本文へスキップ

東井悠友林


 〜 新型コロナウイルス感染をどうするか 〜

                                         アジア太平洋臨床栄養学会会長
                                         (元国立健康栄養研究所理事長・
                                          元国立がんセンター疫学部長)
                                             渡 邊 昌
星旦二氏写真

 新型コロナウイルス感染症者は、現時点で日本で1000人を超え、世界では9万5千人
以上がCoVid-19肺炎になっている。死者は3298人とのことで死亡率は3.45%となる。
日本はクルーズ船内からの発症をのぞくと感染者数は342人なので、世界的なパンデミッ
クとなりつつある中では予防策が成功しているともいえる。政府は学校休校や会議やパーテ
イの中止、中韓からの入国規制など、いままでにない大掛かりな規制を始めたが、出口戦略
のない泥縄的スタンドプレーにも見える。オリンピックが開けるかどうかの瀬戸際ともいえ
るからだろう。日本を見ている諸外国は日本からの入国制限をつよめ、ブーメランのように
影響をもたらすであろう。
 コロナウイルス感染をインフルエンザと対比させる論説も散見され、過度の恐怖心をいだ
かないように、という意見もみられるようになった。コロナウイルスはSARS(重症呼吸
器症候群), MERS(中東呼吸器症候群), CoVid-19とほぼ8年ごとに流行している。今
回の死亡率をみると中国、イタリアが3%台、日本は1.1%、香港は1.9%、それに対して米
国は7.2%もある。ちなみにSARSの死亡率は10%であった。MERSはサウジアラビア
では30%、韓国では20%であった。今回の流行のスピードには驚くが、今まで暴露された
ことがなく、免疫がなくうぶな状態であったから、といわれる。
 私は最初の報告があったとき、高齢者の発症にかたよっていることから弱毒性でヘルペス
のように人と共生をはかるウイルスと思っていた。もう今となっては絶対排除よりは共存の
方法を探した方がよいと思う。キーは自然免疫力であろう。ワクチンや有効な殺ウイルス剤
のない時点では炎症性サイトカインや1型インターフェロンといった原始的免疫が働いてい
ると思われる。ヘルペスやHPV, C型肝炎など、人と共存しているウイルスはいくらもあ
る。DNAには内在性ウイルス要素といわれる部分が8%もあり、長い進化の過程でRNA
媒介免疫を担ってきた。マイクロRNAなども獲得免疫機構が動くまえに反応して、発症をお
さえているのであろう。日本と米国の死亡率が大きく異なるのは食生活等による自己免疫の
違いが表れたのではないか。
 コロナのリセプターは上気道の細胞に分布するACE(angiotensin converting enzyme)
レセプターとのこと。ここへの感染レベルを下げて発症を抑えるのは効果的。香港では人か
ら犬への感染も見つかった由。もう地球上の一員として受け入れるよりしょうがないであろ
う。自己免疫を高くたもつには腸管機能が重要。玄米食は、そのための最も簡単で経済的な、
わが身をまもる対策といえる。そもそも周期性におこることは地震でも津波でも次を予想し
た対策が必要だ。地球温暖化で生じる食料の問題にしても、科学的な対策を考えて備えてお
く必要がある。

                  (「医と食12(
4月号)」より転載)

バナースペース