夏至の日から |
6月21日(火)は、夏至だった。 「夏の盛りに至る」日で、1年中で昼の時間が最も長い頃。 しかし、今週は曇り空が多く、昼の長さの恩寵は感じられない。 蒸し暑い日が続く中、今だ国民の圧倒的多数は「マスク着用派」とのことで、外出時には 街頭でも、駅中でも車中でも、喫茶店やレストランでも、マスクをしていない人は殆どい ない。 新型コロナの感染も「収束」したわけではないので、マスクを外す気分にはなれないのと 同時に、周囲からの同調圧力もなくはないのだろう。 兎も角、社会の雰囲気は相変わらず重く、生理的にも息苦しい。 そんな中、昨日の22日(水)に参議院議員選挙が公示され、来月10日(日)に投開票 が行われる。 新聞各紙は「物価高・安保・憲法で論戦!」とか、最大公約数を見出しに載せているが、 今回ほど争点が乱立する選挙は、今だかってなかった気がする。 従来は「郵政民営化。消費税引上げ。安全保障対策(憲法第9条の改正)。経済対策」な ど、いずれかの是非を問う選挙が多かった。 しかし、今回は各党の政治公約も多種多彩に乱立。 野党政党も候補者の一本化が出来ずに、乱立。 「日本の外交・防衛政策の強化」一つとっても、具体的内容は多種にわたる。 それを与党は「防衛力の一層の強化を図るため、憲法を改正する。軍備費を欧米並みに GDPの2%まで増額する」と連呼しているが、その論拠の説明をはしょり、短絡的に憲 法改正、欧米並みにというだけでは、わからない。 「憲法で、自衛隊を日本国民の国軍として位置づける。核兵器は廃絶すべきだが、その抑 止力は厳然としてある。だからアメリカの核の傘に守られてきているが、これからはアメ リカの核を共有し、日本も有事の際に使用できるよう検討を進める、敵の侵攻を打ち負か す陸海空軍の最新兵器と情報戦争に勝てる人と武器の緊急整備を図るため、軍事予算をこ れだけ増額する」とか、もっと説明が欲しい。 一方、野党は「憲法改悪反対」と叫ぶが、それでは平和憲法の趣旨にのっとり、どの様な 外交・防衛策をとればよいのか。もっと具体策を明確に説明すべきだろう。「戦争反対。 平和外交・話し合いによる解決」だけでは、説得力に欠ける。 与党も野党も「情緒的」に国民・有権者に聞こえの良い公約を訴え、相変わらずの「消費 税減税」「全国民へ給付金を支給」とか「○○費の無償化」「NHK受信料の減額」「物 価対策で○○に交付金」など、ともかく国家予算をじゃぶじゃぶ使う公約が目につく。 国民・有権者受けのする公約優先で、有権者の半数が棄権する選挙を繰り返していたら、 日本の議会制民主主義は衰退し、政治に無関心な国民も増え、国の財政も破綻するだろう。 それもこの1~2年の間に。 私はそう直感する。 今も続くロシアのウクライナ侵略。 これをストップさせるための日本の役割。 中国が台湾及び尖閣諸島に侵攻した場合の(米国と連携した)日本の軍事力行使の範囲や、 ロシアの北方4島侵攻の場合の日本の防衛策など、地政学的な緊急非常事態における防衛 政策一つとっても、もっと選挙において各党は議論を戦わせ、マスコミは公平に広く報道 すべきだろう。 我が国の政治的課題は山積している。 円安、食料・エネルギー・原材料不足等からくる急激な物価高。 30年間(1990年~2020年)にわたる平均賃金の低迷、家計のひっ迫。 経済の悪化。利上げも出来ない打つ手のない金融政策及び国の財政悪化。コロナ禍等の影 響による倒産企業の増加。 進行する超少子高齢化社会・人口減による国力の衰退。高齢者医療・福祉・介護サービス 及び健康保険・年金保険制度の持続不安。 社会的インフラ(道路、鉄道、上下水道、港湾、橋、トンネル等)の老朽化。気候変動に よる大規模災害の多発。いつ発生してもおかしくはない大地震や大噴火。これらに対する 防災対策。 そしてバブル崩壊後から今日まで続く、様々な分野におけるイノベーション(新たなアイ デア・技術・価値の創造、人や組織や社会の変革)の立ち遅れ。 ちょっと思い浮かべても、以上のような我が国の喫緊の最重要課題が浮かんでくる。 まさに現在の日本は「未曽有の国難」の時代を迎えている。 一歩間違えれば、連鎖的に国の機能は麻痺し、法秩序は機能せず、社会は大混乱し、他国 の侵攻を容易に許し、やがて国は消滅・占領されていくだろう。 これらの課題に真っ向から対処していくのが国会議員の役割。 その役割を担う人材を選ぶのが国政選挙。 この議会制民主主義が機能してこそ、国民主権主義である自由と民主の国家と言えるが、 それが形骸化しているようでは、中国やロシアのような専制(一党独裁)主義国家のほう が優れている、とも言われかねない。 民主主義と専制主義の戦いは、世界だけではなく、日本国内でも行われているのだ。 今、日本は戦後最大の危機に直面している。 今回の参議院議員選挙を、立候補者も有権者も安易に考えず「日本の最後にして最大の選 択の機会」と捉えて臨むべきだろう。 「そのうちに」は絶対にないと、私は思う。 今回の選挙で選ばれた議員は、党派を問わずに「命を賭して」しゃにむに国士として国政 に全力を傾注すべきだ。 間違っても有権者は、「今だけ、カネだけ、自分だけ良かったらという国会議員が増えて いる」(注・文藝春秋7月号「二階俊博と輿石東の対談」)現状で、「就職活動の一つと して立候補する人」(注・輿石氏の発言)などを選んだら駄目だ。 「自らを犠牲にする気持ちがなければ、政治家を目指してはいけない」(注・二階氏の発 言)と、私も思う。 その評価は7月10日の選挙結果(投票率・党派別獲得議席数)で出る。今回の選挙結果 は、泣いても笑っても今後の日本の行く末を決定づけるだろう。 夏至の日から、そんなこんなの蒸し暑い考えが頭に浮かぶ日々なのです。 それでは良い週末を。 |