東井朝仁 随想録
「良い週末を」

今週の脳裏に残った3つの言葉
このエッセイを書いているのは、18日の木曜日。
だからまだ今週は2日ありますが、これまでの5日間で脳裏に浮かぶ言葉、心に残る文章
の断片が3つあります。
「どうという事はない」と思われる方が多いかも知れませんが、気になることを書き記し
て今週のエッセイとします。

まず一つ目。
これは掲載が週刊誌だったか新聞だったか、発言しているのが「ビートたけし」だったか
他の著名人だったかが思い出せないのですが、ポケットから出てきた紙切れに、私が写し
書きした文章。
「ネットは世界とつながる素晴らしいツール、みたいに言われているけど、本当にそうか?
実際はリアルでも何もできないヤツラが、悶々としたモノを別の誰かにぶつけるハケグチ
になっているようにしか、思えない。
ずっと言っていることだけど、スマホは現代の『年貢』だし『手錠』だよ。
みんな四六時中それに縛られているし、おまけに毎月の通信費まで取られる。
儲かるのは電話会社とネット企業ばかり。こんなもんに依存するより、電源を切ってリア
ルな世界とちゃんと向き合った方が、よっぽど建設的だっての」

こう移し替えていて、「っての」で文章を締めているので、ビートたけしの様な気がしま
した。
私も以前から述べてきたことですが、この発言に同感です。
今朝も自粛前の混雑が戻ってきた車内を見渡すと、座席を埋めた人も吊革をつかまってい
る人も、、みなスマホを見ていました。中には一人か二人は本や新聞を読んでいるとか、
目を閉じている人が居るものですが、今朝は皆無。
若い者から私と同世代の者まで、全員が黙々とスマホの画面を覗いているのです。
ちらりと左隣の若者の画面を見ると、ゲーム。右隣の中年女性はLINEのメールか?
マスクをした人々が、一様にスマホとにらめっこしている風景は、私には「異様」に映り
ました。

私は以前から、伝染病の大流行→台風などの大災害・大地震の発生→経済大恐慌→国民の
政党政治への不信・不満→社会の荒廃→国家の統治機能のマヒ→戦争勃発・・・。
これらが同時進行したりして、今までの秩序や制度や価値観が崩壊し、新たな社会が形成
され、時代が変わってきたのが過去の歴史。
歴史は繰り返すと述べてきましたが、今の社会はかっての人々が歩んだ歴史の雛形通り、
若者から高齢者まで誰もかれもが画一的な行動と生活様式を繰り返し、羊のように黙々と
従順に、一方通行の狭い道を歩いているような気がしてなりません。
だから、現政権が主導してきた「陸上配備型迎撃ミサイルシステム・イージス・アショア」
の配備計画の停止を防衛大臣が突然に発表した結果、今までの政府の説明が全くいい加減
だったことが露呈しようが、過日、沖縄・辺野古の新基地計画について、政府が総工事費
を従来想定の2.7倍の約9300億円に、工期を当初の8年から約12年にする見直し案
を出そうが、国会議員の夏のボーナスがすんなりと満額支給されようが、スマホなどに流
れるニュースは、その結果報告だけ。
都知事選がスタートしようが、野党は足並みがそろわず、小池知事は相変わらずカタカナ
言葉を連発して自信満々。都民の関心は限りなくゼロに近く。
こうした国民の無気力・無関心・無作為が停滞する社会状況にあって、政治家や国家権力
の中枢は「国民には寄らしむべし、知らしむべからず」と、口先だけのやりたい放題で無
責任状態。

どうしてこんな時代になってしまったのか。
私は、具体的にはやはり「国民の参政権の行使=選挙での投票」が、自由と民主主義社会
を持続可能とする唯一の手段だと思います。
しかし、令和元年の国政選挙(参議院議員選挙)の投票率は49%。
有権者の2人に1人が棄権。
特に10代20代の投票率は31〜32%と、3人に2人が棄権!
棄権は「時の政権与党への白紙委任」そのもの。
これでは、政党政治も民主主義もあったものではありません。
それは、政治に対する国民の関心・意識の薄弱さと同時に、政治の劣化・腐敗が進行して
いる証左と言えるでしょう。
「政権与党の政策には反対だが、投票したい野党もない。棄権は無言の政治批判だ」
という人がいますが、全く幼稚。
それならどこの野党でもいいから、一票を投じることのほうが有意。
結果、議席的には与野党逆転が図られなくても、与野党の投票数比率は、民意を表したも
のとして政権への重い圧力となるはず。

話が長くなりましたが、スマホという道具は便利で必要。
しかし、前述の文章の通り、国民総スマホになってしまったら、余程のことがない限り、
国民がスマホに操られる社会を招来させることになるでしょう。
コロナ禍が引き金になり、日本の現代史に新たな国家的事件が加わりそうな予感を禁じ得
ません。

少し一つ目の話が長くなったので、二つ目、三つ目をごく手短に。
二つ目。
この話は、スポーツ新聞の芸能欄で読んだもの。
メモもなく記憶だけですが、俳優の三浦友和氏と元歌手の山口百恵さんのご長男(祐太郎)
が結婚したニュース記事の中で、母親のことを語った下り。
「母は古風な昔気質の人です。そして、肝っ玉の据わった人です。
父が『俺が役者として稼げなくなったら、どうしようか』と言ったら、母は『10万円の
収入だったら10万円で、1万円だったら1万円で生活していけばいいのよ』と答えてい
ました」
私は、「成程。いい話だな・・・」と感心し、また、心が明るくなりました。

三つ目。
これは、精神・神経科医師で作家の保坂 隆氏の言葉。
「私は、人生を最も価値あるものにする言葉は『ありがとう』だと思っています」

実は私も、今年の元旦に「いつも、どの様な状況においても、『ありがとう』の言葉を出
すこと」と、今年のモットーとして手帳に記しました。
「ありがとう」「ありがたい」「お陰様で」と、さりげなく言えるような、そんな成熟し
た人間に成長していくこと。
これが人生最後で最大の、私の目標なのです。

今週、心に残った三つの言葉。
雑駁なエッセイでしたが、ご笑覧いただき「ありがとうございました!」

それでは良い週末を。