旅の途中で(1) |
先週は、関西に旅行に行ってきた。 目的の一つは、大阪と京都でそれぞれ私と同年の旧友に会い、ランチをしながら懐旧の情 を交換すること。 もう一つの目的は、私が昭和41年に卒業した、母校・天理高校の所在地である天理市の 訪問。そこには、天理教の聖地として木造の大神殿が古くから建立されている。 その東西南北の礼拝場が一体となった3157畳という広大な畳敷きの神殿に正座し、人 間創造の元なる地点の証拠として、神殿の中心に置かれた「かんろうだい」という拝礼の 目標となる主柱に向かい、畳にぬかずいて心静かに「無限の宇宙の偉大なもの=サムシン グ・グレート=神」に拝礼する。感謝する。そして束の間の無念無想の心境に浸る。 それが今回の旅の、主たる目的だった。 天理を訪れるのは、久しぶりだった。 前回の訪問は、2019年1月14日。 高校時代の恩師の葬儀が執り行われた時だ。 その葬儀のちょうど4か月前は、その恩師の「米寿を祝うクラス会」を、12名の男女の 級友が集って開催したばかりだった。 私は東京を早朝に発ち、天理の大きな斎場で行われた葬儀に参列した。そして、亡き御霊 (みたま)の前に玉串を奉献し、これまで我々に与えてくださった恩師の深いご慈愛に対 し、心から感謝を申し上げ、冥福を祈った。 あれから3年余月の歳月が流れている。 その間に、日本も世界も驚くほど激変した。 新型コロナのパンデミックや、ロシアのウクライナ侵攻。 これらは、今だ収束に至っていない。 それどころかさらに、ロシアの我が国の北方領土への侵攻や、中国の台湾侵攻・尖閣諸島 の占領など、日本の安全保障における戦後最大の危機が勃発しかねない国際情勢になって いる。 いよいよ日本も、米国と共に戦争当事者にならざるを得ない状況に突入してきた。今回の バイデン大統領と岸田首相の首脳会談で、日米軍事同盟の一層の強化を図ることが、世界 に向けて宣言された。 一方、「30年以内にマグニチュード9クラスの巨大地震が起こる確率は、70%」と政 府は10年前から予測してきたが、これもいつ発生してもおかしくはない時機に来ている。 また「30年間続く我が国の経済不況と格差拡大」が続く中、ここにきて、ロシアのウク ライナ侵攻(侵略)とロシアの経済封鎖の影響により、石油やガス等のエネルギー、非鉄 金属、小麦・トウモロコシ等の食糧・原材料価格が、高騰してきている。 さらに円安の進行が重なり、日本は深刻な経済恐慌(不景気における物価上昇)に陥る懸 念が高まってきている。 一方、日本は気候変動による自然災害や地震の発生が常態化し、四季の区別も薄くなって きた。季節の輪廻もゆがんできた。 また、インフラ(道路・鉄道・港湾・ダム・学校・病院等の公共施設)の経年劣化による 崩壊・滑落・脱線事故など、信じられないような事故が多発している。 日本のみならず世界中が金儲けに狂奔し「利益至上主義」を貫き通してきたが、もはや資 本主義経済も行き着くとこまで来てしまったのだろうか。「脱炭素で地球温暖化を阻止し よう」と掛け声だけは上げたが、今回のロシアのウクライナ侵攻の影響で、多くの国がエ ネルギー不足に。それで、自然エネルギーの増産どころか、また石炭の復活。これで地球 環境の崩壊までのカウントダウンが、さらに早まってしまった。 だが、世界一の借金大国・日本は、政治家も企業家も「とりあえず、自分の任期中の今さ えよければ」の先送り方策に明け暮れ、インフラの点検・改築・補修を怠り、事あるごと に目先の補助金・給付金といった、国民の人気取り政策であるカネのバラマキや、イノべ ーションを怠った保身経営(おやじ経営)を続けてきた。 結果、国の基本政策の一つだった「日本列島の強靭化」どころか、いまやあちこちで劣化 が進み「日本列島沈没」さえ絵空事ではなくなってきた。 政治も経済も教育も社会も劣化した。 だが、どの分野でも、新時代を切り開く新たな人材の出現は期待できない。 各分野の指導者・中堅層は、相変わらずの「忖度」「横並び」「内向き」「現状維持」の 姿勢に映る。 そして日本文化は国のトップから国民の下々まで、歴史的に培われた「英語圏へのコンプ レックス、追随」に加え、外国資本とインバウンド収入が唯一の頼りとばかりの「おもて なし」で、欧米や中国に平身低頭。外国(人)資本による日本の土地やマンションや老舗 店の買い占め・爆買いにも「日本では誰も買ってくれない。だから外国人は大事なお客様」 とばかりに、日本が売られていく(先日、目黒雅叙園に行ったが、今までの雰囲気がガラ ッと変わり、館内の一部はケバケバしいというか、野暮ったい色彩・装飾になっていた。 さりげなく店内の日本人従業員に尋ねたら、やはり中国資本に買収されて、改装されてい るとのこと。もはや日本人向けの文化施設ではなく、中華文化の色合いを強め、いずれ中 国人客を主流とした営業をする方針なのだろうが) 企業や店舗の名前も、品物や雑誌の名前も、殆どが意味不明の英字かカタカナでの造語。 日本人歌手やタレントの名前も曲名も、意味不明のカタカナ。 国際化が加速する中「そのほうがカッコイイ。日本語じゃダサイ。外国人に受けない」と ばかりに。 テレビでも、よくわからない英語の歌を、がなり立てて歌っている若いグループを、多く 見かける。 だが、視聴者も歌い手たちも、歌詞の意味を分かっているのだろうか。私生活でも外国人 と遜色なく英語で会話しているのだろうか? 国民の感性も劣化した。 他方、書籍や新聞を読む者が減少を続け、あちこちの書店が廃業し、新聞の販売部数は年 年減少し続けている。 早晩、書籍や雑誌や新聞の多くは廃刊となり、ネットでの配信事業を優先していくことだ ろう。 国民の多くは、ニュースも書籍も、全ての情報をスマホで見る(パソコンやスマホでしか 見られない)という文化になってきた。 今後は一段と、国の愚民化政策が進み、スマホと各種カードに依拠して生きて行く国民が 激増していくのだろう。 そして日本の無形文化、文化遺産は徐々に消滅していくのだろう。 コロナ禍(3密回避、マスク着用、集まり自粛等)とテレワークの普及で、人と人とのコ ミュニケ―ションや直接交流は衰退。 これから一層、人間関係の分断が進むだろう。 横の関係は家族単位がせいぜいで、連帯や団結や共助や協同や思いやりなどの言葉は、死 語になっていくかもしれない。 マイナンバーで国に一括管理された国民一人一人は、国の情報・管理網の中で個々に孤立 しながら生きて行くのかもしれない。 この3年間で、日本社会は激変した。 これから先はどうなるのだろうか・・・。 そんなことを新幹線の行きの車中で考えていました。 そもそも、こうして旅に出る気持ちになったのは、前にも述べたように「自分の命は今日 しかないという気持ちで、今この瞬間を大切に生きなければならない」という、親鸞の言 葉に触発されたからです。 この続きは次回にでも。 それでは良い週末を。 |