東井悠友林
~サマーズ.リバーランド~
(一財)日本健康文化振興会常務理事
五 宝 誠 一
私は社会人になって50年余りにもなるというのに、毎年、学校の夏休みの時季が来ると思い出すのは、私が小学4年生から6年生の間、大阪市の少し南にある道明寺町(今は藤井寺市に併合)という所に住んでいた頃のことです。
私と、私の1歳年下の弟の夏休みの楽しみは、毎日のように朝食を済ませると朝早くから川遊びに出かけることでした。
出かける二人の格好は、私は麦わら帽を弟はタイガースの野球帽(弟はこの頃からトラキチです)を被り、それぞれ白か青の半ズボンに上は白いランニングシャツ、そして足元はゴムサンダル(当時はビーチサンダルなんてものはありません)。手にするものは、小さい釣り竿と虫取り網に虫かご、それと母が作ってくれたちょっと大きめのお握りが入った弁当箱と麦茶入りの水筒です。父が休みの日は、たまにアイスキャンデイ代としてお小遣いを貰えるときもありました。
最後に首にタオルを引っかけて、これで川遊びの装備完了と言ったところでしょうか。
二人は元気な声で「行って来まあ~す」と言うと、母が「気ィつけてな~、川の深いとこは行ったらアカンよ~、暗くならん内に帰って来るんやで~」と毎回決まり文句のような見送りを受けて出発です。
さて、目指すは大和川(奈良県から大阪府内を大阪湾に向かって流れる1級河川)の支流、石川の中流にある堰き止めダムです。支流と言っても中流域で川幅は多分100メートル以上はあったと思います。
家から目的地までは、子供の足で普通に歩けばおよそ1時間くらいですが、途中、友達を一人,二人と川遊びに誘ったり、菅原道真を祀った道明寺天満宮の広い境内の林の中で蝉とりをしながら進むため、結局は、炎天下の中、約2時間ほどかかって石川の堰止めダムに到着です。
みんな川に着いた頃には全身汗だくになっていますが、川の水で顔を洗ったり濡れタオルでからだを拭いたりなんてことはせず、いきなりシャツとズボンを脱ぐと全員海水パンツ姿となり、川岸から次々と冷たくきれいに透き通った水の中へ飛び込みです。ザブ~ン、ザブ~ン、ザッブ~ンと実に爽快です。
川岸近くの水深は、水面から頭を出してつま先立ちでやっと川底に届く感じなので、前夜に雨が降って少し川の流れが速いときには体が流されそうになりますが、それがまたスリルがあって堪らないのです。
それでも小さい子供ですから、もし流されたらどうするんだと言う心配はありますが、今になって思うと 川の土手や川岸そして堰き止めダム周辺には、我々だけでなく中学生・高校生のお兄ちゃん達や大人も大勢いて、それなりに小さい子供たちの様子を見ながら川遊びをしていたような気がします。
みんな飛び込みのあとは,めいめい、魚釣りや素潜り、向こう岸への遠泳(小学生にはそう思えました)。
川岸の草むらや繁みでトンボやアゲハ蝶などの昆虫採集をして、お昼までしっかり遊んだ後は,待ち かねたお弁当のお握りを食べ、川水で冷やした水筒の麦茶を飲んで木陰でしばし昼寝。
休憩したあと、午後はまた夕暮れまでタップリ、川で遊び、みんな海水パンツをはいたところ以外は全身真っ黒で、クタクタになって家路に着きました。この日課は夏休みのラスト一週間前までほぼ毎日のよう
に続きました。
私にとって、子供のころの石川での川遊びは、最近のディズニィーランドやテーマパークのような華やかで賑やかな遊び場ではありませんが、大人になって何年たっても忘れることのできない、今でもとてもなつかしい夏の川のプレイランド。ディズニィランドよりも楽しいサマーズリバーランドでした。
今ではこんな川遊びのできる場所は少なくなったかも知れませんが、でも、探せばまだどこかにあるのでしょうね。