東井朝仁 随想録
「良い週末を」

晩 秋 に 想 う

人には、意外と大なり小なりの悩みがあるもの。
私の現時点の最大の悩み。
それは今月中旬頃から、右足の大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)が時折痛むこと。
痛みは歩行中に忽然と出現。普通に歩いていると、徐々に筋肉が拘縮した感じになり
それでも無理して歩くのだが、途中でつったような痛みに耐えかねて、歩行停止。
舗道の横で、1〜2分患部をマッサージ。
すると、筋肉の緊張がほぐれたのか痛みは軽減され、再び歩行を開始。
しかし暫くすると、また痛みが出て立ち止まり、マッサージ。
これを何回か繰り返していると、大腿四頭筋の血流が良くなったためかどうかはわか
らないが、痛みも緩和され、結構な距離の歩行が可能に。
正座をしても椅子に長時間座っている時も、全く痛みを感じないのだが。
しかし、歩行するとやや辛い。
これが現時点の悩み。
そして、そのことが素因となり、次に述べるような新たな事象の悩み(?)が不随し
て発生することに。

私は「何なんだ、この痛みの原因は。いつまで続くのだ。はて、どうしたらいいのか。
最近、右膝あたりが時折重くなり、腰の曲げ方によって座骨のあたりに少し痛みが走
ることがあるが、、、、。原因をはっきりさせないと、自己治療もできない」と悩み、
先々週末に近くのK病院で受診。
実は去年の11月に、今春から始まる「還暦野球」(注・60歳以上の者によるチーム)
の東京都大会に出場してプレイすることとなったため、膝の具合を検査するために赴
いたのがK病院。
その時、整形外科専門医である老齢の院長から「大丈夫」との太鼓判を貰っていたの
だが、この日は院長は生憎と不在。
そこでほかの担当医が診察。レントゲン撮影と問診。触診は無し。
中年の担当医師の所見は。
「膝関節の軟骨がすり減っている。これは加齢に伴うものでしょう。太ももの痛みは
その影響」
「どうしたらいいんですか?今後ストレッチなどで徐々に治せますか?」
「まず痛みを取ること。内服薬(芍薬甘草湯)と湿布剤を出しておくから、1週間後
に来て下さい」
「・・腰からということもあり得ますか?」
「ないことはないでしょうが・・・。それでは」
とのこと。

私は「疾病名を明言しなかったが、変形性膝関節症ではないのか。その前段階当たり
なのかな。
まだ確定診断できないのだな」などと考えながら、一方では「やはり、腰や膝が痛い
と整形にかかっても、レントゲンやMRIを撮られ、鎮痛剤と貼り薬を出されて終わり。
延々と通院するだけか」と、日頃からの邪推が確信になったようで、消沈した気分で
帰宅。
邪推を生んだ要因は、10年ほど前に軽いぎっくり腰になり、知人の紹介で雑司が谷
で整形のクリニックを開業しているS先生を訪れ、治療を受けている際ににさんざん
聞かされた話から。
S先生は、「AK法」という、微妙なタッチで股関節領域に指圧やマッサージを施術
し、どこの医療機関でも手放した(長年通院しても埒があかない)腰痛や関節痛の患
者たちの症状を快復させ、斯界では異能の整形外科医師として知れ渡っていた方。
だからクリニックの待合室はいつも満員。遠くは北海道や九州からも患者がやってく
る様子。
私も2度通院して、全快。
そのS氏が、忙しい合間に私と雑談したとき、「今の整形外科は、どこでも通り一遍
の問診とレントゲン、それからMRIをやって、薬を出したり痛み止めの注射をした
りするだけでしょ?最後は人工関節を勧めますよ。研究不足ですよ」と、整形の現状
を厳しく批判しておられたから。
それほどの神の手を持った医師だったら、そのS先生に診て貰ったらどうかと言う御
仁もおられるかも知れません。
その通り。
しかし、物事は全てがメリット、全てがOKというわけにはいきません。
S氏の診療は自由診療(当然のことに、健康保険の適用外)なので、診察代は1回
15分ほどで1万円。
余ほどの患者でないと、即座に駆けつける決断には及ばないでしょう。
それが庶民感覚。

さて、K病院の診察から1週間。
症状は全く変わらず。
どうしたものかと思案していると、後輩のA君のことを想起。
彼は昨秋、重い腰痛を発症し、ハリや指圧や、某大学病院を始め色々な病院を受診し
たが、全く症状は変わらず、ついに車と車椅子で職場に通ったほどの重症に。
ほとほと困り果てていた時、知人の情報からある医療機関を知り受診。1か月の薬治
療と3回ほどのリハビリで歩行が可能となり、痛みも去り、今ではゴルフをやるほど
に回復。
「そうだ、I君にその医療機関名を聞こう」と、電話。
なんとその医療機関は、三軒茶屋の私の家からほど近いところにある、B整形外科ク
リニック。
先週早速受診。
温厚で親切と評判だった老院長から引き継いだ旧診療所を、立派なビルに建て替えた
評判の壮年院長。
その問診と触診とレントゲンの結果。
「変形性膝関節症の初期だな。薬を2週間分出しておくから」とのこと。
「薬を飲みながら、リハビリ・ストレッチみたいなことをしたほうが良いのですか」
「どんな?」
「例えば、膝に負担をかけない方法で、膝を守る大腿四頭筋の強化を図るためのスク
ワットを軽く行うとか、、、」
「・・・・」
全く質問には無視で、カルテに視線を向けたまま。
「薬で痛みが去らない場合は、何をするのが一般的なんですか。ここには理学療法士
もいると聞いていますが」
「当分、服用を続けること。あんた、年も年だし」
「・・・・」
私は、瞬時に「この院長はプライドが高く、老年の患者で盛況を呈しているから自信
満々なんだ。その証拠に、「待合室に10種類ぐらい、当院が掲載された雑誌の記事
がでかでかと掲示されていたし」と考え、即座に一方的に診察椅子を立ち、苦虫をか
みつぶした顔をして退座。
診察室に居た2人の看護師を含め、何となくその場の空気が凍った感じに。

薬はロキソニン(鎮痛・消炎作用)、ミオナール(筋肉弛緩剤)、セルベック(胃腸
の負担軽減剤)をそれぞれ朝・昼・夕の1日3回分を2週間分。それに鎮痛消炎の貼
り薬。
結果は。
一日3回のロキソニンを3日間服用したら、激しい腹痛でアウト。
それが今週の月曜日。それから今日まで胃腸がシクシクし、食事は麺類や柔らかいご
はんが主。
「Iクリニックは縁がなかった」と直感。

それから考えた次の一手は。
「もう一度、先々週受診したK病院、それも院長の診察をサード・オピニオンとして聞
いてみよう。漢方の芍薬甘草湯は空腹時に服用でも胃に負担がなかったし、もう少し続
けてみようか」ということに。
そして昨日、K病院長の診察を。
レントゲンは前回のを使用。
結果、院長の所見は。
「膝の痛みは腰からですね。膝は関係ない。一番下の椎間が殆どつぶれているでしょ。
それが 神経を刺激して太ももに影響しているんですよ。」
「すると椎間板ヘルニアとか。Iクリニックでは変形性膝関節症と言われたのですが」
「まあ呼ぶとすれば、椎間症とでも。脊椎管狭窄症の疑いもあるから、MRIを撮りま
しょう。
そうすれば投薬も確かになりますから」とのこと。

結局、本日(27日)MRIに到達し、検査を実施。
「レントゲン料」14700円。その自己負担金4410円を払って帰宅。
結果は来週。

つらつらと右の太ももの痛みの対処経過を述べてきましたが、省察するとこうなった
原因らしきものが思いつくのです。
それは9月にさかのぼります。
概略を時系列的に。
・ 9月17日→ゴルフコンペで腰膝ががくがく。終了後飲み騒ぎ、深夜帰宅。
・ 9月21日・24日→バッテイングセンターで合計300発打つ。
・ 9月28日→プラハに発つ配偶者たちを見送りに羽田国際空港へ。述べ1時間半ほど
      立っていた。
・10月 1日→朝10時から、「還暦野球」サードの守備と打撃で足腰が疲労困憊。
      夜は長男夫妻と私の69歳の誕生日祝い。2時間の着座で尻と腰が痛く。
・10月 7日→帰国する配偶者を迎えに羽田へ。待ち時間待機と自宅までの重い荷物で
      腰が重く。
・10月 8日→(一社)悠友林の健康講話と懇親会。
      2次会は10名ほどで青山の私の事務所で酒で談笑。
・10月 9日→所用で、朝10時に日本橋三越へ。疲れ取れず。
・10月13日→野球部・厚生ブルーバッカスのK君の結婚祝いを、部員20数名で行う。
      会場は畳の大広間。
      胡坐をかいての2時間は腰にこたえたが、酔いがそれを凌駕。
      その後、後輩のC君とタクシーで白金のホテルのバーへ。そこでも痛飲。
      帰宅して寝たのが午前2時。
      この夜、トイレに立った時、右足に激痛が。翌朝も、歩行時に痛みが。
      以降は前文に。

疾病とその部位はともあれ、何事も原因と結果があるもの。
あるいは、因果応報とも。
前述した3人の医者が、同じ言葉を発したのが印象的で、示唆に富んでいました。
それは「貴方ねえ、もう年なんですから」。

秋空を仰ぎ見ながら、遥か昔の勇壮果敢だった我が身とわれらの愛しい時代に、しみ
じみと想いを馳せる今日この頃なのです。

それでは良い週末を。