雪 の 日 に 想 う |
今日は11月24日、木曜日。 現在時刻は10時5分。 天候は雪。「日の吉兆」を知るのに用いる「六曜」の暦法では、今日は「仏滅」。 何事をするのも忌むべき日とされています。 今朝は、地震で起こされました。 グラッときたので、枕元のラジオをつけると、福島県沖を震源地とするM6.1の地震。 福島県で震度4、東京23区で震度2。 時計を見ると6時25分。 2日前の22日の朝6時頃にも、福島県沖を震源地とするM7.4の大きな地震(福島で震 度5弱、東京23区は震度3)があったので、「東日本大震災の余震とのことだが、震源 地は宮城県 沖から福島県沖。これからさらに千葉県沖へと南下するのか」などと想像。 今日の午前9時半に、目白での用事があったので雪交じりのみぞれが降る中、厚着して8 時過ぎに三軒茶屋駅まで出たのですが。構内の混雑ぶりを目にし、今後の交通機関の混乱 を予測したら、この様な状況をさいてまで出掛ける事が馬鹿らしくなり、「仏滅だからや めておこう」と、先方にキャンセルの電話。 それから行きつけの喫茶店へ。 店内はガラ空き。 熱い珈琲を飲みながら、窓辺から外を眺める。 傘をさし、背を丸め、舗道に視線を落として、黙々と歩いている通勤者の群れ。 「台風が来ようが、雪が降ろうが、雇用労働者は定時までに職場につかないといけない宿 命。大変だな・・」とは思いません。 ただ「ご苦労さん」の一言が本音。 「サラリーマンは、就業規則に則(のっと)り、自分の時間を売って対価(賃金)を得る階 級なのだから、仕方がない」と。 自営業などの個人事業者は、自分一人の責任において商売などの経営を行っており、 勤務時間もカレンダーの休日も関係なし。 話は少しそれて。 私も60歳の時に、個人事業者として株式会社を設立。 「60歳になったら、宮仕えを辞め、個人で何か健康関連の事業を経営したい」と常々 (つねづね)考えていたので、健康酒である「にんにく酒」の製造・販売業の経営を行う ことに。 製造(熟成・瓶詰)は長野県佐久市の老舗酒蔵・橘倉酒造に委託。販売は事務所を設けて 通信販売に。 注文の受付・会計事務等は(株)アシストに委託。配送はヤマト運輸に委託。 そして、酒類販売業の主たる事務所とするマンションの一室を賃貸借契約。 電話、フアックス、パソコンなどの事務機器や、デスク、椅子、ソファ、事務用品などを 整備。 それから、国際特許事務所を通して特許庁に商標登録(注・「丹精にんにく酒」)、法務 局に会社設立の登記、税務署に酒類販売業の許可申請、そして酒類販売責任者の講習会受 講等を経た上で、会社をスタートさせたのです。 でも、それでは終わりません。 問題は商品となる「にんにく酒」の材料となる、生にんにくの確保・処理。 これは私の責任。 まず、にんにくを漬け込む大きなジュラルミンのタンクを2槽購入し、橘倉酒造に配置。 それから、にんにくの仕入れ先は、長野県佐久市の友人・柳沢氏の紹介で、野辺山で高原 野菜を広く栽培している高見沢さんに契約農家となっていただき、品質の良いにんにくの 大量仕入れを確保。 次に、生にんにくの加工処理。 生にんにくは処理した後、劣化しないように迅速にタンクに納めるのがベスト。 そこで処理場を佐久市の橘倉酒造の近くに確保。 作業手順は、6片の房を包む外皮と根っこを剥ぎ→1片づつ薄皮をむき→これをまな板と 包丁で3分の1にカット。 この作業は膨大な手間暇がかかるので、アルバイトを多数雇い上げ。人材は佐久総合病院 付属看護学校に依頼し、多くの学生さんに協力していただく。 私と柳沢さんの指導のもと、2日間で延べ40人の学生をフル稼働。 フルと言っても、作業開始時に「時間給(注・1000円。相場は7〜800円)だからと いって、のんべんだらり時間を過ごすのは馬鹿げている。丁寧な仕事で早く終われば、例 えば5時間で終了しても7時間分は支払います。そこで帰って貰って結構。 怪我をしないように頑張ってください」とはっぱをかけていました。 何回目からは、薄皮むきの作業機器を、群馬県のある会社から購入。これも厄介な手作業 だが3人分ほどの処理能力があるので、もっぱら私と柳沢さんで操作。 兎も角、この加工処理が大変な作業でした。 61歳の春から、にんにく酒の瓶詰を開始。 それに先立って、瓶の形状、ラベルと化粧箱のデザイン及び表示文言の制作、パンフレッ トの制作を。 私が原案を考え、これをデザイン会社や印刷会社に発注して完成。 この年の夏、晴れて新発売。 その後の、出資・全体管理・DMなどの広告宣伝・酒類販売業に係る税務署などへの対応・ アシストへの月毎の金銭出納記録の提出などは私の責任。 この様な作業を繰り返した個人企業でしたが、今春に清算。会社解散登記を終了し、9年 間に及ぶ経営を閉じたのです。 長々と記しましたが、先の話に戻ると「自営業、個人事業などは全て自己責任。1か月待 てば、黙っていても給料が振り込まれるサラリーマンとは大違い。お客が買わなければ (利用しなければ)1円も稼げない。休みであろうがなかろうが、嵐が吹こうが雪が降ろう が、何か問題が生じたら、自分の判断で全責任を持って至急に対応しなくてはならない。 誰かに言われてやるのではなく、自分から創意工夫して行動しなければ、何も生じない。 そのかわり、自分の意図と行動が事業の成功に直結すれば、大いなる達成感と成功報酬が 得られる魅力もある」ということ。 さて、話は戻り。 このエッセイを書いている小休止に、台所でインスタント味噌ラーメン(+玉ねぎ半個分、 卵1個、ハム2切れ)を作り、梅酒コップ3分の1ほどを飲みながらの昼食を。 今、時刻は午後2時半。 外はまだ雪。 蒸気で曇った窓ガラスを掌でぬぐうと、水分を含んだ牡丹雪が、次から次へと舞い降りて いるのが見えます。 冷え冷えとした遠方の屋根並みの景色を眺めていると、個人会社を経営していた今春まで の9年間の様々なことが、まさに雪が舞う如く、はかなく脳裡に浮かんでは消えていきま す。 それ以外は、何も浮かんではこないのです。 「果たしてやり遂げたのだろうか。そうではなかったのか・・」 窓外の雪景色がぼやけて見えてくる前に、この感傷から逃れようとするのですが、なぜか 立ち去れず、しばし佇んでいました。 観測史上初の「11月の東京23区の積雪」は、意外と気持ちを熱くさせるものです。 それでは良い週末を。 |