●B君へのメール
久しく会っていませんが、お元気の様子で何よりです。
このたびは、定年退職の挨拶メール、有難うございました。
長きにわたった役所勤務、お疲れさまでした。
貴君とは厚生省統計調査部時代は一緒に過ごしたことは無く、私が本省に異動になっ
た後、貴君が入省し、入れ違いに統計に配属され、まさにすれ違いのまま今日に至っ
たわけです。
しかしどういうわけか、統計で一緒に働き、部活で汗を流し、労働組合で共に語った
仲の様な気がしてなりません。
その後の役所生活の中で、部活での接点が多かったことと、年齢差(7歳)を超越した
「志(こころざし)」の共通性が、お互いの琴線に触れたからでしょう。
振り返ってみると、私は貴君と知り合う少し前から、統計時代の職場週刊紙「発言」
の発行や、本省での組合機関紙、同人誌そして今日の「良い週末を」まで、ずっと何
かを発信し続けてきたことに、あらためていささかの感慨を抱くのです。
自分でも「よくやるよな」と自嘲していますが、それは私自身の心の奥底に、統計時
代に培われた「たった一人でもいいから共感してくれる朋友」を渇望する気持が、今
日に至るまでまだずっとくすぶり続けているからだと、省察しています。
しかし、先日の「よい週末を」のエッセイの末尾にも書きましたが、「時代は、確実
に変わってしまった」と感じています。
「連帯を求める時代」は終焉し、すべからく「自己責任の時代。それぞれがばらばら
の個の時代」に移行したと痛感しています。
いつから変わったかというと、小泉首相の頃からでしょう。
それが「3・11」以降に顕著となり、昨年末の総選挙での安倍政権圧勝で決定的になっ
たと思っています。
一言で言うと、「孤独と不安と無気力と自己保身に満ちた、優勝劣敗の時代」に突入
したと感じています。
この流れの先に必ず起こりうるだろう、極めて悲観的な一切の出来事。
私は、これらを我が人生に課せられた宿命として、粛然とした心境で甘受せざるを得
ない、と覚悟しているのです。
たった一度の、歓びと悲しみと絶望と感動に満ちた、かけがえのない人生。
それも日ごとに終幕が近づいてきます。
貴君が退職する今年は、私も青春時代からずっと引きずってきた、青臭い、それでも
自分にとっては明日に向う勇気の証とも言えた心の炎を、そろそろ静かに消滅させて
いくことになるでしょう。
何事も永遠はないのですから。
でも、「熱き思い」は終生不滅です。
いずれにしろ、落ち着いたら一度ご連絡ください。
C君も呼んで、一献傾けたいと思います。
重ねて、永年勤続を終えられることに対し、「ご苦労さまでした」
の言葉を送ります。
人生劇場の第二幕の開幕を期待しております。
それではまた。
●B君からのメール
東井 様
ご無沙汰しております。統計情報部のBです。
この度、定年を迎え、今月いっぱいで退職いたします。
41年間、とにもかくにも五体満足で借金も前科もなく普通にこの日を迎えられること
ができたこと、本当に有り難く思います。
そして東井さんと過ごした青春時代も、かけがいのない私の財産です。
本当にお世話になりました。
いつも週末メールありがとうございました。
これからも「たった一度の人生、悔いのない生き方」をめざして、どこで何をしてい
ようと、自分らしく元気でいたいと思っています。
東井さんもどうぞお健やかに、今後もご活躍ください。
ありがとうございました。