大型連休が終わって感じたこと

「誰もが、混雑する所ばかりに行きたがるものだ。ちょっとおかしいんじゃないか?」
と、先日まで呆れかえっていました。
今は「やれやれ、ようやく終わった」という落ち着きに包まれ、いま、明治神宮外苑
前の行きつけの喫茶店で、酸味と渋味の効いた珈琲を飲んでいます。
何のことか?
今年のゴールデンウイーク(GW)、大型連休のことです。

平均的な勤労者の場合、5月2日(土)から6日までの5日間が連休。
しかし、7日(木)8日(金)の平日2日間に有給休暇を取れば、5月2日から10日までの
9連休に。さらに4月30日(木)と5月1日(金)の合計4日間取れば、何と4月29日からの
12連休に!
「年がら年じゅう、みんながこんなに休んで、大丈夫なのか?!昭和の日とか、みど
りの日とか、今度は海の日とか。祝日の趣旨もわからず、休めれば何でもOKか?」
そんなぼやきは、野暮というもの。
私も勤め人の頃は「♪ヴイ、エー、シー、エー、ティアイオーエン(vacation)、嬉
しいな!」と、昔流行ったポピュラー・ソングを口ずさんでいたのですから(注・弘田
三枝子の歌「ヴァケーション」)

テレビでは今回も10年1日のごとく、東京駅や、成田空港・羽田空港の混雑の模様を
実況。
「ここ成田空港は、今日が帰国ラッシュで大混雑しています」
「新幹線は120%の乗車率で、多くの子供連れの家族が、お土産を一杯に抱えて降りて
きます」
「中央自動車道は、○○を先頭に30キロの渋滞」
よくもこれほど大多数の人間が、毎年毎年殆ど同じ日程で殆ど同じ様な場所に出かけ
て行くものだ、とつくづく感心します。
勿論、暦で休日が定まっているので、勤労者はその枠内でしか行動できないのは、詮
無いところ。
でも、私だったら、大混雑が予想される所には絶対出向かないでしょう。
一年中で一番混雑が予想されることが明白なGW。この期間に旅行するなら、逆に人が
行かないような所を計画するでしょう。

今春から北陸新幹線の開通により、訪れる人が多くなった金沢。
先日、テレビで兼六園からの実況中継を見ましたが、園内のどこもかしこも人また人。
普段は情緒豊かな古い街並みの舗道も、原宿の竹下通りのように、ぞろぞろと人の群
れ。
これでは風情も興趣もあったものではありません。
私は、金沢には過去数回訪れていますが、いつも行くのはシーズンオフ(出張も)。
最後に訪れたのは15年前ほどですが、人影もまばらな緑多い兼六園や、かっての廓町
の面影が漂う静かな
裏道、中心商店街の香林坊、あるいは寂然とした犀川のほとりなどを気ままに散策。
宿は、玄関の隅に実用自転車が置いてあるような、民家を改造した普通の小さな日本
旅館。
そこに素泊まりし、夕食は香林坊の辺りの粋な店を探訪し、新鮮な魚介で地酒を独酌。
朝・昼食は兼帯(ブランチ)で、趣のある喫茶店を見つけて、そこで。
行楽シーズンから外れているので、街は行き交う人も少なく、どこかしら加賀百万石
の古風な佇まいを醸し出し、宿や飲食店のサービスも丁寧。料金もGWや紅葉の頃など
より割安でしょう。

今では街も激変し、香林坊などは東京の繁華街と似たようなものになっているのでし
ょう。
これは京都や札幌や那覇などに行った際も目にするところですが、休憩や飲食となっ
たら、あにはからんやマグドナルドやチェーン店のカフェなどに入り、混雑した店内
でハンバーガーにかぶりついている旅行客が結構いるものです。
お子さん連れなどのグループでは仕方がないでしょうが、それなりの大人のカップル
やグループだったら、ちょっと無理してでも、その地域ならではの食物を、その街の
老舗店か隠れた名店を選んで(できたら予約して)味わいたいもの。
わざわざ東京から大混雑をものともせずに遠出したのに、日頃と同様にドトールやス
タバに入り、「ここにもユニクロがあった!」などとはしゃいで、Tシャツを土産に買
って帰るなどという愚は避けたいもの。
「実に勿体無い」と、他人ごとながら舌うちしたくなります。
まあ、本人の嗜好の問題ですから、ご自由にというところですが。

このGWは近場でのイベントも、色々盛りだくさん開催されたようです。
私が驚いたのは、家の近くの駒沢オリンピック公園の中央広場で開催された「肉フェ
ス」という食の祭典。
文字通り牛肉や豚肉や鶏肉のステーキや揚げ物など、食肉メニューの人気を競うもの。
私がある日の朝、駒沢大学駅前の喫茶店を出ると、駅前交差点から公園に向う舗道は
メーデーの行進の様に、延延と人の波が遠方まで続いていました。
「何だろう?J1のサッカーでもあるのだろうか」と思いながら、地下の駅構内の売店
へ。
するとそこも、すさまじい人の群れ。
改札口から次々に人が吐き出され、待ち合わせの人々とひしめき合っていました。
駅員に聞いて、初めて「肉フエス」に行く人達と知った次第。
私も散歩がてら公園に行ってみると、中央広場に四方を柵で仕切られた広大な会場が
設営されており、内には10店ほどの仮設店が軒を並べ、それぞれの店先に長蛇の列が
続いています(ちなみに昨年開催されたラーメン・ショーでは、客は連日1時間〜2時
間待ちでした)。
食券は1枚700円。ちなみに、ある店の牛肉ステーキは、SuicaやTカードなどのICカー
ドより、やや小さめの肉片が、発泡スチロールの皿に3枚。これで金額は食券4枚の28
00円。
私は、「1店舗700円で少量の肉が食べられ、3000円ほどの経費で数店の肉を試食的に
味わうのだろう。
そして一番美味いメニューを投票するのかも」と想像していましたが、どうも違うよ
う。
一品がこれでは並みの胃袋の人は2品ぐらいで満腹に。
夥しい数の人が、会場内外のベンチや階段や地べたに座りこみ、和気あいあいと食べ
ていましたが、見るところ大体の人が1皿。カップルではそれぞれ異なったものを買
い、シェアして食べている人が多かったようです。
グループもしかり。それでなくては色々な食肉を食べるには、胃袋も懐ももちません。
また、ネットや友人から情報を仕入れ、「A店の何々ステーキを」と目ぼしい食肉を
定めて来場する人が多いような気がしました。
それにしても、わざわざ遠方から電車やバスにのって、ただただ肉だけを食べに広場
にやってくる意欲は、その食欲以上にたいしたものです。
私だったら、4000円程度で美味いステーキランチがとれる、雰囲気の良い店が都内の
近場に幾つかあるので、そちらに行くでしょう。
来場者は、まさに「肉オタク」なのか。それとも長い連休の暇つぶしなのかも。
いずれにしろ、これも本人の嗜好の問題で、とやかく言うことではありません。
ちなみに、「肉フエス」は駒沢オリンピック公園で4月24日〜29日、5月1日〜6日まで、
GWの期間にかぶせて開催されていたとのこと。
12日間、あの広場で巨人戦の試合が展開されたようなもの。

つれづれに思うには、どの国の人も同様でしょうが、特に日本人は「他者追随型」
「同一行動志向型」「付和雷同型」
「寄らば大樹の蔭型」といった性向が、強いような気がしています。
「みんながそうするから、私も・・・」「隣の家がああしたから、うちも・・・」
と。

クリスマスが終わったら、正月だ、おせち料理だ。それが終わったら節分だ、恵方巻
だ。次はバレンタインデーだ、チョコレートだ。ホワイトデーだ、お返しだ。桃の節
句だ、お雛様だ。春のお彼岸だ、おはぎだ。入学式だ、高級ランドセルだ。
花見だ、酒だ。端午の節句だ、桃太郎だ。母の日だ、カーネーションだ。父の日だ、
さてどうしようか、、、と。
このようなことを連綿と続けて、1年が経っていくとしたら、それはそれで幸せなこと。

でも、型にはまった、他の人々と同じ生活スタイルを何年、何十年繰り返して「日常」
をつつがなく過ごし、緩やかに死に向って生きることも尊いことだが、たまには「日
常」の殻を打ち破るような行為で、忘れていた心の奥底の感動を蘇らせることも大切
なのではないのか。
みな、群れをなして決まった道を黙々と歩んでいくようだ。
その足取りは惰性で、心は沈んでいる。
「何を言っても無駄だ。何も変わらない。人と異なったことを行って、周囲から嫌わ
れたらおしまいだ。
みんなと同じように、余計なことは言わずに、ささやかな楽しみを享受して、食いっ
ぱぐれのないように適当に働いて行こう」といった諦念が、心を支配しているのでは
ないのか。
そんなふうに考えてしまいます。

小石川後楽園に行った朝、東京ドームの外野席入口は早くもファンの行列ができてい
ました。
まだ試合開始まで何時間もあるというのに。
青山の事務所から渋谷駅まで歩いた時は、表参道から原宿、それに渋谷の街まで、ど
こも若者で異常に溢れており、売春婦のような格好とメイクを施した若い女性や、無
目的で気迫に乏しく、それでいて突然に切れそうな暗い表情の野郎たちがたむろし、
野放図に闊歩する中国人や東南アジア系の若者たちと混然一体となっていました。
私はこれらの群れの流れの中にいましたが、渋谷の駅に向う裏道を歩いている時、近
年にない危うさを感じました。
「もし、これらの何人かのグループにオヤジ狩りされたら、いちころだな・・・」
と。
男も女も、自分でも理由がわからない不満と、持っていき場のない苛立ちが鬱屈し
て、ただただ街を当ても無く漂っている様に感じたのです。

GWで日常の不満足感を、ある程度払拭しただろう多くの群衆。
でも、その程度では日本列島の活火山の様に、きっとおさまることはないでしょう。
そして、それぞれが内向きに「けなげな自己慰安」をしているうち、この国は「君達
は遊んでいればいいよ」
「投票も何もしなくていいよ。黙ってついてくればいいよ」とばかり、どんどん国家
主義への道をまい進していくで
しょう。
「10本一括の安保法制改正案」でも「沖縄の民意無視」でも、何もかも強引にやりた
い放題に。
そしてそのうち、韓国や中国の対日横暴外交を渡りに船と、不満に溢れた世論をかき
たて、一気に軍事法制の整備と共に全体主義の基盤を確立していくことでしょう。
以前から述べているように、大地震や噴火などの天変地異か、経済大恐慌か、それと
も全体主義による戦争状態の発生か。この3つがごく近い将来、勃発する予感がする。
そこまで至らないと日本社会は良い方へ変われないのではないか。
事態はそこまで来ている。
そんなことを改めて深く痛感したGWでした。

「賢い者は聞き、愚か者は語る」(古代イスラエル王の格言)
少し語り過ぎました。
それでは良い週末を。