東井朝仁 随想録
「良い週末を」

春間近の午後に、一言
今は、2月21日(金)午後3時。
天候は晴れ。気温14度(私の居る室内温度は、エアコンなしで20度)。
春ももうすぐ。
今年の開花予想は3月15日とのこと。この通りだと観測史上最速。
喜んでいいのか、地球温暖化を嘆くべきか。
あと数年後には、「梅は咲いたか、桜はまだか?」の句は死語に。
2月に桜も咲くような流れ。
地球の気候変動は加速。

それでも日本やアメリカは「経済最優先。環境対策はそのあと」の思想。
地球環境保護に奔走するスエーデンの高校生・トゥンベリさんは「私たちはまさに、大量絶
滅の始まりに差し掛かっているのです。でも貴方たちが語るのは、いつもお金や、途絶える
ことのない経済成長の話だけ。よくそんなことが出来ますね!」と、国連でスピーチ。
しかし、日本の政府や国会は、ノー天気。
それでいて今回「新型コロナウイルス感染症」が流行り始めたら、マスコミは朝から夜まで、
連日このニュースばかり。どの局もニュースやワイドショーで興奮しまくり。
私の個人的感想では、毎冬流行するA型とかB型インフルエンザの方が恐いのではと、現段
階では思っていますが。
昨日の時点で、政府公表によると「感染者は、横浜港入港のクルーズ船乗員・乗客634人
(うち2人死亡)、その他の国内感染者は84名(うち1人死亡)」とのこと。
ちなみに、昨年のインフルによる国内死者数は約3300名。
今回のウイルスは弱毒性だが、現時点では予防及び治療法がないという事で、さらにいつ突
然変異して毒性を増すやもしれないので、全く予断は出来ませんが、このお上から下々まで
の騒ぎようは「異様」。

政府は「入国者に対する水際作戦で国内侵入を防ぎ、国内発生患者に対しては医療機関でし
っかりと対応してまいりたい」などと答弁しているが、現状では水際作戦など無力。
私が17年前に東京検疫所次長をしている頃、SARSで大騒ぎし、成田空港検疫所などに
サーモグラフィーを導入して発熱の入国者をチエックし始めたが、殆どは素通り。いかんせ
ん、検疫所の人も機器も少なくて検疫体制が脆弱(現在は良くなっていると思うが)。
なぜならずっと以前から、検疫所とか研究機関などは定員削減の草刈り場。
少ない職員で、検疫業務以外にも輸入食品検査業務が山積しており、その上、本省の方から
「あれやれ、これやれ」の指示が多く、誰もが過労状態。私がいた東京検疫所での1年間で
も、お台場の本所を中心に川崎や千葉や鹿島や羽田国際空港支所を抱えていたので、例えば
SARS感染者の搬送・消毒訓練を羽田国際空港で実施し、防護服を着た職員を中心に、消
防庁の協力を得て荏原や墨東の都立指定病院まで救急車搬送の訓練などを行っていた。
だが、この羽田国際空港検疫支所の検疫官は、確か2〜3名ほど。彼らだけで日勤以外に夜
間便対応のために何度も宿直を余儀なくされる状態だった。また、食品検疫では、日々増大
する東京港湾への貨物船入港に対して、臨船検疫のために本所の検疫官二名が出動。さらに、
十数名ほどの食品衛生監視員は毎日遅くまで残業する過酷な情況。
私が東京検疫所次長に異動した4月第1週に、他所から異動してきた若い女性職員が休日に
自殺(今までの過労が主因の、公務災害と認定された)。
さらに、食品検疫業務のこれも20代の女性職員が、年度途中に過労で脳卒中で倒れたり・・・。
現在は大きく改善されているはずだが・・・。

一言。
総理も、閣僚も、厚生労働大臣も本省の幹部も、みな、現場を知らず。
「すべては会議室内で処理できる」としか思っていないはず。口ばかり。
そもそも、東日本大震災勃発の時も、時の首相がヘリで現場上空に向かったというニュース
を聞き、「それがこの国の防災マニュアルでの総理の行動だったか?!」と不審に感じた。
私は、これから近いうちに、大震災や尖閣列島・竹島を巡る武力紛争、国内テロなどの不測
の事態が頻発すると予測。その時、国や行政は素早く適切な初動をとれるだろうか。
私は非常に混乱して、右往左往すると思う。
それが我が国の中枢の現状だと思う。
今夏の東京オリンピック開催一つとっても、極めて不安。

「何とか対策マニュアル」などの文章を作るのは、役所の偉い人が大好き。
何人かの現場の意見を聞き、担当技官や事務官が参考文献を基に草案を作り、それを民間の
有識者からなる委員会で討議させて原案を出させ、それから何回か会議をして「又はより、
及びのほうがいい。ここは何々等と、等を入れておこう」など、まさに役所文書はこうある
べきという形でマニュアルを作成して、満足。
これは自分たちの成果と。
あとは、マニュアル通りに現場が動けよ、俺たちの役目は終わったんだぞと。
だが、このマニュアル通り、適切・迅速な初動を冷静沈着に指示するのが、国の務め、首相、
閣僚の一大責務なのだが。
ずばり、今の日本ではどの分野でも、右往左往してパニックになるでしょう。
下手すると、国民には重要情報を隠蔽し、自分たち(全てではないが)だけ避難してしまう
のでは、と勘繰りたくなります。
それほど、政治も行政組織も劣化していると思います。
国会でいえば、野党ももっと日本の将来を見据えた、まさに「骨太」の責任ある議論と政策
提言をしてもらいたい。
今の野党党首が安倍首相の後釜になったら、今以上に日本は劣化すると思っている国民は、
少なくないはず。

ずばり日本の現状は、グローバルにものが見えて柔軟かつ大胆な決断ができる政治家、そし
て信頼できる有能な行政官の圧倒的不足(頭は切れるのだろうが、志が不明で、小粒)。
国もマスコミも、新型インフルの感染者がどこそこで発生、現在の感染者数何名とかで騒ぎ
まくるのもいいが、この節目に、冷静に「感染症対策の拡充整備に関する緊急提言」などを
至急行い、予算を確保して、箱モノだけではなくマンパワーの育成確保に努めて貰いたいも
のだ。
また大変な事態が勃発する前に。

他にも色々と極めて危うい問題が押し寄せていますが、感想はまたの機会に。

「くれないの、いともくさりて、むしとなる」
この句は何を意味するでしょうか?
日本の深紅の日の丸が腐るわけではありません。
「紅」の、糸が腐って虫になれば、「虹」になるのです。
日本もそうなることを、今回も祈るばかりです。

それでは良い週末を。