氏の御令嬢。
10数年前に、新宿住友ビルの「朝日カルチャーセンター」で初めて受講した篠笛教室
の講師が、福原師のお父上でした。
福原百ノ助氏とは、受講後数年たって、駒沢大学駅のホームで偶然にお会いし、立ち
話をしたことがありました。
昨日のレッスン後、福原師との雑談の中で、師の誕生年月日が私の配偶者と2日違いで
あること、さらに私の自宅は世田谷区上馬ですが、師のお住まいは近隣の下馬である
ことを知り、驚きました。
教室があるマンションを出ると、まさに猛暑。
そこで近くの蕎麦屋に入店し、ビールを飲みながら昼食。
店の名前は「長寿庵」。
日頃から、乃木坂長寿庵や青山長寿庵を馴染みにしているが、この店は初めて。
店内を眺めると、国立演芸場の八月の催し物のチラシが貼ってあります。
そこで店を出てから、歩いて5分程度の国立劇場に向かいました。
演芸場の切符は隣の国立劇場窓口で販売しているからです。
陽射しの強い坂道を下って行くと、ワイシャツ姿の若い男性が「こんにちは」と会釈
をしてすれ違って行きました。
振り返ると私以外に誰もいないので、「?・・」。
また進んでいくと、前から来た若い女性が「ご苦労様です」と言って、通り過ぎて行
きます。
「何だこれは?」と考え、はたと気づきました。
私の鞄から、黄色の風呂敷で包まれた篠笛が半分はみ出して見えるので、「演芸場の
関係者に見られたな」と推察。
満更でもありません。
国立劇場の前は広々として、緑陰が涼やか。
人影も日蔭のベンチで憩う数人以外は全くおらず、静寂に包まれていました。
私は落語寄席の切符を買い、また来た道を引き返し、途中にある喫茶店に入りました。
焦げ茶で統一された店内は、シックでモダンな雰囲気。
女性客が3人ほどいるだけ。
心地良い冷房の利いた空間で飲む熱い珈琲は、見事な美味しさ(500円の安さ!)。
10分もすると午後1時となり、店内は女性店員(経営者?)と私だけ。
まどろむような、心地良いジャズ音楽が低く流れています。
とても良い店。
店名は「半音」。
先ほどのレッスンでも、「半音」のところで音が上手く出ず、「先生、半音は難しい
ですね」と話したことを思い出しました。
何事も「固く柔らかく、柔らかく固く」を心がけること。
これが簡単なようで難しい。
まさにそれは「調心」の世界であることに気づきます。
さて、今日から八月。
あまり「本音」を感情のままに出さず、「半音」ぐらいが良いと自分に言い聞かせな
がら、この猛暑の季節をゆるやかに過ごしていきたい、と念じているのです。
それでは良い週末を。良い八月を。
(8月中のエッセイ配信は休みます)