ようこそ花粉症 (2003年2月14日に掲載したエッセイです) |
「貴方の一回のくしゃみは良い噂をされているから、二回は悪い噂を、そして三回だった らそれは風邪。」 そんな例えも今は昔。 とめどもないくしゃみの連発となると、噂や風邪をも席巻する紛(まが)うことない花粉 症。 今年も、春の夜の盛りのついた猫の鳴き声のように、悩ましくて煩わしい花粉症の季節が やってきたようです。 先週の土曜日、比較的暖かな陽気に誘われて街を散歩しましたが、その夜、布団にもぐり こんで本を読んでいたら、急に鼻がむずむずして、くしゃみが。 例年、私の場合、花粉症の症状が出始めるのが2月下旬から3月上旬にかけて。 今年もそんなものだろうと高をくくっていたら、パールハーバー、湾岸戦争顔負けの奇襲 攻撃、いきなり十数回のくしゃみの波状攻撃を受けてしまいました。 激しいくしゃみで動悸なりやまず、身体は疲労困憊。横臥してはいられず思わず布団の上 に正座し、朦朧とする頭を垂れて白旗を立てていると、今度は洗濯バサミで鼻をつままれ たような頑固な鼻詰まり攻撃が。 鼻は完全にふさがれ、口でしか息が出来なくなったので、やむなく私が保有している最後 にして最大の武器、点鼻薬で対抗。 点鼻薬は一時的な症状緩和の効果があっても、その連用はかえって症状を悪化(鼻粘膜の 二次充血)させ、薬の効果も逓減していくと注意書きに書いてあるので極力避けてはいる のですが、背に腹はかえられません。 何とか鼻が通ってきたので、これでようやく解放されたとばかりに、眠った子を起こさな いように恐る恐る身体を横にしたのでした。 初めて花粉症の発作に見舞われたのが昭和57年の3月。 あれから20年が経過しています。 症状は毎年似たり寄ったりですので、この20年間で治療法、治療薬の進歩があったのか どうか疑わしい限りです。 国の方でも花粉症対策に関する調査研究・治療法の開発を行っているでしょうし、インタ ーネットで花粉症対策を検索すると、公益法人や医療機関、健康食品会社などからの情報 提供が満載されていますが、どれも隔靴掻痒、帯に短しタスキに長し。これといった治療 法が見えてきません。 参考までに私の今までの治療法というか、予防と症状緩和法をしるしてみますと。 そもそも医療機関での診断の結果はアレルギー性鼻炎で、原因となる抗原(アレルゲン) は杉花粉。 昭和57年の発作時と前後して、鼻詰まりの症状から他の医療機関で受診した際は、確か 循環不全性鼻炎などと言われた記憶もあります。要するに鼻腔周辺の毛細血管の血流が、 温度の変化(室内外の急激な温度差)等でとどこおり、鼻粘膜がうっ血して鼻腔が塞がれ やすい体質だというのです。 いずれにしろ、症状はくしゃみ、鼻水、鼻詰まりの典型的な花粉症のそれですが、特に鼻 詰まりが激しいのです。 このため、過去数回、麻酔をかけた後に酢酸を鼻粘膜に塗布する治療や、レーザーで鼻粘 膜を焼灼する手術(30分ほどで終了する外来日帰り手術ですが、手術室に入り、無影灯 の下の手術台に横になって行うので、いささか緊張します)を試みてきましたが、鼻の通 りが良くなったと実感できる程の効果は得られませんでした。 抗原(アレルゲン)エキスを注射してアレルギーが起こりにくい体質に変えていく減感作 療法もありますが、週1,2回の通院を数ヶ月行うようで、費用と手間ヒマに対する効果 を考えると二の足を踏んでしまいます。 最も一般的な症状緩和法は内服薬の服用ですが、私は去年はバイナスとアゼプチンを2月 初めから服用。これも殆ど効果なし。そこで今年はクラルチンという薬に変更し、1月下 旬から粛々と飲んでいます。また、葛根湯をベースとした漢方薬を適宜服用。それ以外の 防御策としては、原因となる花粉の体内侵入を防ぐのが第一ですので、外出時のマスク使 用と、手洗い・うがいの励行。そして鼻洗浄器(チューブを鼻孔に挿入しゴムポンプを手 動して塩を溶かした温水で鼻粘膜を洗浄するも の)を時々使用しています。 さらに、花粉症に強くなる体質への改善策の一つとして、去年の3月から、ヨーグルトを 毎朝200グラムほど摂っています。ヨーグルトは、腸の粘膜を修復し、アレルギー反応 の要因となる異型たんぱく質の過剰侵入を防ぐ効果があるとのこと。 そしてさらに、この1月からは花粉症の症状を緩和させると言われている甜(てん)茶の 飲用を開始。職場に出勤するとすぐにテイーバックを取り出しては朝の一服として、花祭 りの甘茶のような味を楽しんでいます。 ことほど左様に花粉症対策を抜かりなく行っているつもりですが、今のところ小泉内閣の デフレ対策と同様に、全く効果が見えてきません。打つ手なし。 先述したように、最後にして最大の武器は点鼻薬。 ところが一昨年、この命綱である、以前から常用している「パブロン点鼻薬」が成分を変 えてしまい、新商品として販売し始めたことがありました。しかしこの新商品が全く効か ないのです。成分表をよく見るとナフアゾリンという成分が入っていないのです。私はあ る大手薬店の店長にそのことを伝え、旧商品の販売をユーザーとして強く要請しました。 すると、店長は「貴重なご意見、ありがとうございます。早速メーカーの方に伝えてみま す。」と返答し、既に販売中止になっていた旧商品を倉庫から2本取り出してきて、私に サービスしてくれました。 その後数ヶ月たって、再び旧商品がどこの薬店の棚にも並ぶようになりました。私と同様 の意見が全国から製薬会社に寄せられたのでしょうか、不思議な展開に驚いた記憶があり ます。 先週末の激しいくしゃみの発作以降、今週は花粉症の発作はありません。 敵は鳴りをひそめているもようです。 どうも、攻撃は最大の防御とばかりに敵(花粉症)をたたくだけが、能ではないようです。 酒を控えてよく眠り、ストレスをためないように無理をせず、規則正しい健やかな毎日を 送っている時は、比較的に症状が緩やかなようです。 これが20年にわたる花粉症との戦いから得られた教訓。 日本国民の10~15パーセントが花粉症患者との推定もあります。 多くのご同輩・戦友にエールを送りながらも、何とか奇襲・波状攻撃を受けないで、平和 裏に花粉症と折り合いがつく日が来ないものかと、今も赤シソ抽出成分のドリンク剤「花 粉ノックアウト」をラッパ飲みしながら願っているのです。 皆さんもご自愛の程。 それでは良い週末を。 |