元 気 で す
|
連日の猛暑。 今日(8月12日)も、自宅から最寄り駅までの10分ほどの道のりを、頭に白いバンダ ナを巻き、白い舗道に落ちた自分の影を踏み続けながら、灼熱の光から逃れるように早足 で歩いた。 途中、銀行に飛び込み、しばし冷房で身体を冷やす。 でないと、残りの道のりが苦しくなる。 こんな容赦のない炎暑は過去にもあったのだろうが、ここ数年ほどは一段と激しくなった ようだ。 しかし、いくら異常気象と言えども、やはり加齢に伴う心身の耐性の低下が大きいと痛感。 夏は冷房、冬は暖房。 春夏秋冬の季節の寒暖差を避け、過保護な生活習慣が続いている。 生活が豊かになり、贅沢になり、ついつい御身大切の健康第一主義では、所詮、自然の変 化に翻弄される脆弱な肉体しか、もたらしてはくれない。 無理は禁物。だが身体の鍛錬は幾つになっても、自然界で生きる限り怠ってはいけないこ とだろう。 ついつい、最近の子供達の行く末を案じてしまう。 午後になると天気は一変。 午前の青空と熱光は消え、暗雲と遠雷があたりを威嚇し始めている。 私はエアコンの温度を27度に設定した自室で、スマホのイヤホンを耳に当て、音楽を聴 いている。この季節になると思い出される、色々な夏歌を。 今日は、1980年の11月に発売されてヒットした、我が国を代表するフォーク歌手・ 吉田拓郎の「元気です」(注・1972年発売の同名のLP盤ではなく、TBSの連ドラ の主題歌だったシングル盤)に、久々に心を奪われた。 私は、彼が作詞・作曲して唄う多くの歌のどれもが好きだが、その中でも一番好きな歌は? と聞かれたら、この歌をあげるでしょう。 歌詞は四番まであり、春夏秋冬のそれぞれの季節における一人の若者の前向きな心情が吐 露されていて、全体で一つのストーリーが構成されている。 この歌は、メロデイもリズムも良く、歌詞の内容に共鳴しながら「元気」が自然と身体の 中に滲み出てくる名歌だ、と私は思っている。 特に夏になると、二番の歌詞が心に響く。 それでは春の一番と、夏の二番を。 「♪誰もこっちを向いてはくれません 一年目の春 立ち尽くす私 道行く人々は 日々を追いかけ 今日一日でも 確かであれと願う わずかにのぞいた 雨上がりの空を見て 笑顔を作って『どうですか?』と問いかける 色んなことがあり 愛さえ見失う それでも誰かと触れ合えば そうだ 元気ですよと 答えよう」 「♪風よ運べよ 遠い人へのこの便り 二年目の夏 涙と貰い水 幸せの色は 日に焼けた肌の色 唇に浮かんだ 言葉は潮の味 出会いや別れに 慣れてはきたけれど 一人の重さが誰にも伝わらず どこかへ旅立てば 振り返りはしない それでもこの町に心をしずめたい そうだ 元気ですよと 答えたい」 この歌が世に流れたのは1980年(昭和55年)。 ちょうど今から40年前。 私が32歳の頃。 そういえば、この「元気です」が流れた3か月後の1981年2月には、俳優の寺尾 聡 が作曲して唄った「ルビーの指輪」が発売されて大ヒット。 この年のレコード大賞に輝いた。 「♪(略)そうね 誕生石ならルビーなの そんな言葉が頭に渦巻くよ あれは八月 眩い陽の中で 誓った愛の幻 (略)そして 二年の月日が流れ去り 街でベージュのコートを見かけると 指にルビーのリングを探すのさ 貴女を失ってから・・・」 当時の私は、この歌に触発されたのかどうか、結婚5周年を迎え、配偶者にルビーの指輪 をプレゼントした。 これは日比谷の地下街の小さな装飾品店で買った、実は「ルビーの様な」指輪。 今でもごくたまに指にはめているのを見かけることがあるが、その度に「そのルビーの指 輪は、いいな・・・」と一言。 今日は、家内の71回目の誕生日。 話は変わり。 コロナ自粛で、居酒屋での談論風発もできない。馴染みのスナックやカラオケで歌うこと も、群れてスポーツをすることもはばかられる。ふらりと旅行に出ることもしかり。 世の中は集団から個人、社会から家庭、連帯から孤立、外向きから内向き、協同から分断、 親密から疎遠に・・・。 コロナ禍の収束が全く見えない中、こうした状況はまだまだ続くでしょう。 日本中に、いや世界中に不安と不満が渦巻いて、鬱屈した雰囲気が充満している今日。こ れからはパンデミックに連関して、時代を激変させる様々な事象が起こると予測。予定調 和的に「今までのように安全・安心な社会が続く」と考えることは、もはや不可能な時代 に突入した感がある。 それでも「生きとし生ける物」は、明日に向かって生きていくもの。 「死ぬまで長生き」できるもの。 大事なことは「希望を失わず、今を悔いなく生きること」 たとえ明日、この人生が終ろうとも、今の今を楽しく生きること。 私はそう念じているのです。 最近コロナ禍で、なかなか会う機会がない懐かしい人や親しい人から、メールや電話で 「お元気ですか?」という連絡が増えた。 その時は、歌の文句のように決まって「元気です」と答えている73年目の夏なのです。 それでは良い週末を。 |