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東井悠友林

卒業、そして新たな入学を控えて
      
      愛媛県企画振興部長
        河 瀬 利 文
 
  柔道・金メダリストの山下泰裕氏と

 待ちに待ったというか、もうそんな年になったせいなのか、いずれにしても私の公務員人生38年が、今月末で幕を閉じようとしています。思い起こせば、東京の大学を卒業してUターン就職、なんとなく「東京で就職生活するより、勝手知ったる地元就職のほうが気が楽だ」という乗りで愛媛県庁に就職し、周りの先輩や同僚にもめぐまれ、あっという間に定年という「卒業」を迎えました。ひとえに、いろいろな方々に感謝しかありません。
 人間一生が勉強!といろんな人に言われ続けられ、これまで、小学校、中学校、高校、大学と4回の入学・卒業を経験していますが、今回の卒業は、なにせ学ぶ期間が38年と断然長かった。
 卒業すればその先の新たなステージ社会という学校に入学ということになるんでしょうが、
「この長い役人生活で学んだことなど、はたして何の役に立つのか・・・・」
 そんな思いを抱いて、東井さんに原稿依頼を頼まれたのを契機に、今後の自分の未来予想をしてみようと考えました。
 人生100年時代と言われていますが、これから70歳までの10年間は、健康面や経済面など非常に重要な期間でしょう。なるべくこれまでに近い生活習慣を維持し、毎朝6時起床、リンゴ酢を飲み、昼はおにぎり少々、週一回程度は飲みにも行って・・・。
 仕事は柑橘を少々作っているので農業をしながら、75歳くらいまでは社会とのかかわりを続けたい。その他、週三回は少年柔道の指導を含めて運動し、ゴルフも月2~3回を目標に頑張り、シニアの大会なんか参加できればいいなと。旅行もしたい、映画も見たい。子供が男3人いるので、もしかして孫が3人くらいできているかなとも。高齢の両親がいるが、たぶん二人とも亡くなっているだろうが・・・・。
 待てよ、飲んだり、ゴルフに行ったりは一人では寂しいし、果たして友達は付き合ってくれるだろうか。嫁さんは?家族は?いやいや、そもそもそんな友達いたのか?嫁さん孝行してきたのか?家族を大切にしてきたのか?と、心配になってきた。
 よく考えれば、5回目の卒業とか言っているが、そもそも卒業単位足りているのか?(と言っても留年もないが)
 そんなことを漠然と感じながら、希望と不安の交錯する中、今回の卒業を迎えている。
 これまで、幸いにも大きな病気もすることなく来ましたが、結局これからも、何はなくても友達や家族、そして健康が一番と肝に銘じ、人生の後半戦を一生懸命「1日を10日」の気持で生きて行きたいと考えています。
 あの喜劇王チャップリンは言いました。
 「人生はショートで撮って、悲劇でもロングで撮ると全て喜劇だ」
 この言葉を信じて頑張ります。

引き分けの文化 (2018/11/13掲載)

 「こら!技かけるな!そこは行くな!」「我慢!」「じっとしとけ!」試合会場の周りを取り囲む監督、コーチ、保護者からの檄が飛ぶ。大きな選手が必死の形相で小さな選手を追い込んでいるが、小さい選手がしのいで試合終了、引き分けに終わった。引き分けに持ち込んだ選手は皆に祝福され照れくさそう・・・・。その結果、先鋒と次鋒で勝利し、中堅戦で落としたものの、副将と大将が引き分け、2対1で決着がついた。

  私の趣味の一つは柔道。以前、東京事務所に勤務の折(この時、東井さんと出会う)に、一念発起し講道館に通い初段を取得。帰県後も松山市内にある道場に通い続け、怪我だらけの体で現在は4段。小中学生に柔道を教えながら、依然自分の柔道を高めようとしております。
 柔道団体戦は先鋒から大将までの5人が、それぞれ3分の試合時間で戦い、勝ち数が多い方が勝ちとなっている。ということは、先に3勝すればいいのかというと、そうではなく、実はこの団体戦には、引き分けというのがある。つまり、5人のうち誰かが1勝すれば、後の4人は引き分けで勝になる。個人戦と違い判定もない、引き分けを織り込んだ試合なのです。
  基本的に団体戦は体重無差別で行われるため、かなりの体重差で勝負しないといけない場合もあるが、負けなければ、後の人に繋ぐことができる。したがって、冒頭の声援となるわけです。当然全員勝てれば問題ないですが、勝てなくても、負けなければその団体戦を制することができるため、試合前は、5人のうち、「お前は必ず勝て」「お前は勝たなくてもいいぞ。無理するな!」「お前の役割はわかってるな」という風に、役割を決めて試合に臨みます。小さい選手でもうまく試合を運べば引き分けられる。大きな選手は勝って当然と攻めますが時間がどんどん迫ってくる。引き分けになれば、大きな選手はがっかり、小さい選手はしてやったり、これぞ柔道の醍醐味!

 ところが、世界選手権や東京オリンピックで初採用される柔道団体戦は、この引き分けがなく、とにかく一試合ごと延長戦をやってでも勝負をつけ、3勝した方が勝ちのルールだそうです。
 いかにも「JUDO」、単純でわかりやすいルールですね。でもそこには、とにかく相手に勝つことしかなく、日本特有の「相手と戦っても勝負をつけない。分ける。白黒つけない」ということを含めた、高度なスポーツ文化が失われているのではないでしょうか?
 そういえば、野球の世界でも、アメリカ大リーグは引き分けがなく朝まででも勝負するそうです。日本のプロ野球はちゃんと引き分けがあります。この引き分けこそ、日本独特の文化なのかなと思っています。「勝者も敗者もいない試合」を認める寛容な文化、なくしてはならないと思います。