夢は老いることなく(1)
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社会に、老人(高齢者)が増えました。 私がサラリーマン(給料生活者)だった60歳前のころまでは、職場でも、電車に乗っても、 街を歩いていても、店に入っても「何でこんなに若い者ばかりなんだろう」と感じていま したが、それは私がそれだけ年を取り、相対的に私より若い者が増えただけのことでした。 70歳になった今は、「どこに行っても老人だらけだ」と驚くばかり。 私達「団塊の世代(昭和22年〜25年生まれ)」が、みな前期高齢者になり、多くの者が会 社という檻の中から追い出され、街を彷徨うようになったことと、反対に若い者の人口が 伸びないからです。 そのことはデータでも明らか。 政府は21日、「医療や介護など社会保障給付費が、2040年度に190兆円になる」という推 計値を公表しました。 これは、@今年度(18年度)より6割増加することA国内総生産(GDP)の24%を占めること を意味し、推計値の基本となるデータからB2040年度には65歳以上の人口が4000万人 近くに達し、人口のほぼ3人に1人を占めることになり、C85歳以上の人口は1000万 人超と、現在の2倍になることが予測されています。 こうした世界史上でも例のない超高齢社会の到来を控え、政府は社会保障制度を維持する ため、給付(サービス)の抑制と国民負担(税・保険料・個人の一部負担料)の増加を図 る検討に入っているようです。 当然、国の財源確保のために年金支給額の抑制も図られることでしょう。 2040年度とは、今から22年後。 私はその時、生きていれば92歳。 あと5年ほどなのか、10年、20年ほどなのか、自分の余命はわかりませんが、ひたひたと 未曽有の超高齢社会がそこまで近づいてきていることを肌で感じるとともに、「日本社会 はどうなるのだろうか?」という近い将来に対する漠然とした不安を感じることもあるの です。 それは、日本中の多くの高齢者も、大なり小なり同様の心境ではないでしょうか。 こうした超高齢社会の状況を反映して、今や高齢の消費者・利用者をターゲットとした商 品・サービスの広告が社会に氾濫しています。 疾病予防・要介護予防に関する医薬品・サプリ・健康食品、スポーツクラブ、老後の資産 運用、有料老人ホーム、墓地、高齢者向け美容・ファッション・グルメ、旅行等々 そして、テレビや新聞や雑誌で、健康、経済(家計)孤独(生きがい探し)の3Kをテーマ としたバラエテイ番組や特集記事が連日のように発信されています。 英語教材・書籍出版などのパイオニア、(株)アルクの平本・最高顧問(82歳)は、自著 の中で「年寄りが増えて、どう生きるか、どう死ぬかみたいな本ばかり。そんなのカラス の勝手でしょう」と、ユーモラスに喝破していますが、まさにその通り。 しかし、世の中はますますこの手の本や情報が溢れかえってきています。 そして、「たちまち20万部突破!」などと、本の帯に書かれたこれらの本が結構売れてい る現実を見ると、まさに政治も行政も経済も情けないほど劣化し、猟奇犯罪や異常気象現 象が続発するなどの末世的な日本の現象を反映してか、多くの高齢者も何かに頼りたい不 安な気持ちで、残りの人生を生きている気がしています。 そこで先日、私も近くの本屋に行き、色々な新刊本やベストセラー、話題の本などを見て 回りました。 すると、健康本は概括すると「心身にいい食事をとる」「自律神経を安定させる」「スク ワット、かかと上げなどで下半身を鍛える」の3点に訴求した本がほとんどでした。しか し、もう一つのK、「孤独」に関する本も結構あり、これが地道に売れているのには、納 得しました。 孤独というのは、定年で職場の仲間と別れ、同年配の人が次々と亡くなっていき、子供た ちは独立して家を離れ、配偶者に死に別れ、そして心身の老いとともに地域での交流もな く最後は一人で孤独死していくという、誰もが宿命として避けて通れない「人生の晩年」 をテーマにしたものです。 誰でもみな等しく、一人で生まれ、最後は一人で死んでいくのが人生。 その人生の晩年、私に言わせたら人生の黄金期を、いかに悔いなく楽しく健やかに、そし て心を強くして生きていくのか。 これに対する作者の心情が溢れ、示唆に富んだ随筆を、4冊買い求めて読みました。 誰かが「人生の最大の不幸は、孤独だ」といった言葉が、果たして真理かどうかはわかり ませんが、何となく身に染みます。 しかしここで、「孤独」を単に「仲間のないこと。ひとりぼっち」と単純に解釈し、「孤 独であることは、友達がいないみじめなこと。孤独のところを人に見られたら恥かしいこ と。現代では常にLINEなどで仲間とやり取りをしていないと、孤独になる」などと考えて いては、駄目。 そうした薄っぺらい幼稚な考えに立っていない4人の本。 なるほどと感心しました。 そして、何となく「あと10年が人生の黄金期なのだ。そして・・・」 そんなことをしみじみと考えたのです。 今回は長くなりましたので、本の概要紹介は次回にでも。 幾つになっても、夢は10代とかわりません。 それでは良い週末を。 |