東井朝仁 随想録
「良い週末を」

 手 ぶ ら 派

先週末は、佐久総合病院の「病院祭」に行ってきました。
病院の場所は長野県佐久市。
東京駅からは、北陸新幹線で佐久平駅へ(約1時間半)。佐久平駅で高原鉄道として知ら
れた小海線に乗り換え、車窓からのどかな田園風景を眺めていると、約25分で臼田駅へ。
ここで下車。駅から病院までは徒歩で15〜20分ほど。
タクシー(閑散とした駅前には滅多にいない。電話で呼べば来る)だと5分弱。
わざわざタクシーを呼んで待って乗るほどのことではないので、歩く。
遥か北に浅間山を眺めながら千曲川を渡り、古い町並みの通りを辿っていくと、自然に病
院へ到着。
乗り換え時間を省いて計算すると、東京駅を出てから2時間10分ほどで目的地に到達で
きる(厳密には、さらに10分ほど歩いた病院付属の看護学校の体育館が目的会場)私に
とってはお手軽・お気軽な小旅行。
そう実感できるのは、まず乗車及び徒歩で要する移動時間の短さだけではなく、身軽さに
も。
お手軽と表現しましたが、まさに読んで字のごとく、手軽なのです。
具体的には、手に何も持たない手ぶら旅行だからです。
今回は1泊二日の旅行でしたが、宿泊先は私のセカンドハウスで、下着や髭剃りなどの備
えがあるので、荷物は全くなしの手ぶら。
最低限必要な、財布(お札・カード・健康保険証・自動車免許証・名刺入れ)、小銭入れ
(鍵入れ併用)、手帳、老眼鏡、薬(目薬・胃薬)、スマホ、ハンカチ、ボールペンは、
全て上着とズボンのポケットに収納して事足りるのです。
これは春夏秋冬を通じた、普段のスタイル。

私は普段から、どこに行くにも「手ぶら」が原則。
それが私のポリシーというかフアッション(流儀)。
なぜなら、前述したようにどのような状況においても気軽に行動が出来て、気分も軽やか
になるからです。
会議のために膨大な配付資料を持参するとか、先方に届け物をするなどという場合は止む
を得ませんが、その場合は極力、紙袋を使用します。
紙袋は資料を配付してしまえば、御用済み。近くの屑箱に。御贈答品などは中身を出して
進呈し、紙袋は折りたたんで帰路のコンビニのゴミ箱などへ。
いずれも帰りは手ぶらでルンルンし、身も心も軽やかにいずこへと消える事が出来るので
す。

最近は、街を行き来する勤労者や学生、若者や高齢者などを見ていると、殆どの者は何が
しかの鞄や荷物をぶら下げています。
男は黒いビジネス鞄、ノート・パソコンのバッグ、ショルダー・バッグ、ショルダー併用
のリュックサック、スポーツ・バッグなど。
女はハンドバッグ、ブランド名が入った洒落た紙袋かデパート・専門店の紙袋、牛革や合
成皮革で出来た大き目の手提げバッグ、布で出来たズタ袋など。
勿論、学生生徒は学習用のスクール鞄やランドセルを。
駅を行きかう旅行者は、大きなキャリー・バッグ(スーツケース・トラベルバッグ)と菓
子折りが入った紙袋などを。
ともかく、「一体何をそんなに持っているの?」と聞きたくなるほど、誰もがカバン、カ
バンのご時世。
満員すし詰めの電車の中で、あれこれ鞄や手提げ袋を抱えている人を見ると、こちらも息
苦しくなってきます。
また、キャリーバッグに鞄や紙袋をぶら下げて、ガラガラと行き交う旅行者を見ると、ル
ンルン気分の旅行も、あれではやたら足取りが重くなるだろうと心配になります。
いずれにしろ、彼らを「バッグ派」とすると、私は徹底した「手ぶら派」。

昔から手荷物を持っての行動は、嫌いでした。
だから、職場に通勤する時も手ぶらで、せいぜい片手にスポーツ紙。それも読み終えたら
駅か職場の屑箱に。
出張へは、日帰りは手ぶら、1泊2日は縦25センチ、高さ20センチ、幅(底)は10セ
ンチ程度の小ぶりのショルダー1つ。
そこに納めるのは、着替えの下着上下1組、靴下・ハンカチ各1つ、旅行用電気カミソリ、
会議に必要なA4の要約資料を5枚ほど、それに文庫本1冊。
これで十分。
2泊3日の場合は鞄が1.5倍の大きさになり、替えのワイシャツと靴下・ハンカチが追加
されるだけ。
先方からの手土産は一切無用・不要で押し切り、やむを得ない場合は、小ぶりの紙袋一つ
以上であったら全て宅急便に。
ゴルフに行く時は、1泊2日用の旅行鞄に下着と替えのポロシャツだけ入れ、プレイ後は、
脱いだ下着等をゴルフバッグの脇にある収納ポケットに詰め込んで宅急便に。商品は優勝
・準優勝カップ以外は全て他の人に提供。
海外旅行も、3泊4日までは、機内持ち込み可能な軽量バッグ一つのみ。
お土産はまず買わず。買っても個性的なハンカチやネクタイ。好きな陶磁器は航空便で送
ります。

佐久行の話から、何か余計な話になってしまいましたが、要は「本当に事をなそうと思っ
たら、あるいは旅行などで心から気持ちを軽やかにしようと思ったら、まず具体的に身軽
になることが大切だ」と言いたかっただけです。
いつも何か荷物をぶら下げて歩いている人は、一度騙されたと思って、試しに「手ぶら」
で外出してみて下さい。
身も心も軽やかになること必定、いいアイデアも浮かぶ、と私は確信しているのですが。

それでも何かを持っていたい人は?
「物の少しは持ちたきは、貧しきものに施さんため」と心で唱えていれば、次元を異にし
て気楽で鷹揚な生活を享受できるでしょう。

それでは良い週末を。