ファイト(1)
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緊急事態宣言下の「不要不急の外出等の自粛」を始めて、約3週間になった。 現在の宣言が発令される以前から自粛は緩やかに続いてきたが、今回は今までと様相を異 にし、国民の多くが「本気」にならざるを得ない状況になったようだ。 私も、旅行、飲み会、集い、映画館、息子の家などへの外出は、全く控えている。 ただし、青山にある個人事務所には、電車のラッシュを避けて通い、様々な本を読んだり、 木造の自宅と違い音が漏れにくいマンションの部屋なので、音響の良いステレオで音楽を 聴いたり、篠笛の音を思い切り出して練習をしている。そして帰りに青山1丁目駅から駒 沢大学駅間にある喫茶店で珈琲を飲み、それから1万歩以上のウオーキングをして帰宅。 夕食では晩酌に燗酒を1本。食後はDVD映画を観て、腕立て伏せとスクワットを40回 づつ行い、風呂に入ってから、30分の瞑想&深呼吸をして就寝。 これがこの3週間の日常となっている。 このような、今までに経験したことのない日々を繰り返しているのだが、それほど苦には ならない。 それどころか、人生の晩年において、私の好きな読書、映画、音楽を十分に堪能できる貴 重な季節を与えられたと、個人的には楽しんでいる。 コロナ禍が終息した後、再び同様な自粛生活を強いられることがあるとしたら、国家によ る「戒厳令」のような発令がなされた時だろう。 日本と外国との武力紛争・戦争が勃発した暁には、「ウイズコロナ」「ステイホーム」な どのカタカタ文字を使い、アフター・コロナの「新しい生活様式」などと温い(ぬるい) ことを言ってはおられないだろう。 「外出禁止」「流言飛語の類のSNS配信者への厳罰」「国を分断する反国家的行動の禁 止」「食料品・日用品の買占め、隠匿を行った者への罰金」「宴会・歌舞音曲の自粛」 等々が想定される。 国中が不安と混乱で凍り、きっと国の中枢をはじめ国民の多くが「これは、全く想定外の 出来事だ。まさか戦争が始まるとは」と絶句するだろうが。 私が「戦時中、空襲警報発令で、都民は灯火を落としてじっと息をひそめている生活みた いなもんですかね」と言うと、先輩は笑いながら「コロナ自粛なんて、毎日安心して美味 いものを食べ、テレビを見たりスマホ配信を楽しんだり、暖房の効いた部屋でぬくぬくと 寝られるんだから、天国だよ。それでも我慢が出来ない人が多いらしいが、現在は苦労の 経験が無い人ばかりだからな」と言っていた。 でも、何人かの飲食店経営者やサラリーマンが「これは第三次世界大戦だ!」「戦争は戦 う相手や爆弾は見えるが、コロナは見えないから怖いよ」と呟いていた。これも平和ボケ した現代人の感覚だろうが、気持ちは十分わかる。 だが、彼等には気の毒だが、今回のコロナ禍は戦争でも内乱でもない。 国民が命の危険にさらされているが、国や地方公共団体の指導者が、国内や世界の有識者 の英知を結集し、冷静に対策を決断・実行し、経済的・精神的・医療的に困難に陥ってい る人たちを、官民一体となって守って行けば、徐々に終息への出口が見えてくるはず。 その間は「自粛もやむを得ない」と巣籠りをすることは、現時点で全国民が出来得る最善 の策なのだろう。 この程度の社会変動でパニクっていたら、いざ有事の時にはどうなることだろう。 ただし、この沈滞した時期だからこそのチャンスもある。この時間が止まったような空白 時期に、国は「ポストコロナ」を見据え、早急に「将来の日本のあるべき姿」=「日本国 としてのプリンシプル(原理・原則)」の骨太方針を策定するべきだ。その具体的政策を 国民に明確に示すべきだ。政治家は、今の今こそ粉骨砕身の努力を尽くす絶好のチャンス だと思う。 「国民と日本国のためには、命を賭して任務にあたる」覚悟で事に当たって貰いたい。 そうした志がない議員は、即刻辞職して貰いたいものだ。 感染症対策に直接かかわっている大臣や省庁は全体のごく一部。あとは日頃から何をして いるかわからない。 国会中継を見ていても、居眠りやぼーっとしている議員ばかり。 野党も、菅総理大臣の揚げ足取りや、週刊誌や新聞記事を参考にした表面的な質問ばかり で、質問が軽すぎる。理論的攻勢がお粗末。 圧倒的多数の議員や厚労省以外の省庁の役人は、当然ルーチンの業務があるだろうが、国 民のためにどのような汗を流しているのかわからない。 コロナ後の我が国社会の再生・発展を図るために、いまどの様な大胆な改革案を検討して いるのだろうか? 「うちには関係ないよ」と、ぼーっとしている議員や官僚が多いのでは。 資本主義も行きつくとこまで来て、世界中に経済格差を拡大させ、社会を分断させ、環境 より経済第一主義で深刻な地球温暖化をもたらしている現在、これからの日本は「資本主 義をどの様に修正し、どのように国の経済を再生させていくか」が、我が国の喫緊の最重 要課題。 菅総理は所信表明演説で「前例主義撤廃、公助・共助より、まず自助を」と唱えていたが、 コロナ禍や大災害で見えてきた国民の「自粛」「辛抱」「再生」等の自助努力と共に、地 域の共助や国や都道府県の公助の重要性をどう位置付けていくのか。今になって保健所が 足りない、病床がひっ迫していると騒いでいるが、これらの公共資本の整備は、コロナ騒 動が終ったらケロリと忘却されてしまうのか。 そして、日本社会は従来同様「市場原理主義」で経済成長第一、何でもかでも、「勝つか 負けるか」の自助努力と自己責任第一の経済社会を続けていくのか。 「平和主義、民主主義、環境保全、優秀で丁寧なモノづくりの技術、思いやりの精神」な どを日本のプリンシプルとし、暮らしも心も豊かな、住みやすい国を指呼の間に望めるよ うな、老いも若きも将来に希望を持てるような根太い政策を、是非まとめて貰いたいもの だ。 それは与党からでも野党からでもいい。 一方、今年度(2020年度)の国と地方の「長期債務残高(借金)」は、1125兆円 と過去最大の額に上る見通し。 主要各国の中でも群を抜いてワースト1。 過去の歴史でも、パンデミック→経済恐慌→金融恐慌→財政破綻などが連鎖する。 以前は国会で「財政再建」が叫ばれていたが、今はそんな雰囲気はゼロ。 このままでは日本は破綻していくだろう。 東京五輪の日程も近づいてきている。 オリンピックを中止すると、約4兆5千億円の経済的損失がでると試算。 無観客開催でも約2兆4千万円の損失がでると。 国民の7,8割は「開催に反対・消極的」 それでも政権・都知事は「開催する」としているが、内実は「実施か再延期か中止か」の 決断をぎりぎりまで延ばすだろう。 それとも、首相も都知事もその関係者も「自分の任期中に、どうしても開催したい」とい う欲望が強いのか。それを冷静に諫めるブレーンもいないのか。 全て「ワクチン」頼みで、判断を先送りしているのだろうが。 政治的判断・対応が、なにもかも後手後手の昨今。 嫌な予感がする。 今後の国際情勢も大変厳しい状況に直面している。 分断国家となったアメリカと、世界の覇権国への野望むき出しの中国との対立激化が予測 される中、日本はアメリカべったりの日米安保条約頼みで防衛・外交戦略を立てているが、 もしアメリカが「尖閣も安保の適用地域だが、まずは日本が専守防衛で中国と戦え」と静 観されたら、どうするのか。アメリカとも中国ともウイン・ウインの関係を保持し、巧み に平和外交を展開できる総理、閣僚、外交官がいるのだろうか。 憲法改正の議論と共に、日本の防衛を今こそ真剣に国会で論議する時だ。 経済も財政も外交・防衛も教育(小学3年生からの英語教育は非常に問題と思うが)も、 そして今後の社会福祉制度も、どれもこれも日本の盛衰にかかわる重要課題。 だが・・。 残念ながら、今の政治家も官僚も経済界もマスコミも劣化してしまった感が、どうしても 否めない。 でも、一抹の期待は持っている。 日本は、いまこそ「ワン・チーム」となって国難に向き合ってこれを民主的に乗り越えて いく時だと痛感している。 だから「ファイト!」 そんなこんなを憂い考え、今日も自粛の一日を過ごすのです。 ただし、そうしたことを考えるのは1時間以内。 それより読みたい本や観たい映画が山積しているのです。 この続きは次回に。 それでは良い週末を。 |