酒は良い酔い

今日は2月5日(木)。
現在の時刻は、午後5時半。
天気は朝から氷雨。今は雪に変わっています。
立春から建国記念日までの1週間は、毎年厳しい寒さに。
酒呑みにとっては悩ましい時期。
何が悩ましいのか?
それは「今夜は何の酒を飲むか?ビール、日本酒、ワイン、焼酎、ウイスキー?
それともスピリッツのジンかウオッカに?」と、飲む酒の選択に悩むこと。
さらに、寒い時季は「日本酒や紹興酒の熱燗、焼酎やウイスキーのお湯割り」という
選択肢が増えるので、酒呑みにとって嬉しい悩みが増すのです。

今週を振り返っても、2月1日の日曜日の晩酌は、常温で大吟醸「菊秀・蔵」を大ぶり
の猪口1杯と、本醸造「〆張鶴」を熱燗で2合。
2日(月)は、埼玉県の大宮駅前のデパート内にある中華料理店で、グラスビール2杯
と紹興酒の燗を2合ほど。
3日(火)は、神田の万世橋にあるカフエレストランで、中ジョッキで生ビール1杯と、
芋焼酎のお湯割りをコップで2杯。
昨夜(水)は自宅で、サントリー・ウイスキー「クレスト」のお湯割りをコップで2杯。

ご覧のように、燗酒やお湯割りといった温酒を選択することが多くなっています。
本当の(?)酒呑みから見たら「それは外道だな。俺は年中、ウイスキーのオンザロ
ック一本」「私は、ビールに焼酎以外は飲まない」と明言する方も少なくないでしょ
う。
作家・山口瞳の著書「酒呑みの自己弁護」(新潮文庫)の中に、その頑固一徹そうな
男の話が。
うろ覚えですが、次の通り。

男は俳優の三船敏郎のような風貌。
毎夕、居酒屋のカウンターの定席で、焼酎のストレートを黙々と飲み、一定の時間が
来ると静かに店を出ていく寡黙な客。
まさに往年のヒットCM「男は黙って・・・サッポロビール」の主人公のような。
ある日、山口が声を掛けます。
「いつも焼酎をお飲みですね」
「ショッチュウです・・・」
「それにしても、毎日来られているようで、たいしたものですよ」
「ノーメル賞ものです」
「・・・・」

この伝でいくと、私など酒に気が散漫で「散取りー大賞」。そして毎日の晩酌から
「日課(ニッカ)賞」ものでしょうか。

思い起こすと、生まれて初めて大酒を飲んで酔っ払ったのは、小学6年生の時。
夕方帰宅し、食い意地が張っていたので「何かないかなあ」と台所を漁っていると、
流し台の下の奥に1升瓶を発見。
取り出して眺めると、リンゴジュースのよう。
その当時、母の故郷の北海道から、国光というリンゴを沢山送ってきたので、母がジ
ャムやジュースを作ってくれていたので、ピンと来たのです。
蓋を空けてコップに注いで飲むと、甘いリンゴの風味と共に、何といえないうま味が
身体中に広がります。
壜を良く見ると、「リンゴ酒」と書かれた小さな紙切れが。
「お酒か。それにしても美味しいな」と嬉しくなり、もう一杯、もう少しと飲んでい
るうちに、壜の半分ほどを空にしてしまい、慌てて元の場所にしまっておいたのです。
その晩、「気持が悪いから夕食はいらない」と言って、部屋の隅に寝転がっていたら
身体が火照って身体中が痒くなり、母に見せたところ「ジンマシンが出来ているわよ。
何を食べたの?!」と詰問され、しぶしぶリンゴ酒の件を告白。
母は台所に飛んで行き、半分空になった壜を見て、唖然。
「小学生なのに、こんなに酒を飲んで・・・。お酒は大人になってから飲むんだよ」
と一言。
(殊勝に「うん」と答えてうなだれていましたが、高校に入学すると、すでに寄宿舎
で酒盛りパーテイを繰り広げていました)

大人になって47年。
毎晩、酒を飲めることは本当に幸せなこと。
そうしみじみ実感するこの頃です。
ところで、今日の晩酌は何を?
それは「スプリッツアー」1杯に、「久保田・千寿」を2合ほど。
スプリッツアーとは、シャンパングラスの半分ほどに白ワインを入れ、そこにソーダ
を上まで足したライトなカクテル。
スーパーで売っている1本700円ほどの白ワインと、95円のソーダでOK。

夕餉には歌を詠みながら、ほのかに心身が揺らめくひとときを。
「白玉の 歯にしみとおる 雪の夜の 酒は静かに飲むべかりけり」
この若山牧水の短歌引用を読んで、一文字の違いにすぐにピンときた方は、酔人、
いや粋人と言えるでしょう。

それでは良い週末を。