この地で生きる(2)
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先日の台風15号の直撃で、首都圏の交通網は大混乱。 今や、猛暑・台風・大雨洪水・熱中症は日本の夏の季語になりそうなほど、「異常気象」が 常態化してしまいました。 来年も、再来年も、ますます酷暑・災害がエスカレートしていくでしょう。 東京は一極集中の大混雑で、ますますヒート・アイランド化が進み、住みずらくなっていま す。 しかし、極めつけの天変地異は、何と言っても震度6以上の「首都圏直下型地震」。 「今後30年以内に発生する確率は、70%」と言われています。 確か、2011年3月の東日本大震災後、同様の発表が政府関係から発表されています。 あれから10年近く経過したいま、残すは約20年。公表するなら当時の「今後30年以内 ・・・」を検証し、「今後20年以内に起こる確率は〇〇%」とすべきではないのでは。 30年以内に70%だったら、60年以内に35%に希釈され、20年以内だと濃くなって 105%になるのか? そもそも分母と分子は何なのか。「今後3年以内に」なら実感がわくが、期間の30年とか 40年とかの設定に、何か意味があるのか?私の頭では、よくわかりません。 ともあれ、今、東京に大地震が勃発したら、まさに阿鼻叫喚→日本社会沈没化でしょう。 そうした危機的状況を、当然に国・地方自治体は以前から予測し、色々な防災対策を進めて いることでしょう。(私は、一時避難場所→広域避難場所しか、具体的な防災対策の広報は 承知していませんが)前回書いた「この地で生きる!」という(主語が誰だかわからないが) 決意みなぎる避難訓練への呼びかけコピー。9月1日の防災の日に合わせただけでしょうが、 いいコピーだったと思います。 だが。 行政の本音は「東京で巨大地震に襲われたら、お手上げ。今から老朽化した高速道路や橋や トンネルや崖や建造物などの補強は追いつかない。せめて自分の建物は自分で耐震補強し、 地震が起こったらまず逃げること。それしかない」ということでしょう。この狭い日本、と りわけ首都圏では「何処に逃れられるわけではなし、自分の住んでいる地域で生き抜く覚悟 で、それぞれ頑張ってください」というふうに、私はコピーの裏の意味を解釈。 ここで、話を大きく転換。 同じ「この地で生き抜く」でも、前回も少し述べましたが、私は子供たちには「これからは、 世界的視野で行動し、海外にも家を持つこと、安定した好きな国に住むことも考えたほうが いいぞ。外国の友達を多く作ること」と話しています。 首都圏や名古屋に家を新築するのもいいが、子供たちの将来と日本の国力の低下を見据え、 グローバルな視点から、日本に固執しない選択肢も用意しておいたほうがいいと思う、と。 実際に、白金の賃貸マンションに住む長男の二人の小学生の子供や、同じく赴任中の台北の マンションに住む次男の小学1年と幼稚園の子供の話になると、日本の学校で型にはめられ た教育を受けるより、海外のスクールで学び、育て、個性を磨かせるのがいいという感じに なっているのです。 そんな話をしていたのが昨年末。 すると、今夏に出版された本に、「やはりそうだよな!」と私は刺激を受けました。 それは、世界的投資家として著名なジム・ロジャースの書籍「お金の流れで読む、日本と世 界の未来」(PHP新書)と「日本への警告」(講談社α新書)。 ごく簡略して趣旨を述べると。 「日本は、私が世界で一番好きな国の一つ。だがその大好きな日本が、50年後、100年 後には消えてしまうのは残念でならない」 「もし私がいま10歳の日本人なら、自分自身に自動小銃を購入するか、もしくはこの国を 去ることを選ぶだろう。なぜなら私が40歳になった2050年には、国民全体が不満を持 ち、怒り、バイオレンス、社会不安がつのっている。殺人をふくめ様々な犯罪が増える犯罪 大国になっているだろうから」 「その原因は、少子高齢化と多額の財政赤字に伴う恐るべき長期債務残高だ。 このままいけば、いま10歳の日本人が40歳になるころには、日本の借金は目も当てられ ない状態になっている。やがて日本の財政破綻が多くの人々の目に明らかになり、国債が買 われなくなれば、日本政府は金利を引き上げざるを得なくなる。その時、日本は高金利によ ってさらに膨らんだ借金と向き合わなくてはならない」 「アベノミクスによる金融緩和は恐るべき規模で実行され、日銀は日本の国債を買うという 前代未聞の金融政策をとっている。2016年9月には、指定した利回りで国債を無制限で 買い入れることを新たに導入した。これは、言い換えれば紙幣を無制限に刷っいることに等 しい。 無制限の紙幣とは・・・・。昔の日本を思えば、考えられない事態だ。今から30年前、日 本といえば高潔な魂、 そして健全な財政によって世界に知られていた。中央銀行が自らお金を刷って、日本円をダ メにしようとするなどとは、誰一人として考えることも出来なかっただろう… 紙幣を刷るまくっても駄目なのだ。根本的な解決にはならない」 「20年後には日本円の価値は今より大幅に下がっているはずだ。米ドルのみならず、韓国 ウオンに対しても相対的に価値を落としていることだろう」 「今の日本政府と日銀は、かっての日本人とは違い、ビジネスにより外貨を稼ごうとするよ りも、紙幣を刷り続けて日本を救済しようとしている。これはとんでもない間違いだ。アベ ノミクスの第一の矢である金融緩和は、日本の株価を押し上げるとともに、通貨の価値を円 安に誘導した。このことにより日本企業が息を吹き返したように語られているが、こうした 通貨切り下げ策が中長期的に一国の経済を成長させたことは、今までの世界の歴史を見ても、 一度もない」 「アベノミクスの第二の矢、財政出動もひどいものだった。これは私には「日本を破壊しま す」という宣言にしか聞こえなかった。先進国で最悪レベルの財政赤字を抱え、国の借金が 増え続ける中で、さらに無駄な公共事業に公費を費やそうというのは正気の沙汰とは思えな い。 安倍首相は素晴らしい人物には違いないと思うが、してきたことは、ほぼすべてが間違いだ。 安倍首相が借金に目をつぶっているのは、最終的に借金を返さなくてはならない局面になっ た時には、自分がこの世にはいないからなのだろう。自分や、自らの体制を維持することが 彼の行動原理であり、そのツケを払うのは日本の若者だ」 「東京オリンピックは、日本の衰退を早める。歴史を見れば、オリンピックが国家にとって お金儲けになったためしがないことがわかる。一部の人に短期的な収入をもたらすことはあ っても、国全体を救うことにはならず、むしろ弊害をおよぼす。結局のところ、オリンピッ クのせいで日本の借金はさらに膨らむのだ。これは一般の人々にとって悪い結果にしかなら ない。もし私が日本の若者だったら、こうした現実を前に強い怒りと不安でいっぱいになる ことだろう」 「私の目に見える日本の未来はこのようなものだ。人口が減り、借金が膨れ上がり、衰退を 続ける。そうして生活水準はますます低下し続ける。日本人がそうした未来を望むのであれ ば、それもいい。 しかし、私はそのような国で暮らしたいとは思わない」 以上が、ジムの日本に対する懸念のさわり。 そして喫緊の課題の克服法が第2章に掲載されていますが、省略します。 「この地に生きる・・・・・」 あと10日ほどで私も72歳。 以前から私は「日本の旧弊が崩れ、平和ボケの国民性が覚醒し、活力のある国が再生される としたら、最早、戦争(テロ・内乱を含む)が起こるか経済大恐慌が起こるか、大震災が起 こるかしか、無いのかもしれない。そしてそのどれもが、いつ起こってもおかしくはない」 と呟いてきました。 そして、気分転換を図るとともに、いざ東京から疎開せざるを得ない場合を考え、7年ほど 前に長野県佐久市の街はずれに、小さなセカンドハウスを建てました。すでに70代の私も 配偶者も、「老後は海外移住」などとは、さらさら考えていません。ともかく「東京で生き る」ことしか。そして何か起こったら、佐久の家に避難しようと思っているのです。佐久の 家は気晴らし用と疎開先。 しかし、私の子供や孫の人生はまだまだ先に続きます。 今の日本の稚拙な政治家や現場知らずの保守的な官僚や大手企業の衰退化を見ていると、 30年後の日本は、ジムの予言通り、まさに力が衰えて俯いている弱小国のイメージ。中国 の領有になっているかも。 30年などあっという間。 約30年前に、日中友好医療交流団の厚生省担当として、北京に出張した時、北京空港が薄 暗い倉庫の様なチャチな建物、ホテルに向かう道路沿いの貧しい木造平屋の家並み、少ない 自動車、我が物顔で走る自転車の数に、「何と近代化が遅れている貧しい国か!」と驚いた 経験が。それがたったの30年で今や中国は21世紀の盟主になろうかとの繁栄ぶり{19 世紀はイギリス、20世紀はアメリカ}。 子供達には「この地(日本)にこだわるな」と。 そして、私は「この地で悔いなく生きる!」と決断している、71歳最後の月なのです。 それでは良い週末を。 |