| 老後の不安の要素・3K?(2)
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| 前回は、「多くの国民の老後(将来)の心配事は、極論すれば3つのKになるだろう。そ れはカネ(生活費)の不安、健康の不安、そして孤独の不安」と述べ、まずカネに関する 私の些細な経験を紹介させて貰った。 今回は、二つ目のKである健康(の保持・増進)について、私個人の雑駁な意見を述べて みたい。 のっけから結論を言うと、主題の「3K」と同様に、キーワードの頭文字の読みをとって 「3つの主要Sと、2つのS」が、私が考える健やかな老後を送るための要諦だと考えて いる。 3つの主要Sとは「食事(栄養)・身体活動(運動)・睡眠(心の健康)」 この3つの健康課題は、厚生労働省が2000年(平成12年)に策定した「健康日本 21」と題した「我が国の21世紀における国民健康づくり運動」の主要分野でもある。 (他にも、歯の健康・たばこ・アルコール、そして糖尿病・循環器病・がんの6課題があ るが、割愛した。たばこは禁煙の促進、アルコールは適正飲酒の励行) 現在、健康日本21は昨年度から2035年を目標にスタートしている。したがって全て の国民を対象にしており、何も高齢者に限った内容ではない。だが、これから高齢期に向 かう人、既に高齢期にいる人にとっては特に、食事と身体活動と睡眠・心(シン)の健康 の3Sは、幸せな日々を送るための重要な課題だ。 そこで、私が日々の習慣として行っている3Sを述べてみると。 まず食事は。 朝・昼・夕食の3食を必ず摂り、全て腹八分に。 それと、タンパク質の多い食材を意識的に多くとるようにし、肉類は牛肉・豚肉・鶏肉を 日替わりで夕食の主菜としている。 また、副菜的にアジやサンマなどの魚を適宜加えている。 反対に減量しているのは、小麦系食材などの炭水化物、糖類。 私は小さい頃から甘い物が大好きで、数年前までは豆大福や最中などを一度に3個くらい ぺろりと食べていたが、今は糖質は控え、食べてもせいぜい1個に。珈琲に砂糖を小匙2 杯入れていたのを無糖に。 また最近では、晩酌はビールをコップ2杯か赤ワイン1杯程度にし、日本酒は外で飲む時 ぐらいにしている。以前の半分以下だ。 だが、酒も甘い物も無理して減らすわけではなく、それほど飲んだり食べたりしたいとは 思わなくなったからだ。 また、以前は週に何回かはラーメンを食べていたが、今は1か月に1回程しか食べない。 食べたいと思わないのだ。 それと、熱中症対策には全く関係なく、水をこまめに飲むように心がけている。 食事は「心身に良い好きなものを、バランス良く、気分良く食べること」に尽きると思う。 例えば。朝は中皿に載せた輪切りのバナナ1本と、小皿に盛った煮黒豆に、それぞれたっ ぷりと豆乳をからませてからハチミツをかけ、その上にバナナには100%純正ココアを 大匙2杯、黒豆にはシナモン・パウダーを小匙1杯振りかけたのを食べている。 それに、複数の野菜・リンゴ・レモンをジューサーで搾りたてた野菜ジュースをコップ1 杯。最後に酒粕の塊を大匙1杯ほどを湯に溶かした甘酒をカップ1杯飲んでいる。 以上が、ここ10年ほどの私の朝食。 そのわけは。 私は昔から血液検査では何も異常値がなかった。しかし総コレステロール値だけはいつも 基準値をやや上回っていた。だから毎回、検査結果表のコメント欄には「特に問題はあり ません。ただし脂肪の多い食べ物は控え、野菜類を多く摂るようにして下さい」と。 原因は飲酒と甘い物・炭水化物を好み、野菜は余り食べなかったこと。 そこで、前期高齢者になった頃から便秘気味だったことと合わせ、胃腸の調子と動脈硬化 予防、それに認知症予防(注・シナモンは良い!)を意識して、前述のような朝食を摂っ ている次第。 昼食は殆ど外食だが、スパゲテイや麺類やパンなどは余り食べず、幾つかある和定食店で、 豚肉の生姜焼き定食などを主として食べている。その場合、ご飯は白米ではなく玄米入り に。このほうが美味い。それに必ず生卵と納豆1パックを追加し、生卵・納豆かけご飯に して食べている。今では家での夕食でも、ご飯の時は必ずこれをし、さらにその上にキム チをたっぷりと乗せて食べている。美味いの一言。 結果、総コレステロール値は基準値に。 (注・食事については、既に2022年9月14日の「ブレックファースト」で語ってい るので、お手すきなら是非再読を) 次に身体活動は。 これも毎日の習慣だが、午前中にラジオ体操第一をした後、腹筋・背筋の伸縮運動を各 20回、腕立て伏せと、スローなスクワットをそれぞれ30回し、余裕のある時はエキス パンダーで両腕と胸肉の筋トレをしている。 そしてこれは趣味でもあるが、夕方に早足で散歩(サンポ)をしている。 散歩(ウオーキングでも良い)は、心肺機能の向上や足腰の筋肉強化ひいては転倒防止に もなり、心が晴れ晴れとして気分転換を図るのに格好な身体活動だ。 スポーツのSは、以前なら私の身体活動の殆どをなしていたし、大いなる趣味でもあった が、今やバレーボールも野球も硬式テニスもジョギングも無理で、プレイしたとしてもリ スクが高い。 せいぜいゴルフぐらいか。 なぜなら、この年令(78歳)で筋骨格系、特に膝関節や脊柱管を痛めたら即アウトにな る可能性が大だからだ。日常生活動作に支障をきたし、下手をすると歩行も出来ない残り 人生を送らねばならなくなる。 近所の体格の良いおじさんが、だいぶ前から殆ど姿を見せなくなった。 外で見かけても、家の前に立っているだけ。奥さんに聞くと「右膝を痛めて、殆ど歩けな いし、痛い思いをするからと歩こうとしない。家の中ぐらい。最近は横になってばかり」 とのこと。片足の膝を痛めただけで歩けなくなるとはと、私は驚いて考えさせられた。 健康に良いとされるスポーツも、自己の年令と身体機能の現状を冷静に考慮し、適切なプ レイ種目を選択するのが賢明だろう。 私はバレーボールに熱中していた20代に一度、野球に熱中していた30代~40代に2 度と、合計3回椎間板ヘルニアを起こした経験がある。どれも、職場は2日ほど休暇を取 って休んだだけだったが、1度目、2度目の時は、東京女子医大病院や虎の門病院の整形 外科に通院し、ベッドに仰向けになって足を錘(おもり)で20分ほど牽引する処置をし、 痛み止めの薬を貰って、カタカタとロボットのように帰るのがオチだった。そこで、ある 人に紹介された有名な鍼灸クリニックに通って針治療を受けたりしたが、完治(普通の日 常動作が可能な状態)に半年ほどかかった。その期間は腰にコルセットをはめて職場に行 き、仕事をしていた。 40代前半の3度目の時は、河口湖での野球部の合宿練習の際だった。投球した際に腰部 がギクッとして立っていられなくなり、すぐに身体を支えてくれた後輩の車で自宅まで送 って貰った。 だが、玄関に着いたら最早痛くて全く動けず、廊下にうつ伏せになった。その時に脳裏を かすめたのが、この日の数か月前に知り合い、私の人生を大きく変える御縁が出来たA老 師のことだった。老師はこれも運命のなせる業だったが、私の家のすぐ近くのマンション に住んでいた。私は家内に「A氏に電話をして、来てもらってくれ」とうめくように言っ た。師は幸い在宅中で、奥様と一緒に駆け付けてくださり、玄関の廊下に突っ伏している 私にカイロプラクティク療法(脊椎調整療法)を施してくれた。そして「これで明日には ぴたりと治っていますよ」と笑いながら帰っていかれた。 私は廊下にうつ伏せのまま、家内に掛け布団を掛けて貰って眠りに入った。真夜中、尿意 を催して恐る恐る立ち上がってみたら、何と痛みが消えていた。「エッ!」という驚きと 嬉しさがこみ上げた。だがトイレから戻って2階の自室には上がらず、居間で慎重にうつ 伏せの恰好で入眠した。翌日、目が覚めると腰は何ともなかった。まるで神がかりにあっ たかのように、一度の脊椎調整ですぐに激痛が消えていた。そして翌日は何ともなく出勤 することが出来たのだった。 近年、街を歩いていても不自由な歩行をされている中高年の人を多く見かける。車椅子の 人も多くなった。しかし、まだ街に出られる人は良いほうだろう。その裏にはもっと多く の歩行困難者や、介助者にもたれながら少し歩けるような人が多く潜在しているはずだ。 今とこれからの超高齢社会における医療(リハビリを含む)・介護分野の大きな課題は、 ずばり筋骨格系疾患(注・骨格を形成する骨と筋肉、腱、靭帯、関節などの疾患)対策だ ろう。 まずは年令を問わず、日頃の身体活動・運動が大事だろう。 それと特に高齢者は、つまずきによる「転倒」に注意が必要だ。そのために日頃の習慣と して、足の筋肉を鍛えるスクワットやウオーキングは大事な運動になるはずだ。 3つ目のSの睡眠(心の健康)は。 睡眠は心身の疲労をとり、明日へのエネルギーを醸成させる、生きるための絶対不可欠な もの。 だが心身の調子が悪いと、質の良い十分な睡眠がとれない。 すると朝から頭が重く、身体も怠く、昼間も生あくびで気力が湧いてこない。これでは仕 事も日常活動も順調にいかなくなる。 こうした眠れないという睡眠障害の状態が慢性的に続くと、それは不眠症とも判断される だろう。 睡眠障害には、なかなか入眠できない入眠障害、寝てる途中に目が覚める中途覚醒、朝よ り相当早くに目が覚める早期覚醒がある。 原因は、入眠障害は「ストレス、緊張・不安等」中途覚醒は「加齢、ストレス、アルコー ル、睡眠時無呼吸症候群、うつ病等」早期覚醒は「加齢、うつ病等」 私は55歳ぐらいから入眠に時間がかかるようになった。 なかなか寝付けない。11時に床に就いても寝返りばかりで時計を見ると午前1時、そし て2時というケースが出現してきた。 それでも「寝られなくても死ぬわけではない。3時でも4時でも徹夜になってもいい」と 開き直って、いつしか入眠しているというパターンを繰り返すようになった。当時は厚生 労働省を早期退職する計画や、東京検疫所の次長としてSARS(サーズ・重症急性呼吸 器症候群)等の外来感染症の水際作戦でピリピリしていた頃だった。 そうしたストレスと緊張が原因だったのだろうか。 幸い、お台場にある検疫所庁舎近くのクリニックで定期診察を受けている際に、以前から 親しくなって世間話をしていた院長に睡眠の話をしたら、「最近出たばかりのいい薬があ るので、それを飲んでみてください。私も飲んでいますが、これはいいですよ!」と言っ て処方してくれた投薬が、入眠障害に効く「マイスリー」という睡眠薬だった。 これは効いた。寝しなに1錠飲むと、朝まで熟睡し、寝起きの頭重や倦怠感などの副作用 は一切なかった。これを1週間続けたら、みるみる心身にエネルギーが満ちてきた。この 時に「やはり睡眠が一番の健康法だ」と痛感した。 次に古希(70歳)を過ぎてから、中途覚醒が始まった。 睡眠薬はたまにしか使用していなかったが、自然に入眠していた。 しかし、目が覚めた時に「ああ、もう朝か」と時計を見ると、何と未だ夜中の1時。たっ た2時間しか寝ていないのには驚いた。そして起きたついでにトイレに立った。 こうしたことが続き、そのうちに「最近は夜中のトイレが増えたな」と嘆きながら、2度、 3度と中途覚醒するようになった。 そして「原因はきっと前立腺肥大だ」と推察し、かかりつけクリニックの院長に診察して もらった。診察は問診だけで、すぐに寝る前の1錠として「ハルナール錠」を処方された。 以降、頻尿が緩和され中途覚醒も減った。だが中途覚醒はゼロにはなっていない。今でも 2回は目が覚めるが、これが年なりで自然なのだと思っている。 いずれにしろ、加齢により心身の機能は低下してくる。 それに伴い心身の不都合も色々と出てくるが、それらをなるだけ未然に防ぐか、最小限に 抑えていきたいものだ。 睡眠や心の健康も同様。やはり適切な食生活や身体活動などを生活習慣とし、場合によっ ては医師と相談して良薬を使用して、幸せな自分の睡眠を確保していくことが大切だろう。 以上のことに加えて、最後に健康に大事なもう2つのSを。 一つは趣味のS。たった一度の人生。自分の好きなことを一つでも二つでも楽しんで生き ていきたいもの。 もう一つは深呼吸のS。 時間と共に流れてゆく毎日の生活の中で、例えば就寝前の30分でも、深呼吸をしながら 静かに瞑想すること。心が落ち着き不思議な力が湧いてくると私は確信しています。 月並みな言葉ですが「夢と希望を抱いて、明日へ進もう!」という声が心に響いて来るで しょう。 それでは良い週末を。 |