続・もしかしたら・・・ |
ウクライナでは、今日(2月28日)時点で、ロシア軍のウクライナ主要都市への一層の 侵攻が続いている。 米欧は、EU(欧州連合。欧州の民主的体制国27か国で構成)やNATO(北大西洋条 約機構。西欧主体の軍事機構)に未加盟のウクライナと言えども、ロシアに対して「侵攻 したら、ロシアは大きな代償を負うことになる」と警告を連発していたが、米欧とも当初 から「軍事力行使はしない」と公言し、対話による妥協を模索していた。 だが、プーチン大統領は米国(バイデン大統領)の弱腰(米国内の世論は過半数の国民が 米国の関与に反対)を見透かし、着々と軍隊の配備を進め、北京オリンピック時に中国の 習近平・国家主席と価値観を共有し、オリンピック終了と同時に、一気にウクライナ侵攻 を開始した。 プーチン大統領は、米欧などの「経済封鎖措置」も織り込み済みで、ロシアにおける大手 銀行のドル建て取引の制限や、世界の銀行取引網からのロシアの排除も、劇的な効果には 至らないと読んでいるはず。 政治・経済評論家も「効果には2年ほどかかる」と予測する緩慢な制裁であり、即効性は 薄いと。 さらにロシアは、以前から人民元建ての資産を増やしており、中国との連携や反米各国と の貿易が確保されており、小麦等の農業生産国で国民の食料に困らず、また、原油や天然 ガスの世界屈指の供給国なので、エネルギーは余るほどある。 プーチンは侵攻時に、ロシア国民に対し、「国のために、当分の間、生活の節約などを覚 悟して貰いたい」というスピーチをしていたようで、経済戦争の持久戦も覚悟しているだ ろう。 逆に経済封鎖は、供給網の寸断で世界経済は混乱し、欧米や日本等にとっては「エネルギ ーや食糧・原材料の資源不足→価格高騰→インフレ→大恐慌」を生じさせる元凶になる懸 念がある。 ロシア(プーチン)も中国も世界恐慌を見越し、これからは「資本主義・民主主義」の各 国が自然に混乱・疲弊・衰退していく様子をじっと黙視しながら、覇権拡大の機会を狙っ ていくだろうと、私は邪推してしまう。 日本にとっての喫緊の課題は、台湾、尖閣諸島の有事発生時の日米軍事同盟における、日 本と米国の役割の明確化だと思う。 すでに防衛省など国家の中枢においては、極東における有事の際の軍事シミュレーション をしているだろうが、日本は果たしてどの段階で「自衛権の発動」=交戦を行うのか。 また米国は、どこまでの軍事力行使を担ってくれるのか。 私は、いつこれらの有事が起こっても、おかしくはない時に来ていると思う。 中国から台湾にミサイルが撃ち込まれたときの初動が、極めて心配だ(尖閣諸島の中国軍 による管理・基地化も) その時、「想定外だ!」と官邸も外務省も混乱するはずはない、と信じたいが。 日本は、いつか来るであろう「今日の有事」を想定して、1946年に「平和憲法」を公 布している。 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、 武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄 する。国の交戦権は、これを認めない」(第9条) したがって私は、この憲法の精神に基づき、敵が台湾、あるいは尖閣・沖縄の日本領土周 辺で挑発行為を繰り返しても、米国との共同武力戦争は押しとどめ、総理が全国民の決意 として「日本は国際紛争の解決手段として、全ての人類にとって悲惨となる一切の武力行 使は行わない。最後まで平和的な解決に努力し、国際協調の実現を図る」と世界に宣言し 続けること。敵国にも間髪入れずに和平交渉団を派遣し(入国拒否されても)、妥協点を 見出す対話を続けまくること。 また、世界の各主要国に全国会議員からなる幾つもの使節団を一斉に派遣し、日本の「平 和外交の真意」を理解してもらう行動に出ること。日本は憲法の理想とする人類初の「武 力を一切持たずに、対話による和平を貫徹したい」と。 だが、そうした決意が「理想論」であることは、今回の「和平交渉」などは全く前提にな い、ロシア(プーチン)の有無を言わせぬウクライナ侵攻という暴挙により、「ある意味」 では証明された。 しかし私には、米国もロシアもウクライナも、もう少し妥協点を探って落としどころを決 められなかったのだろうか、という思いが今だ強く残る。 対話は「自分の要求を100%要求すること」や「相手の要求を100%受け入れること」 だけではないはずだ。 ソ連の崩壊後、威信が地に落ちた旧ソ連。 プーチン大統領は、積年の屈辱を胸に抱きながら、かっての偉大な旧ソビエト連邦の復活 =新・ソビエト帝国の再興を図る機会を狙っている。その彼が、ロシアにとって最後の大 事な地域であるクルミアとウクライナ地域の西側陣営化だけは断固阻止したいことは、 2014年のロシアによる軍事侵攻によるクルミア併合の時から、欧米各国の指導者なら 誰しもが予想していたこと。 今回の具体的な紛争原因は「ウクライナのNATO加盟の意思表示と、これを承認したら ロシアを刺激するという懸念を抱くNATOの姿勢の曖昧さ」にあった。 でも、バイデン大統領は「それは、NATO加盟を希望するウクライナ共和国と、 NATOが決めること。ロシアが主権国の意思を無視して止めることではない」と至極当 然の正論を吐いて一蹴したが・・・。この段階での妥協点は、果たして無かったのだろう か。戦争が始まれば、「妥協」で失うことより、遥かに多くの犠牲が生じることは、自明 だったはず(ウクライナの大統領は「ロシアが侵略してきたら、米国が軍事的・物理的に 助けてくれると信じていたのだが・・」と慨嘆していたが、それも甘かった)。 プーチン大統領はこうした米国の白紙回答、米軍不参戦をすでに十分予測し、北京オリン ピック終了と同時に、電撃的な急襲を断行したのだろう。 私は、プーチン大統領は「自己のプライド」を第一義的に考えて行動する権威主義者だと、 思っている。 「ウクライナを殲滅させても、それが将来のロシア、いや新ソビエト帝国再建のためにな ることなら仕方がない。米国の命令に従うことはロシア民族の消滅に等しい。それが私の 正義だ」と。 善し悪しは別として、バイデン大統領もウクライナも、何かまさに電撃的な妥協案を提示 できなかったのだろうかと、今でも悔やまれるが・・・。 ウクライナ紛争は、日本にとって「対岸の火事」とはいかない。 ロシアのウクライナ侵攻の手法をまねた中国が、東シナ海で海洋調査などとの大義名分を かざしながら、一方的に台湾や尖閣諸島を囲むように陸海空軍による大規模な軍事演習に 入ったら、日本と米国はどう出るのか。 「台湾と尖閣諸島は中国の固有の領土であるので、近日中に直接統治に入る。これを邪魔 する一切の勢力があれば、断固として排除する」などと宣言したら、いったい日米はどう 対応するのか。 まずは、第一義的に日本が果敢に前線に出撃するのか。 沖縄の嘉手納基地等から米軍が出撃したら、同時に、同盟国の日本もあらゆる臨戦態勢に 入るだろうが。 当然に、米軍基地が随所にある日本列島は、夥しいミサイルにさらされ、こうして民主主 義国対専制主義国との第3次世界大戦が勃発するのでは・・・という邪推も生じるが。 私は、わずかな可能性のある「犠牲を拡大させない理想論」を信じ、今からでも積極的か つ具体的な全方位外交を展開し続け、万一の場合は前述の無血収束に妥協して、これを人 類の歴史上のレガシーとする、という考えも幾らかはある(世界大戦が勃発したら、どち らの陣営が勝利しても世界は悲惨なカオス状態に陥るだろうから) だが私の理想論などは、いつ死んでもおかしくはない、75歳まで充分(?)に生きてき た人間の「身勝手」な考え方だろう。 これから長い人生がある筈の若い人たちにとっては、断じて容認できない選択肢かもしれ ない。 私は若い頃、現行憲法の第9条に対し「こんなこと言ってても、実際に敵国が攻撃してき たらどうするんだ」と疑問がつのっていた。 その頃の文部省編「あたらしい憲法のはなし」という子供向けの本では、こう説明されて いた。 「憲法第9条は、よその国と争いごとが起こった時、けっして戦争によって、相手を負か して、自分の言い分を通そうとしないということを決めたのです。 おだやかに相談をして、決まりをつけようというのです。 なぜならば、戦さをしかけることは結局、自分の国を滅ぼすような羽目になるからです。 (略) そうしてよその国と仲よくして、世界中の国がよい友だちになってくれるようにすれば、 日本の国は栄えてゆけるのです。・・・」 だが、今までもそうした努力は「理想論」として軽視され、「現実論」ありきで日本は米 国の核の傘に入り、集団的自衛権を維持し、さらに自衛力=戦力の拡大に励んできた。 そして、憲法の理想に近づく不断の努力よりも、現行憲法を、帝国主義的な米国や中国や ロシアのように、パワー・ポリテイックス(軍事力を背景として国益を追求する政策)を 理念とするように「改憲」することこそが「現実論」とする思潮が、今日では主流となっ てきた。 この国民の思潮は、これからどんどん奔流となっていくのだろうか。 今、出来ること。 国会は挙党一致で「日本は、いかなる国のいかなる理由によるいかなる戦争に対しても、 これに断固として反対する」などといった、国内外に向けてのアピールを、いかなる方法 をもってしても緊急に広げること。 国は緊急に、難民・被災者支援のための1000億円規模の補正予算を組み、被災地域や 難民受け入れ国に援助を行うこと。 そんなことを考えていた、春近い今日この頃なのです。 今週は「いま考えていることを、いま伝えたい」と思い、早めの週末エッセイとしました。 それでは良い週末を、良い3月を。 |