東井朝仁 随想録
「良い週末を」

ア ン パ ン
驚きました。
今夕、家の近くの国道246号線の道路沿いにオープンした、コンビニ「セブンイレブン」
前。
店員が店頭でチラシを配布 。何気なく店に入ると、レジの前は凄い行列。
チラシを見ると、「チラシ持参で『金の食パン厚切り2枚入り(1袋)差し上げます。ま
た、セブンのアプリをダウンロードすると、食感メロンパンとボールペンをプレゼント』
します」とあります。
この店は、前述の国道と環状7号線道路が交差した、上馬交差点の近くに立地。
目と鼻の先に、既存の「フアミリーマート」や「ローソン」や「マイバスケツト」のコン
ビニや、スーパーの「オオゼキ」「マルエツ」があります。この激戦区に割って入ったセ
ブンイレブンの売りの一つは「焼きたてのオリジナルなパン類にあるのかも」と私は考え、
入店したのです。
「大好きなアンパンを2個買って、サービスの食パンを貰って帰ろう」と。
しかし、パンのコーナーに行くと、どこを探してもアンパンの姿は無し。
替りに、メロンパンや生クリームパンなどが山盛りされていました。
私は、「これは駄目だ」と諦め、混雑する店内を出たのです。
最近感じることは、アンパンを置いているコンビニが少なくなったこと。
あるとしても、1種類だけ。それもない時が。店員に聞くと「今日は売り切れました」と。
数年前は、木村屋・中村屋・山崎・パスコなどのアンパンが、限られたコーナーでしのぎ
を削っていたのですが。
アンパンを買う客が減少したのか。あるいは小豆の卸値の値上りで、販売を控えたのか。

私は、子供の頃からアンパンをはじめとして、小豆餡の和菓子や菓子パンが好きでした。
当時は、コッペパン1つが5円。アンパン、ジャムパン、クリームパン、チョコレートパ
ン、メロンパンなどの菓子パンが10円。菓子パンでも、円錐形をした生地がふんわり甘
くて美味しい甘食は5円。
このため、給食のなかった中学時代は、たまに親から30円を貰い、アンパンとクリーム
パンと甘食を2つ買って昼食にしていました。
高校時代は、正科であるラグビーや柔道の体育が終了したあと、校舎近くの駄菓子屋にす
っ飛んで行き、アンパンを1個買って素早く食べたりすることが、多々ありました。
今でも、小豆餡を主材料としたものは何でも好き。
例えばアンパン以外では。
パン類では、コッペパンや食パンに、バターと小倉あんを付け合わせたもの、あんドーナ
ツ。
和菓子類では、どら焼き、豆大福、最中(もなか)、きんつば、鹿の子、ぜんざい、汁粉。
そして、中村屋のあんマン、とらやの羊羹、新宿の花園饅頭の濡れ甘納豆、名古屋の両口
屋是清の小豆餡の焼き菓子、三重県伊勢の赤福や御福餅、福島県郡山の薄皮饅頭等々。

ここまで読んで、「いやあ、甘ったるくて気持ち悪い」と感じた方も、おられるかもしれ
ません。
しかし、私は好きなのです。
母の遺伝子を強く引き継いだのかもしれません。
中学1年の冬、私は友達10名ほどで放課後にマラソン大会をしたのですが、当日風邪を
ひきながら走り、帰宅してから熱が出て、ダウンしてしまいました。
夜中、喉が痛くて寝られず、朝起きて顔を鏡で見たら、パンパンに腫れていました。
便所に入っても小水が出ず、慌てて近所の診療所で受診すると「急性腎炎」とのこと。
1か月の自宅療養。なるだけ身体を動かさず、食べ物はタンパク質・塩分類は駄目。
醤油も味噌汁も駄目。
だから毎日、コッペパンにイチゴジャムを塗ったようなものばかり、食べていました。
でも、全く苦痛ではなかったのです。
甘いものが好きだったからこそでした。
お蔭で、20日ほどで全快。お医者さんも驚いていました。

だからといって、現在も毎日のように甘いパンやお菓子を食べているわけではありません。
色々な和菓子を順番に、二日に1回ぐらい、一つ二つ食べるだけ。
そうした「甘い生活」を長年続けてきましたが、やはりその中でも「アンパン」には感謝
状を出したい気持です。
小学生の頃、家の隣の2つ年上のショウちゃんが新聞配達をしていたのですが、夕刊の時、
一緒に手伝って配達したことが何回かありましたが、終わってからショウちゃんが買って
くれたアンパンを、二人で食べながら帰った時の美味しくて嬉しかった思い出は、今でも
忘れられません。
また高校時代、校則で禁じられていたアルバイト、週1回の小学生の家庭教師をしていた
頃、2000円の月謝を貰った日は、必ずクラスメイト数人と連れ立ってお好み焼き屋に
入り、1枚50円のお好み焼きか焼きそばを驕り、さらに帰りに、アンパンを数個買って
寮に戻った思い出も、懐かしく蘇ってくるのです。
あの頃は、小豆餡に限らず、甘い物だったら何でも好きだという人が結構いました。
今は、私の周囲ではそれほど甘い物が好きだと公言する人は、見当たりません。
ジャムやお菓子なども「甘さ控えめ」などと断りを入れた商品が目につきます。
タイ焼きでも、アンコはたっぷり入っているのに余り甘くないものが、増えています。
「健康のために糖質カット、甘い物などもってのほか」、という社会の風潮を感じます。
それだけ贅沢で「甘やかされた」人が増えたのかもしれません。
それはそれで、幸せなことです。

現在、アンパン1個の値段は、例えばコンビニのファミリーマートでは102円(税込み)、
駒澤大学駅前のベーカリーでは153円。安いといえば安い。そう感じますがどうでしょ
うか。
しかし、先日のニュースでは今夏の台風等の影響で、北海道産の小豆の卸値が50パーセ
ントも上がっているとのこと。
早晩、和菓子もアンパンも値上げされてくるのでしょう。
デフレ脱却、年2パーセント以上の値上げなどという国の政策を受けて、知らず知らずの
うちに便乗値上げされてきている(あるいは、量が減らされている)物が増えている昨今、
アンパンを始めとしたアン類商品の今後の値上げやいかに、です。
せめて賞味期限の長い羊羹でも買いだめしておくのが、せめてもの対抗策。
平成の時代が終わり、新時代と共に、甘味商品の世界も「世知辛く」ならないことを祈る
ばかりです。

それでは良い週末を。