~佐久市における「生涯学習」と
「健康」の関係~
佐久市社会教育部生涯学習課長
木 下 透

前回の寄稿からおよそ10年。地方公務員の宿命ですが、当時農業振興を担っていた私は、この間、→企画→福祉→総務と無秩序に渡り歩き、2025年度から、初めての教育委員会で生涯学習の推進に携わることとなりました。
与えられた職場で、その使命に基づき、大した知識もないくせにそれっぽいことを言いがちなのは、いわば職業病のようなものです。
しかし今回、東井さんの「木下くん、生涯学習に行ったんだってな。ちょうど会員向けによい分野じゃないか。そのことエッセイにしてみてよ」との要請により、地方の生涯学習について紹介する機会を得ましたが、正直、当会の錚々たる面々がお持ちの学びへの理解とか、親密さのような領域に、まるで到達していません。よって、ここで申し上げたいのは、生涯学習の何たるかではなく、それがもたらす幸せな果実についてです。
前回の寄稿で、「佐久市は、健康長寿県・長野のなかでも屈指の健康長寿都市」と書きました。当時その要因を「農業」という視点から眺めてみましたが、今回はその「生涯学習」版です。
生涯学習とは、人が生涯にわたり自発的な学びの活動を続けていくこと、と定義づけられることが多いようです。ここには、時期や分野、場所、方法を問わず、常に学び続けることが重要との本質的な意味のほか、自己を高め続ける気概がもたらす生きる姿勢とか、生きがいができることによる暮らしの充足感とか、学びそのものに留まらない側面も持ち合わせているように感じます。
生涯学習を促すべく、国策として、地域への公民館設置を推奨されたのが昭和21年。当時、疎開先として多くの文化人が在留していた地域特性を反映してか、長野県内では積極的に公民館が設置されました。現在に至っても、公民館設置数全国2位の県が約500館であるのに対し、長野県は約1,800館ですから、その特異性が見て取れます。
中でも佐久市は、県平均の2倍となる館数が象徴するように、公民館活動が活発に展開された地域でした。戦後間もない、物資も資金も不足していた時代でしたから、当初はいわゆる「青空公民館」も多かったようです。このことからも、公民館として大切なことを、施設ではなく学習活動そのものとしてきたことが、佐久市の公民館活動の根底にあります。
このように、生涯学習の基盤が強固な長野県、そして佐久市が、結果として健康長寿で名高いことは、相互の関連性・補完性を示唆するものではないでしょうか。健康長寿の要因は、気候、文化、食生活、保健活動や医療機関の充実など、様々あると言われていますが、学びと距離が近い風土も一役買っていることは、状況が証明してくれています。
かつてなにかの書物で読んだことがあります。健康に暮らしたいのですがどうすれば、という問いに対し、健康長寿の要因を研究するどこぞの大学の権威がこう答えたといいます。「なにか特別なことをするより、長野県で暮らしたほうが手っ取り早い」と。
いかがでしょう。佐久市と佐久市の生涯学習は、皆さんの快適で健康な暮らしをお手伝いします。都会にない豊かさと充足した生活を求めて移住・定住を検討されるときは、是非佐久市を思い出してみてください。
~佐久市における「農業」と
「健康」の関係~
(2018/1/5掲載)
私は、長野県佐久市役所の農政課で、農業振興施策の推進に携わっています。もともと農業とはかけ離れた人生を送ってきたため、知識も経験も圧倒的に不足する中、次々と現れる課題難題に悪戦苦闘している毎日です。
さて、東井悠友林の目的や事業として、心身の健康の保持増進が掲げられています。そこで、この場をお借りして、「佐久市の農業と健康の関係」について少しご紹介したいと思います。
現代の農業を取り巻く環境は、皆さんご存知のとおり大変厳しい状況にあります。農家の高齢化や農業所得の低迷に起因し、農業従事者の減少、農地の荒廃化、農村の活力減退など、様々な課題に直面しており、地域を問わずどの自治体においても、あの手この手で農業振興策を推進しているところですが、目に見えた成果が上がっているとは言えません。
国が掲げる「攻めの農業」政策では、農業を成長産業と位置付け、生産力向上に向け大規模化、効率化を図るための施策が推進されています。佐久市においても、このような「産業としての農業」の振興を図るため、農家の経営規模の拡大や農地集積、農作業の効率化などを支援しているところです。
一方で、地方に暮らす人々にとって農業とは、生業としてあるものと同時に、暮らしに溶け込んだ存在でもあります。
佐久市は、健康長寿県・長野のなかでも屈指の健康長寿都市であり、その要因には、気候、文化、食生活、保健活動や医療機関の充実など、様々あると言われていますが、中でも暮らしに溶け込んだ農業の存在を欠かすことができません。農作業や農作物の実りがもたらす生きがい・やりがい、自然の営みに調和した時間の中で自分らしく暮らす生活様式などが、心身の健康に多大に寄与していることは間違いないでしょう。
佐久市では、この「産業としての農業」と「暮らしとしての農業」を、対立軸ではなく車の両輪として捉えています。「暮らしとしての農業」は、必ずしも市の農業振興を牽引していくものではありません。しかしながら、農業には、暮らしやすさ、健康長寿、ひいては市民の幸福に対して大きな影響を持つ力があるという考え方であり、それこそが農業が持つ多面性、地方に暮らす価値の一つと言えるものと考えています。
小規模農家が多く、農家1戸あたりの販売金額が小さい佐久市農業の特長を悲観的に捉えることなく、むしろ積極的に評価することで、佐久市が目指す「快適健康都市」の重要な役割を担う存在として、維持・推進を前面に打ち出しているのが大きな特長なのです。
かつてなにかの書物で読んだことがあります。健康に暮らしたいのですがどうすれば、という問いに対し、健康長寿の要因を研究するどこぞの大学の権威がこう答えたといいます。
「なにか特別なことをするより、長野県で暮らしたほうが手っ取り早い」と。
いかがでしょう。佐久市と佐久市の農業は、皆さんの快適で健康な暮らしをお手伝いします。
都会にない豊かさと充足した生活を求めて移住・定住を検討されるときは、是非佐久市を思い出してみてください。