危機の時季(2)
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6月21日、米国はイランの主要核施設3か所を空爆した。 イスラエルとイラン(特にイスラエルのイラン空爆)の戦争に、国連決議もないまま、米 国がいきなりイラン本土を空爆して参戦したのだ。 国際原子力機関(IAEA)が「核兵器開発の証拠がない」としているにもかかわらず 「テロ支援国家・イランの核脅威排除」を大義名分とした、核保有国(と確実視されてい る)イスラエルに同調しての空爆だった。 イランが核保有に踏み切ったと客観的に言える証拠はなく、仮にイランの将来的な核保有 を阻止したかったのだとしても、「予防攻撃は国際法では認められていない」(小谷・明 海大学教授) また、米国では憲法上、宣戦布告の権限は連邦議会に与えられており、他国を攻撃する場 合は原則的に連邦議会の承認が必要だが、それをしておらないイラン本土の空襲は国内法 を逸脱している。 まさに民主主義国家・米国が、今やトランプ独裁専制国家に変貌したことを思い知らされ た。 空爆の内容は、イランのフォルドゥ地域の地下にあるウラン濃縮施設を破壊するため、イ スラエルがトランプ大統領に懇願していた、世界初の「バンカーバスター」という地下 60メートルまで到達する巨大な地中貫通爆弾を、B2ステルス爆撃機で14発投下した こと。 イスファン地域などの核施設に対しては、潜水艦から巡航ミサイル「トマホーク」を20 発以上発射したこと。 空爆後、トランプ大統領は米国民に向けて「軍事的に大成功した。イランの主要な核施設 は完全に破壊された」と演説した。 同時に、世界中のマスコミが「大戦争への危機」を報道し、日本でも「米が参戦、危機加 速/イラン核施設空爆」といった大きな見出しが躍る新聞や、緊急のテレビ速報が流れ続 けた。 国内外の有識者からは「第3次世界大戦が始まっている」という論評も出ていた。 それから2日後の23日(日本時間の24日)、トランプ大統領は「イスラエルとイラン の間で、停戦が合意された」と突如発表。 停戦がいつ破られるか予断を許さない「薄氷の合意」とのことだが、25日の新聞夕刊で は、「イスラエル 歴史的勝利/ネタニヤフ首相、トランプ氏に感謝」「イラン 停戦維 持」という見出しが、新聞の1面に載っていた。現在のところ停戦が守られているようだ。 だが、このまま停戦が永続するかどうか。それは誰にもわからない。 一方、イスラエルの首相は「パレスチナ自治区・ガザでの戦闘は続ける。いま焦点はガザ へと戻った」と語っている。 2023年10月以降、イスラエルの激しいガザ地区の殲滅、容赦のないイスラム組織・ ハマスの掃討作戦が続いている。 現在、延べ300万人にのぼるガザ地区の避難民。外からの支援物資のルートもイスラエ ルに断たれ、ほんのわずかな支援物資の食料を得ようと、必死に集まった飢餓状態の子供 や大人の群れ。海外からのテレビ動画や報道写真を見ると、誰もが瘦せ衰えた不安な表情 をし、泣き叫ぶように手を差し出している。そうした難民の群れにも、イスラエル軍は容 赦なくミサイルを撃ち込み、多数の死傷者の山をつくっている。 人間の心を放棄し、殺人マシーンと化した軍隊が、次々と無辜(むこ)の人々を虫けらを 踏みつぶすように殺していく。殺すか殺されるか、勝つか負けるか。それが戦争の実相。 そうした悲劇が今、世界のあちこちで起こっているのだ。 例えば、ロシアのウクライナ侵攻も3年以上続いている。 この4月には、共に核保有国であるインドとパキスタンの間で軍事衝突があり、現在は停 戦状態だが予断は許さない(注・2019年2月に、両国が核戦争寸前にまで至ったこと があった) 日本の周辺でも北朝鮮の核問題、台湾海峡や南シナ海の領海を巡る、周辺国と中国との緊 張がエスカレートしている。 日本の政治評論家や国際情勢の識者などは、「中国が台湾に進攻する時が近づいている」 と警鐘を鳴らしている。 その場合、日本はどう対応するのか。韓国の新大統領は就任早々「韓国は関与しない。な ぜなら中国とも米国とも良好な関係でいたいからだ」と言っていたが、来月の参議院議員 選挙では、各党・各候補者の外交・防衛問題に関する意見を、特に中国が台湾に侵攻した 際の日本の対応策を、是非聞きたいものだ。 いつまでも「平和で豊かな日本をつくります」という、抽象的で無難なスローガンを叫ん でいるだけではダメだ。 いま、次の言葉が私の心に刻まれている。 「残念ながら、世界はかなり危うい方向に転がり始めているように見える。しかし、だか らこそ私たち一人一人が、理性と常識を駆使し、目の前で起きていることの本質を冷静に 見極めることが大切だ。それが出来るかどうかは結局、何かの影におびえて疑心暗鬼にな った自分の姿を鏡に映し、客観視して我に返る。その『心の余裕』を確保できるかどうか にかかっているのではないか」(神里・千葉大学大学院教授) どの様な不安と危機に満ちた状況が生じようと、慌てずうろたえず、冷静に「日本は、日 本国憲法第9条で『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権 の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、 永久にこれを放棄する』と規定している。したがって我が国は武力(戦争)に訴えて解決 することは絶対にせず、どこの国とも外交交渉により良好な関係を図っていく。日本は第 二次大戦後、こうした憲法の精神に基づいて一度も戦争をせず、一人も他国民を殺めるこ となくきた。これからも国家の名誉にかけて、全力をあげ、国際平和主義の達成に努力し ていく」といった非戦のメッセージを、常に世界に発信していくべきであろう。 「力による平和」は相手に遺恨を残し、いつか再び紛争を呼ぶ。 敗戦国のみならず戦勝国にも多大の犠牲が出る。戦争からは「真の平和」 は生まれない。 考えてみたら、終戦後の1946年11月3日に発布された日本国憲法の前文の趣旨ある いは第9条の精神は、あれから80年経った現在にこそ生かされるべきであろう。 だが「それは理想論であって、今や時代が違う。ウクライナやガザやイランの紛争で明快 なように、軍事力を強化しないと日本はやられる」と唱え、目先の現状に慌てふためき、 短絡的に軍事力増強や核の保有を声高に叫ぶ人が増えてきた。 もしかしたら現在は、我が国の憲政上「法に基づく秩序と平和外交」を真に実現するため の、最後にして最大の時季なのかもしれない。 さて、この「戦争の危機」の章の最後に「災害の危機」についても一言。 最近、「今年の7月5日に、日本で大きな天変地異が起きる」という噂が、マスコミやイ ンターネットで取り上げられ、話題になっている。 この噂は「私が見た未来」(著者・たつき諒)という、予言漫画がネタ元。著者の女性漫 画家(現在70歳)は、50年前からラブコメデイやメルヘンな少女漫画を描いてきたが、 一方、若い頃から不可思議な夢を見て、それを夢日記として残し、予知漫画(?)にして 出版してもきた。 著者は過去にも「ダイアナ妃の死、阪神淡路大震災、2011年3月の東日本大震災、そ して2020年1月の新型コロナウイルス危機などを予知した漫画を出しており、後日そ れが的中していたので、予知漫画家として名を馳せているようだ。 私は昨年の夏、この「私が見た未来」の本を買って読んだ。 夢の原画と文章が混ざり合った、単行本だ。 著者が夢を見たのは2021年7月5日。 その内容は「日本とフイリッピンの中間あたりの海がポコンと破裂(噴火)した。その結 果、海面では大きな波が四方八方に広がって、太平洋周辺の国に大津波が押し寄せた。そ の津波の高さは、東日本大震災の津波(注・津波の最大高さは40mだった)の3倍はあろ うかというほどの巨大な波。 その波の衝撃で陸が押されて盛り上がって、香港から台湾、そしてフイリッピンまでが地 続きになるような感じに見えた。 その災難が起こるのは、2025年7月だ」とある。 そして次のページに、夢のイラストが載っている。 欄外には「日本列島の太平洋側、3分の1から4分の1が大津波に飲み込まれています。 震源地に向かって、なぜか2匹の竜が向かって行く映像も見えました」との注釈がある。 なお、作者あとがきには、こう書かれていた。 「夢を見た日が現実化する日ならば、次に来る大災難の日は2025年7月5日というこ とになります。 私と同じような予知夢を見た人は、実はたくさんいるのだと思います。 予知は警告です。避けられるから、見させられた。 災難を避ける、災難を小規模にする手段があるということです(以下略)」 この単行本は三軒茶屋のTSUTAYA書店で買ったのだが、店員の人が 「良く買われています」 と言っていた。現在では100万部以上のベストセラーとなっているらしい。 今年も気候変動の影響を受けて、各地で大きな災害が起こることだろう。 予知夢の本「私が見た未来」の津波災害を、著者は災難と呼んでいるので、自然災害より 核爆弾の落下などによる人的災害のようなものをイメージしていたのか?一般的な大災害 とは位相が異なるようだ。 確か世田谷区は海抜40m程度なので、もし本当に起こればどう影響を受けるのか?事前 の備えは?などと考えてしまった。だが、災害の危機は今や通年を通してあることなので、 「備えあれば憂いなし」の気持ちで、日頃の準備と覚悟だけはしているつもりなのです。 以上。 この夏を、安全・安心・無事に過ごしていきましょう。 それでは良い週末を。 |