明日ありと思う心の・・・ |
テレビのチャンネルを回すと、どこの局も「コロナ禍・オリンピック・料理」の3本立て 番組ばかり。 どこの店のラーメン・カレーがどうだこうだの談義や、大食い競争。「またか・・」と、 私はすぐにチャンネルを変えるか切るかするが、大食いの見世物だけは嫌悪感を感じる。 競い合う常連タレントやゲストの苦悶の表情に対し、応援団から「頑張れ、頑張れ」の掛 け声。過度の大食いで急性心不全などの発作を起こさなければいいが、と不愉快になる。 そもそも悶絶しそうな表情で大食いを競わせるシーンを、視聴者が面白がるはずとの読み からだろうが、制作費がかからないこうした安直な番組を流しつづけるテレビの世界も、 つくづく劣化したものだと嘆かわしくなる。 あるいは「視聴者もなめられたものだ」と私が想像する以上に、多くの視聴者は腹を抱え て喜んでいるのが現実なのかもしれないが。 コロナ関連番組もしかり。 連日、同じコメンテーター達が、街角で交わす庶民のボヤキ的日常挨拶と大差ないコメン トを繰り返している。そして「感染症学が専門の○○先生にお伺いします」とニュース・ キャスターが振り、その「特任非常勤局付」の先生が、具体的かつ科学的な話ではなく 「まだまだ気を緩めることなく、ここはしっかりと・・」などと、毎回情緒的な一般論で 締めくくる。 テレビの世界では、こうしたことが昨年から今日まで延々と続いているように感じる。 そしてここに至り、今度は「オリンピック」が「自民党総裁選」に様変わった。 自民党総裁選は今日(17日)告示。投開票は12日後の29日。 まだ始まったばかりだが、マスコミ報道が先行しているので、もう今週末にでも投開票が 行われてもおかしくはない感じ。 今月に入ってから連日、マスコミは「岸田氏、立候補表明」「石破氏の意向は?」「高市 氏、各派閥に挨拶廻り」「2A(安倍・麻生)対河野・石破の対立構図か。裏で菅総理の 思惑」「河野氏、世論調査の支持率トップ」などのニュースを、常にトップで流している。 今の日本には、コロナ禍対策やアフガニスタンに取り残された日本関係者の避難輸送や中 国の覇権主義への対応や北朝鮮のミサイルに対する防衛態勢や大災害に備える防災強靭化 対策や、疲弊した経済の活性化対策や脱炭素・温暖化防止対策や少子・高齢化社会の子育 て・医療・年金・介護福祉対策など、まさに戦後最大の、100年に一度の、いや、国の 存亡をかけた未曽有のもいえる喫緊の課題が山積している。 コロナ禍で国の歳出予算も膨大になってきている。 オリンピック・パラリンピックの事業総額も、膨大に膨れ上がった。 現在の日本の借金は約1200兆円(国民一人当たり、約1000万円)。 政府総債務残高(対GDP比率)は、世界でワースト1。 いまや日本は、世界における借金超大国になった。 だが、コロナ対策にかこつけて、政府与党は「しっかりとしたメリハリの利いた公正な給 付」ではなく、とりあえず「カネですむことなら」と、じゃぶじゃぶと予算を計上し、ば らまいている(不正受給が絶えない)ように感じる。 それは、10月21日に衆議院議員の任期満了、その後の衆議院議員選挙を控えているか らだ。 政治家は「今さえよければ、自分さえよければ、あとは知ったもんじゃない」と考えるの が、大方だと思う。 今の日本は、一日一日の時間勝負だと、私は感じているのだが。 だが、閣僚や官房長官からは「しっかり検討していきたい」「動向をよく見極めていると ころ」「重要な問題だと認識している」ばかり。 昨年の春から「ワクチン接種を」「国産のワクチンや治療薬の開発・製造を」という各界 からの声が上がっていたが、当時、国民向けに実施したのはマスクの配布と一人10万円 の給付。 政治や行政の対応は、その当時と今とさして変わらない。 国民の半分以上がワクチンの2回接種済みと、自画自賛している大臣もいるが、我が国の ワクチンや治療薬の治験・認可・製造・実用化はいつになるのか。3回目、4回目の接種 は当然想定内として、そのスケジュールはどうなっているのか。ワクチンの効果は大体何 か月なのか等々、明確にできるものならもっと国民に知らせるべきではないだろうか。 政策といえば、金をばらまくしか思い浮かばないのだろうか・・・。 かててくわえて、政権与党もマスコミも、今回の自民党総裁選に国民の関心を一挙に向か わせている感が、極めて大きい。 政権を掌握している多数党の自民党総裁になるということは、当然、それは次期の総理大 臣になることでもある。 だからその前段階の衆議院議員選挙に勝つための顔となり、晴れて政権を維持し、国会で 首班に指名されるべく人を選ばなくてはならない。 しかし、この総裁選は、自民党の国会議員数383票と、全国の自民党員・党友の票38 3票の得票数で決める選挙である(決選投票のケースもあるが)。 要するに、自民党の国会議員と、全国の約110万人の党員(党友)だけしか、関係しな い選挙なのだ。 党員110万人全員が投票しても、それは我が国の有権者数(約1億900万人、注・資 料により数値に微少の差がある)の約1%の割合でしかない。 これらの、ごく一握りの人によって、極めて困難な時代にある日本国のトップが決められ るということになる。 また、「自民党の国会議員383名分も、国民の間接的な意見だ」ともいえるが、 2019年の参議院議員選挙で、自民党の絶対得票率(全有権者に占める得票割合)は、 比例区で16.7%。選挙区で18.9%だった。 国民の2割弱の付託しか得られていない数値を、どう評価するかだが、私はこれも低いと 感じる(少なくても議院制民主主義の国として?) この国政選挙並み以上のマスコミの騒ぎ方、各候補(河野・岸田・高市・野田)のはしゃ ぎ方は、まさに坂道を転げ落ちていく日本社会の姿が映し出されているようだが。 国会開催はもちろんだが、ともかく目前に迫っている「危機」対応の真剣な議論を、与野 党を問わずすべての政治家に、今こそ期待したいものである。 時は刻々と過ぎていく。 「明日(あす)ありと、思う心の仇桜(あだざくら)、 夜半(やわ)に嵐の吹かぬものかは」(親鸞の言葉) それではよい週末を。 |