晩 秋 に 想 う(2) |
「軽度の椎間板ヘルニアですね。腰椎の2番と3番の間で、少し出ているでしょ」 MRIの画像を示しながら、所見を述べるのは、院長。 「右太ももの間欠的な痛みは、右膝とは関係ないのですね」と私。 「関係ありません。しかしレントゲンの画像からは、膝の関節の骨も、老化のために変形 していますよ」 「右膝は全然痛むとかの違和感がないので、やはり腰からですか」 「そうですね。薬(ビタミンB12と、血行促進剤)を1か月分出しておきますから、様 子を見ましょう」 前回のエッセイで触れましたが、これは近所のK病院で先週行ったMRI検査の結果を、 院長から受けている際の会話。 昨日(11月3日)の午前10時。 私は、会計が終わったその足で、雑司ヶ谷にあるNクリニックへ。 これも前回のエッセイで触れさしていただいた、S院長の治療を受けに行ったのです。 S医師は大学病院の整形外科勤務時代、その(患者の痛みが完治しない)従来の治療法に 限界を感じて悩んでいたが、「AKA(関節運動学的アプローチ)博田法」を整形外科学 会で知り、猛勉強してこれを習得し、1982年、整形外科クリニックを開業。爾来、今 日までAKA療法を多くの患者に行ってきています。 そのS氏の自著「痛みの治療革命」(2001年、冬青社刊)の中に、こう書いてあるの が印象的。 「レントゲン検査の結果と痛みの原因は一致しないことが多い。(略)例えば、変形性膝関 節症は膝関節の軟骨がすり減って痛みが出るといわれています。この病気は、レントゲン 検査で変化が確認できます。 従来の整形外科の治療法では、なかなか治りません。大学病院などにかかっても「老化だ から仕方がないが、どうしてもというなら手術しかありません」といわれてしまうことの 多い病気です。 最終的には手術して関節を金属に取り代えることになりますが、それでも痛みを訴える人 もいます。 この病気について、私は以前からずっと不思議に思っていました。 というのは、いくらレントゲンで骨の老化が認められても、全く膝痛を訴えない人もいま す。 その反対に、わずかな老化でも強く痛みを訴える人がいて、レントゲンの所見と痛みがあ まり一致しません(後略)」 私は今までにぎっくり腰(椎間板ヘルニア、脊椎分離症、脊椎すべり症など)を3度発症 しています。 一度目は25歳の頃、厚生省のバレー部での練習中、ジャンプしてボールを打ち、着地す る時に他から転がって来たボールに足を取られて転倒してぎっくり。近くのT女子医大で 受診。腰バンドを巻いて通勤し、1か月後には練習復帰。 自然治癒というか特に治療した記憶は無し。 二度目は30代前半。冬の連夜の宴会で疲れ切った日曜日に、電気炬燵から立ち上がった 際に、ぎくり。 この時は、虎ノ門病院のK整形外科部長から「手術一歩手前の状態。コルセットを作るか らそれを装着し、鎮痛剤を飲み、時々、牽引に来るように。一切安静」とのこと。 「治るのに、どのくらいかかりますか?」と尋ねたら、 愚問とばかり「わからない。半年か1年かそれ以上か」 そこで1か月ほどコルセットをして通勤していたが、「手術しなければ半永久に治らない のか?、もう運動はできないのか?」と煩悶。「何かほかに治療法があるのでは?」 と思っていた矢先、知人に紹介されたのが鍼灸師で日中鍼灸交流協会会長の横山瑞生氏。 初診の日の会話。 「先生、治りますか?」 「ええ、治りますよ」 「あの、、どのくらいの期間でですか?」 「週に2回来院していただいて、3か月ぐらいですね」 「えっ!?」と心中で感嘆の声を発し、それから3か月。 前後左右の屈伸、ひねり、速足をしても全く痛みなどは無し。 三度目は38歳頃。私が監督をしていた厚生省の野球部・ブルーバッカスでの河口湖合宿 の時。 私はフリー打撃の投手としてバンバン投げていたのだが、あるバッターの時に気合を込め て直球を投げた瞬間、ぎっくり。 「やったかな・・・」と不安が走るとともに、そろりそろりと降板してベンチに。 その日の練習はベンチ・ウオーマー。 その夜は畳の大広間で恒例の懇親会。 私は尻の下に四つ折りした座布団を詰めて正座姿勢。 それでも宴会を延々と。 翌朝は一人では歩けず、後輩に肩を貸してもらい、すぐに後輩の車に同乗して帰京。 家の前で降車して後輩に抱えられて何とか玄関を入ったところで、万事休す。 激痛で身動きが取れず、その場にうつ伏せになり、配偶者にH氏に来ていただくよう電話 を依頼。 今振り返ると、大変珍しいご縁で、H氏のマンションが当時の私の目黒の家の近くにあっ たのです。 H氏とは熱海などで高級和風旅館経営を展開していた羽根田武夫氏。 当時は70歳代後半でしたが、巨体でビール瓶の栓を親指と人差し指で捻じ曲げるほどの 怪力。 そして類まれな実業家であり、私とは馬が合って、良く飲み語っていたのです。 氏は独学でカイロプラクテイックを習得。身内の方に施術して見事に腰痛などを治されて いたのを承知していました。 その羽根田氏が駆けつけてくれ、私の腰椎のグリグリを触診し、「痛いですが、少し我慢 を」と言って、患部に大きな親指を当て、「エイッ!」とばかりに押し込んだのです。 私が「痛い!」と叫ぶと、「これで大丈夫!明日には治っていますよ。ハッハッハッ」 と破顔一笑。 玄関にうつ伏せになったまま、背中に布団をかけて寝ていた私は、真夜中に尿意を催し、 恐る恐る立ちあがってみると、これが全く違和感なし。一歩一歩歩いてみると痛みは生じ ません。 用をたしてから自室の布団に横になれた時は、歓喜で目頭が濡れるほどでした。 翌朝、職場に顔を出した時の、部員の驚愕の表情は今でも忘れません。 以上が、過去の体験。 過去も今も、相変わらずのぎっくり腰。 違うのは、横山氏も羽根田氏もおられない、という現実。 都会には病院や診療所が数多くあり、整体とか指圧マッサージの店が余多ありますが、ど こもここも 私には古色蒼然に映るのです。 だから今回は、まず自己療法。それには。 @ 身体を温めること→なるだけ温かい飲食物をとる。入浴。腰などにホカロンを貼る。 A 自己指圧をする→第2~5腰椎を自己指圧する。又は市販の「近江せんねん灸」を施す。 B あわせて、S院長の施術を3週間に1度ほどの頻度で、数回受けてみるつもりなのです。 秋の光が、眩いばかりに空に満ちています。 清く澄んだ天空を仰ぎ見ていると、「腰をやられるのは、何事も本腰を入れずに、馬齢を かさねているだけだから、神が戒めてくれたのか。身体は私からの貸し物なのだよ。 大事に使えよ、と言っているのかな、、、。」 いろいろと、思うところがある、晩秋の一日でした。 それでは良い週末を。 |