耳を澄まして

「♪夢を失うよりも 悲しいことは、
自分を信じて あげられないこと、
私たちは誰も ひとりじゃない、
ありのままでずっと 愛されてる、
望むように生きて 輝く未来を・・・・」(「JUPITER」平原綾香・歌)

みな、何を考えているのだろう。
何に喜んで、何に悩んでいるのだろう。
何を目指して生き、何に絶望しているのだろう。
それとも、何も考えずに何も感じないままに生きているのだろうか。
たった一度の人生を。

人質の日本人を、いとも簡単に惨殺するテロ集団「イスラム国」の異常。
同様に、普通の女の子が普通の女性を、遊びの様に殺害した理由が「人を殺してみた
かったから」という異常。
危険ドラッグ服用者の暴走運転や愉快犯による、無辜(むこ)の子らへの無差別殺人。
匿名の大衆によるネット上の酷い他人攻撃。聞くに堪えないヘイト・スピーチ。
老人や女子供・弱者に対するイジメや虐待・性暴力・詐欺横領。
教師や宗教者や警察官などの、社会的聖職者による重犯罪。
超高齢社会を当て込んだ、詐欺まがいのサプリ商品の氾濫。
患者や要介護者を減らすことより、自分たちの利益確保に血眼になって
いるような医療や介護の世界。
後世を無視した国家予算の大盤振る舞いによる、国家財政の超赤字化。
災害大国を忘れ、今の利益のためにオリンピック施設建設や新幹線敷設、人とモノの
東京集中に狂奔する国や都や既得権益企業。
福島第一原発事故からたった3年の経過で、草木もなびく原発再稼働の風。
政権とそれに連なる勢力によると思われる、異様な朝日新聞バッシング=反政権勢力
の抑圧。
NHKテレビで爆笑問題(注・お笑いタレント)の発言の一部が「政権にとって不都合」
だったらしく、カット。強い者にはひれ伏し追従し、弱い者には上から目線で、御用
学者ばかり登用するマスコミ・・・・。

「いつか来た道=戦争への道」をひたすらに進む我が国の政治。
これらに誰も異を唱えない、唱えられない、沈黙の日本社会。
諦めと、無関心と、無作為に陥っている、末世(道義のすたれた時代)に生きる大衆。
それを象徴する出来事の一つが、昨年末の衆議院議員選挙における、全有権者の半数
近い人々の「棄権」。
「政権与党は支持しない。しかしどの野党も入れたいところがない」「選挙をしても、
何も変わらない」「どうでもよい」と。
結果的に、これらの無投票有権者の全てが、政権与党の現状を是認していることに。
やるせない、よるべない社会。
「沈黙は金?」
沈黙からは、何も生まれない。

今日も、家畜列車か奴隷列車のように混雑した通勤電車。
他人をかき分け、ひしめきあって乗りこむ、羊の群れの様な匿名の大衆。
息苦しくなるほど混み合いながらも、気味悪いほどの無言の車内。
立っている者も座っている者も、誰もが一様に黙々とスマホに向って。
老人がうずくまろうが、乳児を抱いた母親が立っていようが、目もくれず。
みな自分勝手、自分本位。
だが本当にそうなのだろうか。

みな、何を思っているのだろう。
何を感じているのだろう。
何を求めているのだろう。
何が幸せなのだろう。
何が悲しいのだろう。
私にはわからない。

余計なことを言わないで、自分のことだけを考えて生きるのが、現代の渡世術と割り
切っているのだろうか。
「人間は生まれた時から、死に向かって生きているのだ。
だから今さえ良ければそれでいいではないか。他人や明日のことなど、考えられない」
とばかりに。
それで面白いのか。悲しくないのか。後悔しないのだろうか。
私にはわからない。
わからない今の時代が、いつまで続くのだろうか?

「♪心の静寂(しじま)に 耳を澄まして、
私を呼んだなら どこへでもいくわ、
あなたのその涙 私のものに、
今は自分を 抱きしめて、 
命のぬくもり 感じて・・・」

何かを期待し、何かを語るほうが愚かなのだろうか。
私にはわからない。
わかるまで、私は耳を澄まし続けよう。

それでは良い週末を。