こ こ ろ 次 第
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街の本屋には、夥しい種類の「健康」に関する書籍が並んでいます。 超高齢者社会の到来で、がん・脳卒中・心臓病・糖尿病・動脈硬化症などの生活習慣病、 腰痛・ひざ痛などの筋骨格系疾患、自律神経失調症・うつ病などの精神疾患、そして白内 障・緑内障などの視疾患に関する疾病予防と治療方法に関心を寄せる高齢者が、年々漸増 しているからでしょう。 そうした現状は書籍に限らず、テレビでも新聞・週刊誌でも同様。 テレビなど毎日、健康関連の情報がバラエテイ番組やCMで溢れています。 健康と言っても、疾病予防・健康増進から始まって→治療(外来・入院・手術の有名医療 機関の紹介を含む)→リハビリ→介護→遺言問題→看取り→葬儀→墓の問題→相続問題と 波及するので、広義に解釈する必要があります。 だから、いわゆる「終活」とか「老後の生き方」に関する書籍なども、10年前(我々団塊 の世代が60歳の還暦を迎える前)と比べ、格段に多くなっているようです。 「生・老・病・死」が人間の宿命とはいえ、誰もが寝たきりや痴呆になる期間を少しでも 短縮し、少しでも長く健やかに老いてからポックり逝きたい、と願っているのでしょう。 それにしても、この健康ブームは日本史上で今が最大とも言えます。 私も今までに様々な健康本を読んできましたが、すべて言わんとすることを要約すれば。 「バランスの良い食事をとること(偏食・過食をせず、肉や野菜や魚や穀物などを万遍な くとること)」 「適度な運動をすること(ウオーキングや筋肉トレ」 そして「適切に休養(睡眠など)をとること」の3点につきます。 これらの具体的な方法が「糖質制限で痩せる」「肉食でボケを防止」「体幹を鍛える」 「最高の休息法・瞑想」等々の各論となって、読者・視聴者に「そうだったのか」と言わ しめている現状。 しかし、私が危惧するのは、例えば肉食が脳の活動(脳内ホルモンの分泌)や高齢者の筋 肉維持に重要とアナウンスされると、ここぞとばかりに毎日、肉料理ばかり食べる人が出 てくること。 「糖質は肥満の最大要因」と聞くと、食生活のすべてから、炭水化物を排除したり。 花粉症にヨーグルト、血液サラサラに赤ワインがいいと聞くと、そればかり。 夥しい数の健康情報が流れる中で、どれか一つでも毎日励行することは「言うは易し、行 うは難し」ですから、それはそれで、度を越さなければ良いのでしょうが。 話が少しそれますが、一昨年の秋のこと。 私が夜中にトイレに行くために立ち上がった時、右足のひざ関節が抜けた感じで立ち上が れなくなり、四つん這いでトイレを往復したことがありました。 翌朝、何とか立ち上がって歩行も可能でしたが、右太ももがつったように痛く、駅までの 通路を歩くと5分ぐらいでその痛みに耐えられなくなり、近くの階段に座って休息。する とその後は歩行が可能になるという状態が続きました。 そこで、評判が良い整形外科クリニックで診察したところ、「変形性膝関節症」との診断。 「どうしたら治りますか。リハビリとかあるんですか」と尋ねると、中年の院長はレント ゲン写真を指しながら「軟骨がこんなにすり減っている。手術しかないな。痛み止めの内 服薬を出すから、それを飲んで1週間後また来るように」と、一言。 薬は悪名高い(?)ロキソニン。 3日間飲んでも症状は変わらず、胃が痛くなったので服用中止。 私は本屋に行き、「変形性膝関節症を自分で治す」という見出しがついた健康雑誌を買い、 その夜から足のリハビリを。 私が選択した内容は、左右の片足立ち1分づつと、スクワット体操20回。これだけ。 これを毎日朝夕に励行。 すると1週間で太ももと膝周辺の痛みはとれ、歩行も以前のようにスムーズに。 1日1万歩は悠になり、クリニックには二度と行かず仕舞い。 今でもスクワットや体幹ストレッチ、腕立て伏せなどを毎日励行していますが、これは雑 誌の健康情報が役に立った一例(手術したらどうなったことやら)。 話を戻しますと、先に挙げた健康のための3つの要素で、私は休養というか、身体の色々 な部分に影響を与える心のありようが、一番重要なことのように考えています。 わかりやすく言うと「何事も良いほうに考える習慣を持つこと」。 なんでも「ありがたい」「良かった」「ラッキー」「うれしい」とプラス思考でとらえる こと。 すると、セロトニンとかドーパミンとかの心身の状態を良くする脳内ホルモン(神経伝達 物質)が分泌されるとのこと。 反対にいつも怒ったり、嫌悪したり、緊張したりしてマイナス発想をしていると(ストレ スを溜めていくと)、ノルアドレナリンなどの身体に毒にもなる脳内ホルモンが分泌され、 ガンや循環器疾患になりやすいとのこと。 実際、嬉しいことや楽しいことを考えながら食事をすると、とても食事がおいしくなり、 反対に嫌なことや心配なことを考えながら食事をすると、食欲もなくなり、おいしさも薄 れます。 小さい頃、風邪で39度の熱を出して寝ている枕元に、母親が来て「今度の日曜日に、セ ーターを買いに連れて行ってあげるよ」と言われただけで嬉しくなり、「やった、やった!」 と起き上がって飛び跳ね、その晩には熱も下がり、たちどころに風邪が治ったというよう な体験が、今まで沢山ありました。 今でも不思議と、嬉しいこと、楽しいこと、感動することがあると、物凄く心がウキウキ とし、身体全体にパワーが漲ってくるのです。 そうしたことがなくても、昔の楽しかった出来事を思い出して寝入ると快適な睡眠がとれ、 「来週はどこか暖かな所に旅行に行こうか」などと楽しい想像をしているだけでも、心が 勇んできます。 そうした状態の日々を送っている時は、たとえインフルエンザが大流行していても、滅多 なことでは罹らないのが、今までの経験則となっているのです。 肉体のどこかを病んだり怪我したりした時は、まさに神の差配でどうにもならない気もし ますが、それでも心だけは、神に許されて自分のものとして自由に動かせるものとしてあ る、と信じているのですが。 だから昔からの「病は気から」という格言は、けだし、言い得て妙。 こころ次第。 生まれて6か月の検診で「脳性まひの疑いがある」と診断され、そこで配偶者に背負われ、 週二日、北区赤羽にあった「都立北療育院」にリハビリ訓練を受けに通園していた長男。 通院して1年後、院長から「健常児と同じになりました」と言われたが、それでも近所の 子と比べて走力・動作などが劣っていた長男。親として心配の種でしたが、長男が5歳の 時、幼稚園から帰宅すると嬉しそうな顔で「今日、園長先生に、東井君はやる気さえあれ ば、何でもできると言われたんだよ」と大声で報告したのです。 私も嬉しくなり「そうだよ。お前はやる気があれば何でも出来るよ!」と言ったら、 「違うよ。やる気さえあれば、何でもできるだよ」と口をとがらせるのです。 初めは何?と思いましたが、「さえ」があるかないかに気が付き、「そうか、やる気さえ あれば・・・」 その後が続かず、思わず嬉し泣きをしてしまったのです。 「園長先生は、本当にいいことを言ってくれた。何事にも代えがたい言葉だ。ありがとう ございます・・・・」 人間、本当に幸せなのは、「やる気」に満ち、「陽気(心が晴れ晴れしいこと)」である ことでしょう。 5歳の時の長男の言葉が、35年後の今になって、リアルに心に響いてくるこの頃なので す。 それでは良い週末を。 |