最 近 の 新 聞 記 事 か ら |
毎日、新聞や雑誌を斜め読みしていますが、特にこの1週間で印象深かった記事を、2, 3抜粋してみますと、次の通り。 @元・伊藤忠商事社長で、中国大使も務めた、丹羽宇一郎氏。 彼が近著「戦争の大問題」で、「今こそ日本人は戦争の真実を知らなければならない」 と訴えかけ、本の冒頭で「「戦争を知らない世代が政治の中枢となったときは、とても 危ない」と言った田中角栄・元首相の言葉を引用。 その点で、日刊ゲンダイのインタビューに、こう答えているのです。 「やはり戦争を知らない世代は、戦争のリアルなイメージを持ちえない。最近も麻生副 総理が北朝鮮からの武装難民の射殺に言及しましたが、彼は人を撃った経験があるんで すか。人と人が1対1で撃ち合うなんてできません。 若い人は、先の大戦で日本兵は勇ましく撃ち合って戦場に散ったと思っているけど、帰 還者に話を聞くと、大半は撃っていない。 ひたすら歩き、さまよい、飢餓や疫病で亡くなった人々が圧倒的に多い。実際に引き金 を引いた人も、敵兵を目の前にして撃ってはいない。 あの辺にいるはずだと目をつぶってバババッと撃っている人が大半です。 ただ、本当の戦争を知る人々は、その体験を自分の子供たちにも話せない。 食料を奪ったり、友達の(人)肉を食べたり。いざという時にそこまで残酷な動物とな った経験を語れるわけがない。 戦争は人を狂わせます。だから体験者は皆「戦争だけはやらないでくれ」と口をそろえ るのに、戦争をイメージできない世代には「やろう」と粋がる人が多い。 こんな怖いことはない」 インタビュー記事の見出しは「開戦に近づく今の日本こそ、戦争の真実を学ぶべきです」 「諦めない対話が、回避の唯一の道」とあります。 今の政権は、これと真逆なことを勇ましく叫んでいるのが、日本の現実。今回の衆議院 選挙しかり。 考えさせられます。 A今回、突然に衆議院を解散し総選挙を行う趣旨が全く不明な中、与党が公約の焦点の一 つに挙げたのが消費税の取り扱い。 この争点について、朝日新聞で編集委員の原真人氏の、次のような発言が印象に残りま した。 「安倍晋三首相が三たび消費税で民意を問う。過去2回は増税延期を、今回は増税はす るものの、生んだ財源は財政赤字を減らすのでなく教育無償化などにすぐ使ってしまお うと訴える。 これまで同様、ここで首相が求めるのは痛みの受容ではない。痛みを先送りし給付を手 厚くするという易(やす)き選択肢への賛意だ。これは結局、私たちの「未来」の切り 売りではないのか。 この種の国民受けする政策は、普通ならやりたくとも財源がない。そのジレンマを一挙 解消する魔法の杖がアベノミクスだった。 安倍政権は、日本銀行に超金融緩和の一環として大量の国債を買わせている。おかげで 政府がいくら借金を重ね、首相がいくら増税を延期しても、国際価格は急落しない。 日銀が紙幣を刷って政府の赤字を賄う「財政ファイナンス」は財政法で禁じられている が、それに限りなく近い。 戦前も政府は軍事調達のため、財政ファイナンスに手を染めた。終戦直後、国民は預金 封鎖や重課税、超インフレに苦しめられた。敗戦だからそうなったのではない。財政フ ァイナンスでごまかしてきた財政破綻が敗戦で表面化しただけだ。 終戦の1945年の政府債務は国内総生産比200%超だった。いまは230%と当時 よりひどい。 主要国でも最悪の水準だ。 政治がこれほど財政危機の現実を軽んじ、国家安定を危うくしたことが、戦後あっただ ろうか。 財政が一度傾いたら私たちの生活は脅かされ、子や孫の未来は悲惨なものになる。 立て直すのは数十年がかりだ。 だから百年の計が求められる。 時の政権が延命のために「未来」を切り売りすることなど許されていいはずがない」 予算を見直し、財政の健全化を図るという努力を放棄し、おいしい話をばらまいて一時 の人気取りを図る。 国民は「自分に利益になる話」だと、その背後にある問題など知ったものではなく、た やすく食いつく。 いっときは良くても、後で泣きを見るのは有権者、一般庶民。 今回の選挙も、そうした結果に終わる予感がして情けなくなります。 B次は作家・池澤夏樹氏が、朝日新聞の文芸批評欄に投稿した文章から。 「この数年間、安倍晋三という人の印象は、ただただ喋るということだった。 枯草の山に火をつけたかのように、ぺらぺらと途切れなく軽い言葉が出てくる。 対話でもなく、議論でもなく、一方的な流出。機械工学でいえば開固着であり、最近の 言い回しを借りればダダもれだ。 安倍晋三は、主題Aについて問われてもそれを無視して主題Bのことを延々と話す。 Bについての問いにはCを言う。(略) 現政権の面々は、ほとんどが富裕層の出身である。有権者の九割九分は富裕層ではない のに、なぜ彼らに票を入れるのだろう。 選挙前、彼らは貧困層に厚く配分するとは言わず、景気が良くなったらみんなに行き渡 るからと言う。 自分は景気をよくする秘訣を知っていると繰り返す。これはカジノの原理だ。 政権の座につくと、あとはひたすら喋ってごまかす。もう少しもう少しと先送りする。 よくもまあそれが5年も続いたと思うし、その間に憲法はないがしろにされ、反民主主 義的な悪法が多く成立してしまった。 悔しい限りだ。 加計と森友で追い詰められて一方的に解散。その上で国難とはよくも言ってくれたもの だ。 「今日は晴れのち曇り、ところによりミサイルが降るでしょう。お出かけの方は核の傘 をお忘れなく」 って、それならばすべての原発からすぐに核燃料を搬出し、秘密裏にどこかに隠しなさ い。原発は通常ミサイルを核ミサイルに変える施設なのだから。 野党のほうはただただ情けない。 普通の人は安倍晋三のようにぺらぺらは喋れないとしても、求心力のある人物が一人も いなかったのはなぜか。(略) 野党の無力と与党の制度疲労の隙間から、小池百合子がむくむくと頭をもたげた。 1党独裁の停滞期から変動期に入ったように見えるが、彼女の『日本をリセット』と安 倍晋三の『日本を取り戻す』は、無意味という点では同じ。 カジノが劇場に変わったのか。だが、派手な演技で人目を引こうとする役者はいても、 この国が今抱えている問題に対する答えはどこにもない」 テレビで国会中継を観て痛感するのは、野党の質問に対する安倍首相の答弁は、まさに はぐらかし、論点のすり替えばかり。 居直って口から出るのは「民主党政権で何をしたのですか。外交も経済も暗黒の時代だ った。今はアベノミクスで株価も上がった。雇用率も改善した。景気が回復した・・・」 の言葉。しかし例えば、民主党政権時のGDPの実質成長率は、年平均で1.6%。第2次 安倍政権では1.4%。民主党政権は政治主導の鼻息ばかりで、各官庁をうまく使いこなせ ず稚拙な政権運営に陥ったが、現政権でも、「それでは外交・経済を含め、一体どんな 成果をあげたのですか」と問いただしたくなる実情。 経済は日銀が大量に株を買い上げて株価操作し、外交はトランプ米大統領にべったり。 それが成果? 与党も野党も政治家は口先ばかりなのは、今に始まったことではありませんが、今回の 選挙を見ても酷いものです。 C最後に、日刊ゲンダイの記事から。映画監督の井筒和幸氏の文章。 「私は主君にも会社にも仕えたくない、自由でいたいから誰に頼まれたわけでもなく映 画を作ってきた。 そして、社会がもっと自由な人々であふれることを願って物語を紡いできたつもりだっ たのに。 このありさまだ。ほんとに殺伐とした国になり果てた。 今、自分の利益だけ、自分と身内の役得にしがみついている大人がほとんどだし、それ に若者も倣っているだけだ。 だから、安倍政権に代表されるような、自分たちだけが利口に生きられたらいいという、 たちの悪いエゴイズムをあおるような政治が続き、そんな主君に仕えてさえいればいい という家来たちがはびこり、この社会を支配しながら腐らせてきた。 すえた臭いが充満している。 それを吹き飛ばしてくれるものはない。 今のデタラメな解散選挙ごときで、ウジのように湧きだした小チンピラのロクでもない 政治家どもでは、しょせん、何の役にも立たないだろう」 自分の利益と保身しか考えず、「自分たちさえ良ければ、あとは知っちゃいない」人々 が渦巻く、殺伐とした社会になってしまった。 私も、つくづくそう感じる今日この頃です。 最後に、もう一度、池澤氏の文章を引用して、今回のエッセイを締めます。 「政治は必要である。どんなに質の悪い政治でも無しでは済まされない。 アベノミクスが嘘で固めた経済が、この先どこまで落ちてゆくか、見届けるためにも少 しはましな政府が要る。 選挙の原理は、この「少しはまし」ということに尽きるのだろう。 理想の候補はいないとしても、誰かの名前を書いて投票しなければならない」 それでは良い週末を。 |