東井朝仁 随想録
「良い週末を」

気になるウクライナ

昨日の夕食後、TVでロシア軍が展開するウクライナ東部ドンバス地方への侵攻のニュー
スを見ていた。ロシア軍はウクライナの首都キーウへの侵攻の手を一旦止め、ドンパス地
方の港湾都市・マリウポリの制圧に軍を集中させている。マリウポリを制圧すれば、
2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島と自国をつなぐ陸地の回廊が出来上
がり、ロシアにとって今後のウクライナ侵略が極めて有利になるからだ。
現在も、マリウポリの製鉄所に立てこもる多くの兵士や民間人。ロシア軍は投降を呼びか
け、これに応じない場合は製鉄所を容赦なく攻撃し、マリウポリを壊滅すると予告。
しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領は「領土は手放さない」と述べ、シュミハリ首
相は「我々の兵士は最後まで戦う」と、徹底抗戦の構えを崩していない。
ウクライナの首脳は、ドンパス地方での戦況が「戦争全体の行方を左右しかねない」と語
り、主要7か国(G7)などに7兆円規模の支援を要請した。また、ゼレンスキー大統領
は関係友好国に対し、「一刻も早い武器の供与を!」と呼び掛け続けている。
私がこのエッセイを書いている今現在(日本時間19日午後3時)でも、戦況の大きな変
化があったのでは、と気になるが。
果たして、ウクライナ軍は持ちこたえられるのか。
非常に気になる今。

テレビでのニュースやワイドショーなどでは、コメンテーターが「プーチンは焦っている」
「正しい情報がプーチンに届いていない。それだけロシア幹部の間は混乱している」「ロ
シア兵の士気は衰えている」「近々、ロシア内部でプーチン下ろしのクーデターが起こる
可能性も否定できない」「プーチンの持病悪化説に信ぴょう性」「ウクライナ軍の戦いに
ロシアは想定外のショックを受けている」などなど、何か希望的観測の報道やSNSが飛
び交っているが、こうした見方は危うい。

新型コロナ感染拡大の時と同様、たいした専門家でもない「識者」といわれる人が、連日、
ああでもないこうでもないと2年間余りテレビに出まくって喋っていたが、結局、どうし
たらいいかという命題に対し、感染拡大防止対策の結論は「3密回避と手洗いマスクの励
行。ワクチン接種」。
特に、当初から予防の基本と提唱されていたワクチン接種。
国の検討会も行政も、連日ワイワイガヤガヤと議論ばかりしているうちに尻に火がつき、
ようやく国はワクチンの確保に狂奔し、これから4回目の接種もあるだろうが、結果は
「優・良・可」の「良」ぐらいで?現在は落ち着いているが。
長々とした議論は、時と場合と物事による。

現在のロシアの極悪非道なウクライナ侵攻をめぐる解説も、コロナと相似。
「それでは、ロシア政治学がご専門の○○大学准教授の、○○先生に現在の状況をご説明
いただきます」とのキャスターの誘導で、前述のようなコメントを吐いているが、やはり
「評論家」ではリアルな真髄に肉薄する分析に乏しい感がする。ロシアの政治や文学、歴
史の研究を生業にして、ロシアに留学経験があり、ロシアの友人のコネがあるとかでの知
識と情報はあるだろうが、それは平時では役に立つ。しかし、世界が非常時、有事の時の
状況分析は、荷が重いのではなかろうか。

だから、「コロナ」の時も「それでは感染症学がご専門の○○先生に、お話を伺います」
といって、それらの先生方の話を連日のように国民は何十回、何百回も聞いてきただろう
が、果たして何か役に立っただろうか。正直な話、私は一度たりとも「なるほど!」と感
心した経験は一度も無かったが。
それら数少ない「専門家」以外に、果たして日本では人材がいなかったのだろうか。国は
首相も厚労大臣も「専門家会議でしっかり検討していただき、、」と紋切り型の答弁で、
最後は尾身会長が色々と配慮しながら説明しずらそうに答弁し、、、。地方行政は各知事
がパフォーマンスで、色々なキャッチフレーズを多用してやっているふりをし・・・。
専門家は単なる評論家と化し。

コロナとの戦いは水際作戦も重要だが、自国内であわてず騒がず時間をかけてでも対処で
きるが、国際的な戦争・紛争等は、まさに100年に1度の国の存亡にかかわる有事。
私は、戦後77年間の平和を享有してきて、多くの国民が「戦争なんて知らないよ。日本
でそんなことがあると思っているの?」とまさに一億総平和ボケしているかも知れない状
況の中、ロシアのウクライナ侵略・ジェノサイド(大量虐殺)の現状に対して、国は今こ
そ「情緒を排した冷静かつ客観的な現状分析を、マスコミに正しく公表していく」必要が
あると思う。
外務省も防衛省も、国の機関。国民と国家の存立に直接的・間接的にかかわる問題は、広
く国民に情報を開示する義務がある。
何でもかんでも「機密事項に関する案件なので、答弁は控えさせていただきます」などと
いう無責任な答弁で済ましていたら、きっと有事勃発の際は、国も国民も「それは想定外。
聞いてないぞ!」とパニくるだろうが。

そんなことを、夕方のテレビニュースを見ながら思ったのです。
だが私は、ウクライナに関するニュースをテレビで見るのは、朝と夕方のNHKの番組だ
け。
それ以上は無駄で、疲れる。寝つきも悪くなる。
一度、朝と昼と夕方の時間帯に、全局のニュース、ワイド番組からウクライナ状況の動画
を見たが、どこの局も「家が壊滅され、怪我をした幼児を抱えて泣き叫ぶ母親や、一人取
り残された幼い子供が、泣きながら放浪の難民の群れの後をついていく姿」の動画を、情
動的なナレーションで朝から晩まで繰り返し放映していた。以降今日まで、どのTVも新
聞も、朝から晩まで、各局同じ動画と情報を垂れ流し続ける状態が続いている。

かといって、他のチャンネルにかえても、どの局もお笑いタレントによる食い物や買い物
やクイズや街歩きなどの、全く「こんな番組、どれだけの人が見てるの?」と驚くほど腑
抜けた、笑いにもならない番組ばかり。
これが日本の現状。庶民の嗜好。だから仕方がないが。
第二次世界大戦前も、社会にはエロ・グロ・ナンセンスの風俗と物価高とひたひたと押し
寄せる戦争の気配と虚無感が漂っていたというが。
したがって、テレビは「大谷選手」「佐々木投手」関係のスポーツニュース以外はすぐに
消すし、そもそもテレビは見ない。
テレビや新聞から知りたいのは、元職でも現職(困難だろうが)でもいいが、防衛省や自
衛隊などの我が国の情報・戦略部門に携わっていた「専門家」の冷静な理論に導かれた解
説なのだが。

というような、誠にとりとめのないことを述べてきましたが、今回書きたかったエッセイ
は、私が43歳まで生活していた目黒区下目黒にある、目黒消防署に関することだったの
ですが、それは次回にでも。
ウクライナの状況は今(19日午後6時)、どうなっているのでしょうか。気になります。

(追記)
2月24日付のこのHPで、私は「もしかしたら・・・」と題して、ロシアのウクライナ
侵攻について触れました。
あれから2か月ほどが経ちました。
「数日の戦闘でウクライナはロシアに制圧される」という見方が世界に多数ありましたが、
現在でも激しい戦闘が続いています。だが「ウクライナは良く頑張っている」という評価
だけではすみません。
日を数えれば数えるほど、それだけ毎日、無辜(むこ)の民が殺されていく状況が続いて
います。

今夜は、ウクライナ東部で大規模な戦闘が開始されるはず。
現在、午後8時。
ロシアが大砲や戦車でマリウポリの製鉄所(多くの女性や子供が避難している、ウクライ
ナ東部の要所)を攻撃し始めた、というニュースが、たった今、入ってきました。

1時間前、午後7時のNHKニュースで見た、SNSによる製鉄所地下に避難中の、多く
の子供や女性の動画。不安に震え、疲れ切った表情の母親達の横で、寂しそうな笑顔を浮
かべていた子供たち。
それが今は・・・。
想像しただけで、涙が滲んできます。
こんな理不尽なことが、世界中の心ある人々が見守る中、堂々とまかり通るとは。誰も何
も手を下せないとは・・・。
無常なものです。

今はただ、無力感と絶望感に固まった心の、よわよわしい脈動にすがりながら、ひたすら
に「大難は少難に、小難は無難に!」と祈るばかりです。

それでは良い週末を。