東井悠友林
~地震対応の余話と
50歳代の健康維持~
札幌市水道局給水部 配水担当部長
住 友 寛 明
●はじめに
札幌市水道局で勤務する住友と申します。東井さんには30年も前の旧厚生省生活衛生局在籍時にお世話になり、その後も当地で時折お会いする機会をいただいています。慣れぬエッセイですが、昨年9月の北海道胆振東部地震後対応の余話と50歳代の健康維持のためのささやかな努力について綴ってみます。
●地震対応の余話 ~長時間停電時のマンションなどの上層階での給水
平成30年9月に発生した北海道胆振東部地震により、最大震度7を記録した厚真町を始め北海道内で甚大な被害が生じたことは記憶に新しいところです。
札幌市内においても、一部の地区で液状化が起こり断水も発生しましたし、地震直後に北海道全域での長時間停電(いわゆるブラックアウト)が起こり、都市機能や市民生活に大きな影響がありました。
一方、札幌水道の浄水場やポンプ場では、停電時にも非常用自家発電設備を運転し、施設の機能を維持できたため、水道水の供給を続けられました。
しかし、マンションなどの共同住宅やオフィスビルの中では、停電のため水道水を上層階に送る電動ポンプが動かず、蛇口から水道水が出ずに、市内各所の応急給水拠点で水道水を入手する方が多かったところです。
もしもこの事態が9月ではなく冬場に生じたならば、寒い中で給水所に長時間並ぶことも、重い水を持って滑りやすい路面を歩くことも大変です。
札幌では、マンションなど5階建てまでの建物では、戸建て住宅と同様に、公道下の水道管(配水管)の圧力により、建物内の「給水管」を経て各戸に給水する「直結直圧方式」を採用できる地域が多く、電力を使わないこの方式は停電の影響を受けません。
一方で6階建て以上の建物で水道水を供給する方法は、次のいずれかによることが基本です。
① 給水管を配水管に直結させ、配水管の水圧にポンプの圧力を加えて上層階に水を送る「直結加圧方式」
② 配水管からの水を地下などに設けた「受水槽」に受け、ポンプの圧力により給水管で上層階に送る「受水槽方式」 いずれの場合にも、配水管の機能が正常であれば、停電しても①のポンプや②の受水槽の周りの水栓などから水道水を汲める場合もあるのです。(水道メーターの下流側で水をとることになります。)
この点を知っていれば、仮に暴風雨時や厳寒期に長時間停電が生じても、ご自身が居る建物内で水道水を入手でき、応急給水のために屋外で長時間待つことが不要になるかもしれません。
札幌水道では、一人1日3リットルの水を3日分【※】ご家庭で備蓄するよう呼びかけており、こうした広報と合わせて、このことをお知らせしていくことが大切と考えています。
【※】3日分:近年は南海トラフ地震対策などのため「一週間分」とする自治体もあります。
また、今回の停電時には、給水用の電動ポンプを備えた建物の上層階の居室で水道が使えたケースも確認されています。
札幌では、配水管内の水圧が10階建てマンションの高さに相当する30m程度である地域も多いところです。水圧は給水管内の水流に伴う“摩擦損失”などによって低下するので、一律に何階までとは言えませんが、前述①の“配水管の水圧+ポンプ加圧”で給水するマンションなどでは、ポンプ配管のバイパス部分を通った水が配水管の水圧により8階以上まで届く例がありました。
災害時などの停電時に居室で水が出ると、エレベーターが使えずに重たい水を階段で運ぶ必要もなく、水洗トイレも使えると自宅で過ごしやすくなりますね。
一方、前述②の「受水槽方式」では、いったん槽内で水圧が大気圧と同じになった後にポンプで加圧して、屋上などの「高置水槽」に水を送ってそこから各戸給水するのが基本型です。長時間停電の初期には水が出ますが、高置水槽が空になると給水されません。受水槽方式では水槽の衛生上の管理も必要であり、①の直圧方式に変更する建物も多いところです。
●50歳代の健康維持
ここからはプライベートのお話しです。30~40歳代の頃は、仕事や子育て(妻が主役ですが…)などのため自分の時間も限られましたが、近年は子供も成長して以前より時間の余裕もでき、ジム通いをしています。
どうも若い頃から頸や肩が凝りやすく、治療院にも通っていました。また、40代前半までは「どうせ運動するなら大きめの負荷で」との思い込みもあり、やや頑張ったランニングなどの後にはどんよりとした疲れが翌日以降にも残ることもありました。
どっぷり50代となった今は、衰えていく身体能力への諦めもあって、運動の主目的を、身体を柔軟にして姿勢を整える健康増進とし、疲労を蓄積させない水準のゆったりとした長時間の水泳やストレッチなどをしています。
ジムのプールでは速く泳ぐ若者も多いのですが、隣のレーンの場合は気にしないよう、同じレーンの場合はターン時に先を譲るよう心掛けています。初期には、前かがみで上腕を内転しやすい猫背姿勢の改善のため、腕の外転を伴う背泳ぎが効果的でしたが、腕・肩の筋肉の柔軟性が増してくるに従い、長距離に適したクロール中心に移行しています。
ストレッッチでは、最初のうちは一般書を見ながら“形から入る”方法で、1回で1時間以上かけて習慣化させました。続けているうちに、どこを伸ばすとどの部分の筋肉に効くものかを感覚的に掴めてきましたので、柔軟性の具合によってターゲットとする筋肉群を変えながら、体幹運動も交え、時間効率も考えて続けています。
また、昨年末からジムのプログラムにあるピラティスやヨガにも挑戦しています。初めには周囲にハイレベルの方が多い中で場違い感も覚えたほか、そもそも自分の骨格・筋肉の状態では絶対できないと思われる「ポーズ」もありましたが、何とか続けているうちに、徐々に身体の安定性が高まっていくことが実感できました。インストラクターは、一般にパソコン操作などで猫背になりやすい習慣を持つ人が多いことを意識して、所定の1時間の中で、より多くの人が効果を得られる組み立てをしてくれているように思います。
さらに、ストレッチなどの自助努力のみでは緩みづらい筋膜の拘縮部などを解消し、身体のバランスを保てるよう、時には鍼治療などプロの手腕もお借りしています。
これらのことで、徐々に凝り症が改善され、背筋も無理なく伸びてきたと自覚できています。年数を要しても、どんよりとした疲労が解消されると気持ちの面でもより前向きになれますね。思い込みかもしれませんが、高めだった血圧も落ち着き加減のようです。
私のジム通いは、妻にとっても旦那が家に居座る時間を最小化できる意味を持ち、我が家では珍しい“Win-Win”の取り組みであり、(消極的な意味で)夫婦円満の一助となっていました。そんな中、何を思ったのか、妻も最近ジム通いを始めたのですが、意外と継続できているようで、身体も軽く快調のようです。
●結び
今後も自らの心身と家庭環境を整えつつ、同僚や共に仕事をする方との縁を大切に、水に関わる現業務を通じた社会への恩返しが少しでもできるよう努めていきたいと思います。
ここまで駄文・長文にお付き合い下さりありがとうございます。令和の時代となって早くも1か月が経過しました。本格的に暑い季節となりますが、皆様がご健勝でご活躍されることをお祈りいたします。