東井朝仁 随想録
「良い週末を」

趣味と健康(1)
超高齢社会の現代、生活習慣病(ガン・脳卒中・心臓病・高血圧症・糖尿病等)を筆頭に、
肩・腰・ひざ痛、腎臓病、前立腺疾患、耳鼻咽喉疾患、緑内障・白内障、精神疾患、認知
症などの「予防と治療に関する健康情報」が巷に溢れている。

だが、疑問に思うことも多々ある。たとえば。
「水は飲むほど健康体になる。一日最低2リットルを」という健康情報がマスコミから流
れ、粘液的な血液がサラサラになると話題になったが、熱中症対策としてなら兎も角、そ
れでも一年中毎日となると、心臓や腎臓に負担がかかり過ぎてヤバいのではないかと思っ
て、私はやらないが(実際はどうなのか?)
あるいは「コーヒーをブラックで1日5杯以上10杯ぐらいまで飲むと、肝臓がん・食道
がんなどのリスクが大幅に低くなる」という学説が先週の週刊誌で紹介されていたが、私
が壮年期に読んだ名著「心臓病で死なない本」(医学博士・石川恭三著・主婦と生活社)
では「カフェインが大量に含まれているコーヒー、紅茶、緑茶などは、一日に1~2杯な
ら特に問題はないが、一日に5杯以上飲む人にとっては、悪魔の水と考えていいだろう」
と延べていた。
がん予防にはなるかもしれないが、動悸・頻脈・不整脈・冠動脈疾患が出現するようでは、
かなわない。
現在は、豊富な健康情報がスマホなどからも簡単に得られるが、その真偽・利害得失を、
複数の情報から比較検討しないと、危険だろう。
やはり物事はプラスとマイナスの両面からバランスを考え、一つのことばかりに集中する
のはリスクが高くなるだろう。

話は私の卑近な例に。
私は、6年前に何度目かの腰痛発作を起こした。スポーツからではなく、朝の寝起きに変
に腰を曲げて立ち上がった瞬間、ポキッという関節音を感じた。
長年の経験から「しまった!」と思った時には既に鈍い痛みが下半身に走っていた。幸い
直立の姿勢で緩やかな歩行が出来たので、タクシーを呼び、近くの整形外科病院に行った。
レントゲン、CT検査の結果、今までにかかった「第四・第五腰椎椎間板ヘルニア」から
「脊柱管狭窄症」という疾病名になった。
高齢者の過半は画像診断すると「脊柱管狭窄」と言われ、痛みが出たら「症」がつくとの
こと。私が「治りますか?」とたずねると、「鎮痛剤を出しますが、画像からみて治療方
法は手術が一番いいでしょう」と院長から言われた。
私は「やはり、整形外科の院長ならそう言うだろう」と予想していたので、「はあ・・」
と答えたただけで、腰の痛みをカバーしながらゆっくり歩いて帰った。そして、以前から
貯め置いた健康雑誌の中の「脊柱管狭窄症を自分で治す」という健康雑誌を取り出し、す
ぐにリハビリを開始した(極めて簡単なメソッド)。
すると数日で痛みは消え「間欠的ハ行」から徐々に長時間の歩行も苦にならなくなり、そ
の後もリハビリを歯磨きの習慣のように毎日実践して、今日に至っている。
脊柱管狭窄症の人は、この健康雑誌が発行された平成28年当時では、推定240万人と
のこと。パソコンの普及等で姿勢が悪く筋力が衰える人が増え、患者も急増しているとの
こと(人口の高齢化もあるだろう)
そして、手術を受けた人も多いが予後が悪い人も多いと聞く。
私の場合は、あの健康雑誌の情報が極めて有効だった。有難かった。

現在、私は腰痛のリハビリ体操以外に、ほぼ毎日、一万歩以上のウオーキングを楽しんで
いる。これは腰痛予防のためではなく、趣味として励行しているのだ。家からのアクセス
が良い田園都市線沿いの色々な街まで早足で行く。そして街中をそぞろ歩き、必ず喫茶店
に入って憩った後、また方々を歩き回って帰る。渋谷や池尻大橋、桜新町などの結構遠く
の地点まで歩いている。
帰りを急ぐ場合や疲れた場合は、田園都市線の電車に乗って帰る。
このために毎月の定期券(桜新町―渋谷間。私の家は駒澤大学と三軒茶屋の中間)を購入
して使用している。
最近は定期券で渋谷駅に出て、そこから青山通りをウオーキングして表参道、青山1丁目
方面に行くことが多くなった。
だから今年は、青山1丁目―二子玉川間の定期券に買い換え、エリアを広げようと考えて
いる。
ウオーキングを継続し始めてから、歩行力が随分と上がってきた。
それはまさに心臓・肺臓の心肺機能の強化につながっているだろう。
だが、ウォーキングが健康維持のためのミッションと思っていたら、続かない。

私は、後期高齢者(75歳以上)を迎えた頃から、急激に「滑舌(かつぜつ)の衰え」を
痛感していた。
ちょうど、コロナ禍も明けて人々が自由に往来し、集い、密になって会話を楽しみ始めた
頃だった。色々な人とマスクを外して会話をする機会が増えたのだが、会話を始めると
「あれ?」と驚くほど声量が乏しく、声が通らない。声が掠れる。そこで一生懸命に唾液
を「ごくん」と呑み込んで喉を湿らせ、口を閉じた状態で「ンッ、ンッ」と咳ばらいをし
て喉の通りをよくしてから、話始めることが多くなった。テーブルに水か珈琲かビールが
ある時は、それらをチョクチョク口に含んで話していると、ようやく喉の通りが滑らかに
なり、本来の口調に戻るのだった。
滑舌とは「よどみなく話す舌=滑らかな話しぶり」のことで、あるいはアナウンサー等の
発音の練習などを意味するが、アンチ・エイジングの対策として、私のように話し好きの
人間には「滑舌」は極めて重要だと確信している。
だが、早口言葉を練習するとか、喉に良い食べ物や喉の加湿を怠らないとかは、やらない。
楽しくなくてはやりたくない。
ただし、趣味を兼ねるなら大歓迎なのです。
そのあたりは次回にでも。

それでは良い週末を。