東井朝仁 随想録
「良い週末を」

物思い種(2)
今回の思い種(おもいぐさ・物思いのもと)は、「ん・ン」。
「ん?!何だそれは?」と思った人が多いでしょうが、「医薬品の名前には、なぜか末尾
に『ン』のつくものが多い」ということ。

今日の天気は昨日の長雨から一転、快晴の真夏日。
そこで行きつけの三軒茶屋の喫茶店「セブン」(注・1964年東京オリンピックの前年
に開店)に出かけ、オムライスと珈琲を摂りながら、私が日常で使用してきた医薬品(医
薬部外品等を含む)の中から「ン」がつく医薬品名を思いつくままにメモしてみました。
これらの薬などは、実際に私の判断で私が購入して使用したものがほとんどなのだが、そ
の選択に偏りがあったはずはないのに「ン」が多いような気がする。

注・私が子供の頃は、家庭の常備薬などは擦り傷などに対する赤チンなどの外用薬程度し
かなかった。
風邪などは足元に湯タンポを入れた寝床に潜り込み、ミカンの干し皮を煎じた湯を飲み、
高熱で汗をかくのを待ち、梅干しとおかゆを食べて自然治癒を待つのだが、学校や職場を
3日間休んでいれば必ず治った。現在は風邪を引くと、多くの人は高熱・痛みを緩和させ、
一日でも早く学校や職場に復帰しようと様々な薬を飲んだりクリニックに駆け込むだろう
が、高熱の時に水タオルを額にのせ、水分をとりながらじっと寝て治すほうが、結局病気
が長引かず、予後もすっきりしていたのが、私の実感だが。乳幼児や高齢者や病弱者や、
一日たりとも休めない人は、そうはいかないだろうが。

まず、風邪の初期症状(咳・くしゃみ・鼻水)がある時は、寒気予防にホカロンを背中に
貼り、うがい鎮痛薬のイソジンで喉を消毒し、龍角散(りゅうかくさん)」を飲み、仁丹
(ジンタン)かオムロンの体温計で体温を測定。
微熱やのどの痛みを呈してきたら、パブロンを。
さらに高熱と頭痛・悪寒が顕著になって辛い時は、バファリンを飲んで いた。
この頭痛・咽喉痛・関節痛などの鎮痛・解熱薬のバファリンは、私のお守りとして常に
常備していた。高校時代(~18歳)までは、知らなかったし飲まなかった。前述のように
風邪は寝て治した。だから寄宿舎生活で風邪を引いたときも、下着を二枚重ね着し、一人
で煎餅布団に潜り込んでフーフー言いながら、お湯だけ飲んで休んでいた。学校を休んだ
日の真夜中か翌日の夕方ごろに、必ず悪夢を見て目を覚ました。体温計だけは持っていた
ので計測すると、39度~40度の熱で、下着は汗でびしょびしょに濡れていた。それで
も下着をはきかえ、水を飲んで再び布団に潜り込むと、何となく身体全体が軽くなったよ
うで「山を越えた」と直感し、再び眠りに入り、起きた時は平熱に戻っていた。
だが、こうした我慢治療も、当時だから平気だったのだろう。
就職して社会人になってからは、高熱・頭痛が正直苦痛になっていた。
その頃に、TVのCMで知ったのが「胃にやさしいバファリン」だった。
水が一杯入ったコップに錠剤を落とすと、微細な気泡を上げながら溶け落ちていくCMだ
った。
これは効いた(今は効き目が薄くなったが、緩和はされる)
話が宣伝ぽくなったが、この薬は1963年に発売された。東京オリンピックの前年。ラ
イオン(株)が米国の製薬会社から輸入販売を開始し、日本のテレビ普及に乗って、市場を
席巻したようだ。
だが、1986年に、第一三共(株)が同様の効能がある鎮痛解熱剤のロキソニンを発売し、
この薬も日本ではだいぶ広まっているようだ。

私がロキソニンという名前を知ったのは、2004年の冬。
私はその時期、三重県の厚生連(厚生農業協同組合連合会)に転職し、傘下7病院を管轄
する本部の常務理事の役務についていた。赴任して初めて迎えた冬季だったが、インフル
エンザが流行っていた。その頃、ある病院の事務長と話したのだが、「常務、インフルエ
ンザに罹っても大丈夫ですよ」という。
「どうして?」
「先週インフルエンザに罹って40度の熱が出たんですが、薬を飲んだら一遍に治りまし
た」
「本当にインフルだったの?」
「検査したら陽性反応で、主治医がインフルエンザですと言って、薬を出してくれまして
ね」
「何の薬ですか?そんな薬があるの?」
「ありますよ。ロキソニンですよ。」
「ほうっ・・それは知らなかった」
この薬が発売されたのは、1986年。私が薬名を知ったのはそれから18年たっている。
だが、私はその間、インフルエンザに罹っていなかったし、そもそも解熱にはバッファリ
ンを服用していたので、縁が無かったのだろう。
そういえば当時、私の周囲の者でも解熱だけではなく、ゴルフ前に腰痛や膝関節痛を抱え
ている人も、ゴルフ前にこの薬を飲んでプレイしていた人が何人かいた。
解熱鎮痛剤の話のついでに。
あの新型コロナが流行し始めた頃、解熱鎮痛剤として医療機関向けのカロナールに多くの
人が殺到した。高熱・頭痛・吐き気・倦怠感に陥るので、予防・治療薬として町のクリニ
ックにはこれを求める患者が急増し(注・この薬は医療機関の主治医の処方で出せる)、
ドラッグストアには同様の効能を持つ薬を得ようとする客で溢れた。私が遅ればせながら
ドラッグストアに行くと、特別コーナーに何種類もあった同種の薬はことごとく売り切れ、
仕方が無く残っていたタイレノールという鎮痛解熱剤を買い求めた。普段は主として頭痛
・生理痛向けのようだったが、効能書きの最後に悪寒・発熱時の解熱と記してあったが。
結局、私は内科かかりつけ医のクリニックに行き、初期予防の目的でカロナールを出して
貰ったので、タイノレールは一度も服用せず。
代わりに、先月、ゴルフの打ちっぱなしの練習場でクラブの大振りを繰り返した日の夜、
右腕が上がらなくなり、肩に激痛が走った。
バンデリンを塗りたくったが、全く効果なし。
すると家内が「カロナールを飲んだら。テニスで肩が痛い人がカロナールを飲んだら、す
ぐに痛みが取れて、プレイを続けたのよ」というので、飲んでみた。
カロナールはバファリンよりやや弱めで、胃を荒らさないという定評。
これは良かった。ほどなくして肩が上がり、痛みが引いたのには驚いた。

「ン」の薬品名の続き。
先の話とかぶるが、頭痛にノーシン。
食べ過ぎ飲み過ぎによる胃もたれ・腹痛には太田胃散(オオタイサン)、キャベジン、サ
クロン。下痢には正露丸(セイロガン)、ビオフェルミン。
虫刺され・かゆみには液体塗り薬の金冠(キンカン)。肩こり・筋肉痛には塗リ薬のバン
デリン、張り薬のトクホン。肌荒れには軟膏のオロナイン。
栄養補給にはビタミン(特にCのアスコルビン酸)、肉体疲労にはアリナミン、リポビタ
ン。
ついでに育毛・養毛にはパンテーン、カロヤン(残念ながら効果なかった)。

私が現在用いている薬は、健診の結果、基準値よりやや低値だったので、「甲状腺機能低
下症」ということで、チラージンを朝に1錠(注・すでに基準値に回復しているが、もう
少し服用を続けて経過観察)
それと、遊離テストステロン(男性ホルモン)の数値が、基準値(70歳以上)が4.6
~16.9に対し、去年の秋は15.0だったのが先月は10.0だったので、遊離テスト
ステロンの筋肉注射を、近くの内分泌科クリニックで、月1程度で打っている(保険適用、
一割負担で受診料を入れて1000円以下)。

高齢者になると他のホルモンと同様に男性ホルモン(テストステロン)が減少し、気分が
沈む、気難しくなる、イライラ、頭重、短気、不眠、倦怠感、気力の衰え、性欲の低下等
等をきたしてくる。
「年だから仕方がない」で済ませていたら、勿体ない。
どうも特定健診をみて分かるように、高齢者に必要なのは、血圧や血糖値やコレステロー
ル値や肝機能、腎機能検査もさることながら、甲状腺ホルモン、副腎ホルモン、男性ホル
モン(テストステロン)値の検査ではないかと、私は感じているのです。
心身の健全な働きは、すべからく心、自律神経が根源ではあろう。ストレス等で自律神経
が失調になって、心身共に不調な方が昨今は多い。だが、その自律神経に影響を与えるホ
ルモンの重要性が、意外に浸透していないのではなかろうか。中年以上の男性も女性も、
もっと意識した方が良いと思うのだが。
具体的には、薬に頼る前に、もっとホルモン検査を受け、自分のホルモン機能の現状を知
り、運動(特に筋トレ)や食事や瞑想等々の日常生活での工夫と、早めにホルモン補充療
法で各ホルモンの分泌量を正常に戻したほうが肝要だと、私は確信しているのですが。

私の身近な範囲で「ン」の薬品名などを述べてきました。
最後の「ン」は、ホルモン・テストステロンで締めます。

それでは良い週末を。