醒め心地


最近、つくづくと、あるいはしみじみと痛感すること。
それは「酒に弱くなった」ということ。
酒に強いか弱いかを判断する一般的な基準はありませんが、相対的に見れば良くわか
ります。
例えば、2〜3年前は日本酒3合の晩酌で適当な酔い心地
に浸っていても、翌日に酔いが残ることはなかったのですが、今では、ともすると夜
中に喉が渇いて何度も目覚め、翌日の午前中は頭痛が残る有り様なのです。

勿論、酔い心地や酔い醒めの程度は、体調に大きく左右されます。
空腹の時はラーメンに炒飯、それに餃子と肉野菜炒めをつけた夕食などをぺろりと食
べられても、食欲のない時はラーメン一杯でも胃もたれをするもの。
食事の場合は、この様に予め「食欲」に則ってメニューと量を考えればいいのですが、
飲料、それも酒類となると「飲酒欲」があるかどうかなどは考えず、換言すれば余程
のこと(注・発熱とか胃痛とか)がない限り体調などを察することなく飲んでしまう
ので、翌日に手痛いリバウンドを受ける羽目に陥りやすいのです。

それに酒類の場合は、運動や労働で汗を流した後など「生ビールをグイッと飲みたい!」
とか、冬の寒い日に「鍋料理で熱燗を酌み交わしたい」という飲酒欲(注・アルコー
ル依存症ではありません)が俄然湧いてくるのは当然のこと(注・酒呑みの人の場合)
ですが、格別に飲酒欲が働かなくても、「まあ、一杯やるか」とグラスや杯を持つと、
酒が酒を呼んでついつい度が進んでしまうのも、酒呑みの常。
酒類には神経をリラックスさせ、食欲を増進させる作用があるので、食前酒として軽
く飲むのは良いのですが、一方で飲酒欲も増進(注・理性が鈍化するだけ)させてし
まうのは痛し痒し。

ここで「酒類」という言葉を使いましたが、酒類の分類をすると次の通りです。
一つに、製造方法による分類があります。
自然科学上の分類とも。
(1) 醸造酒(原料をそのまま、あるいは糖化した上で、アルコール発酵をさせて造っ
  た酒類。清酒やビール、ワインなど)
(2) 蒸留酒(醸造酒、その半製品及びその他アルコール含有物を蒸留して造った酒類。
  焼酎、ウイスキー、ウオッカなど)
(3) 混成酒(上記の酒類をもとに、これらを互いに混合したり、糖類や香味料、色素
  等を加えた酒類。合成清酒や梅酒等のリキュールなど)

もう一つは「酒税法」による分類。
酒税法では、原料や製造方法により、酒類を4つの種類に分類し、17品目を定めてい
ます。
(1) 発泡酒酒類(ビール、発泡酒など)
(2) 醸造酒類(清酒、ワインなど)
(3) 蒸留酒類(焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツなど)
(4) 混成酒類(合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュールなど)

ちなみに、日本酒(清酒)の品質表示で、吟醸酒などの名前がついていますが、これ
は大まかにいえば、「精米歩合」(清酒の風味を良くするため、白米の粒を外側から
削り、残った核を原料とするが、その残った白米の割合。米粒の半分を削ったら残っ
た割合(精米歩合)は50%)で分類されます。
「大吟醸酒」は精米歩合が50%以下の白米を使用し、醸造アルコールの使用量が、白
米の重量の10%以下。
「吟醸酒」は60%以下で、あとは同様。
「本醸造酒」は70%以下で、あとは同様。
また、「純米酒」とあるのは、醸造アルコールを一切使用しない清酒のこと。
削り取った白米の割合が多ければ(残った割合が少なければ)、原価がかかる関係で
上等(高価)になるでしょう。
しかし、そのことと風味の価値(好き嫌い)は別。

いま述べていることは、当初の主旨から少し外れてきました。
主旨とするところは、「以前は3合の日本酒が晩酌として適量だったのが、今ではそ
の3合が過量だと痛感するようになった」ということ。
つい飲み過ぎて二日酔になることは、酒呑みの常。
しかし、つい飲み過ぎたということではなく、今まで「適量」だと思って続けていた
晩酌が、いつの間にか「不適量」であることに気付かされる昨今。
そこで今では、宴席か飲酒欲が旺盛な日の晩酌はさておき、毎日の晩酌では缶ビール
1本と日本酒1合(又はワイン1杯)、あるいはウイスキーのシングルを水割りで3杯を
限度と決めているのです。

加齢に伴って、年々薄毛や手の皺や顔のシミの進行、動体視力の低下、それに筋肉や
関節部分の不具合を痛感しています。
それと同様に、見逃してはならないのは、内臓機能の低下。
昔から知己を得ている、内科の優秀な女医さんが、こう言っていたことを思い出しま
す。
「肉体は努力して、ある程度若がえりをすることも可能だが、内臓は無理。不可逆。
年と共に機能低下していく。だから無理をしないで」。
酒が弱くなったことは、今の肝臓や胃腸やすい臓などの機能に比して、相対的に酒量
が多くなっていたということでしょう。

以前は「酔い心地がいい、うまい酒を飲みたい」と叫んでいました。
でも今は「醒め心地がいい、うまい酒を飲みたい」と呟いています。

「少年老い易く、酒仙(注・俗事を離れ、心から酒を楽しむ人)成り難し」
さて、今日の晩酌では何をどの程度飲むか。
そんなことを考える心一つだけは、いつまでも加齢には無縁の様です。

それでは良い週末を。