息(いき)
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先週(前回)のエッセイで、「今年前半は、高校時代の恩師の死や、自宅裏地のマンション 建設計画反対活動などで心が乱れ、単発性の不整脈が出るようになった。しかし「深呼吸」 を意識的に励行することで脈の正常化が図られた」ということを述べました。 すると、すぐに渡邊 昌先生から返信があり、「深呼吸は、深く吐くことを意識すると良い です」という、ありがたい助言をいただきました。 私は、渡邊先生のメールを読んで、すぐに先生の自著「食で、医療費は10兆円減らせる」 を思い出しました。 この本は、適切な食と運動で、自らの糖尿病を治された体験をもとに書かれた「糖尿病は、 薬なしで治せる」(角川書店)から、さらに継続・進展した「食・こころ・身体」を一体的 ・全人的に捉えて疾病の予防と治療を行う必要性と、日頃のこの3つを基本とした健康づく りを主唱した新書。 その中で先生は「自己治癒力を最大にする新・統合医療学の枠組みの「食・こころ・身体・ いのち」の一つ、「こころ」の日常生活では、「瞑想・呼吸」の必要性をあげていたのです。 渡邊先生は、現在、我が国のライフサイエンス研究における、名実ともに優れた第一人者。 慶応大学医学部を卒業し、これまで国立がんセンター疫学部長、農業大学栄養学科教授、国 立健康・栄養研究所理事長、内閣府食育推進評価専門委員会座長などを務め、かって、湯川 秀樹や佐藤栄作などが設置した(社)生命科学振興会理事長として、多くの書籍を出されて きた。 十年ほど前、私が三重県厚生連の担当役員の時には、三重県下の「食育推進運動」をJA三 重と協同して展開しましたが、その中央大会にご出席いただき、興味が尽きないご講演をし ていただきました。 特に私が感心するのは、先生が53歳の時に多食から糖尿病になったのですが、「医学的・ 栄養学的に適正な食事と運動の励行で糖尿病を克服」されたこと。以降、この体験をもとに 様々な要職を駆使して「食と健康」の研究や普及啓発活動を、旺盛に行っておられます。 現在、御年78歳。酒とグルメを楽しみ、趣味のウオーキング・旅行・登山などを活発にな されている姿に、感心するばかりなのです。 特に私にとって渡邊先生の存在が有難かったのは、2008年(平成20年)の60歳の時 のこと。 それまで約4年間務めた三重県厚生連の常務理事の役職を、かねてから「60歳になったら 退任し、新たな生き方をしよう」と就任直後から計画していたので、2007年12月末の 任期途中で自主退職して帰京。 そして、翌2008年2月に株式会社を設立し、「丹精にんにく酒」の製造・販売の準備を スタートさせたのですが。 事業を開始する前から気になっていたのは、ニンニクが健康に良いということは、今では国 民の多くが知り、私も体験的な効果を含めて理解できているが、今一度、明確なエビデンス (科学的根拠)を知りたい」ということでした。 このため、これから時間をかけて書店巡り、ネット検索などでニンニクに関する情報を時間 をかけて収集し、これをまとめて要約し、パンフレットやホームページを作成する計画を立 てていたのですが、ふっと「渡邊先生に何か示唆をいただこうか」と思い立って、お電話を したのです。 すると、打てば響くとはこのことかと驚くほどの早さで、「ニンニクに関する専門書があり ますよ」との即答。 すぐに先生の法人事務所にお伺いし、「ニンニクの研究」という、ニンニクを原材料とした 「キョーレオピン」などの医薬品を製造している湧永製薬株式会社が研究・作製した、黒表 紙の分厚い立派な書籍をお借りしたのです。 これは長年、ニンニクの成分や成分変化、効能などを臨床研究している製薬会社ならではの 研究結果報告書で、それも非売本で関係方面の人にしか配本されてない文献。 私は翌日から、この重厚な専門書を1ページ目から精読し、内容をノートに要点をまとめて いく作業に入りました。 結果、商品名「丹精にんにく酒」(注・国際商標登録済み)の通信販売を行うのに不可欠と なる、パンフレットやホームページ作成の資料として多いに役立ち、私自身もニンニクの効 能に強い確信を持って、他人様(ひとさま)に商品を勧めることが出来たのです。 その時、全ての事象と言うか人生というものは、何か不思議な縁が働いて出来ているものだ と、つくづく思いました。 あれから10年余が経過。 現在の私は、ますます、人は勿論のこと自然界の全ての事象(その人の人生で遭遇する政治 ・経済の動向も、社会文化も、社会的事件も、天変地異も)は、その人の持って生まれた縁 で出来ており、それは先天的なものだけではなく後天的なことから作り変えられる、運命の ような気がしてなりません。 話を冒頭の「息(いき)」に戻しますと、渡邊先生から「深呼吸は、深く吐くことを意識す ること」という助言メールをいただいた時、もう一人、この様におっしゃっていた人を、思 い出しました。 「人は、オギャーと息を出して生まれ、スッと息を引き取って亡くなるもの。呼吸も、まず は吐くこと。それも静かに長く吐くことが大切」と。 その人とは、心身統一合気道の創始者で、「財団法人・氣の研究会」の理事長、合気道10 段の藤平光一氏(享年91歳)。 話が長くなりますので、続きは次回にしましょう。 それでは良い週末を。 |