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東井悠友林

〜 人間は協力を好むようにできている 〜  

        顧問 高 久 史 麿 (元日本医学会会長・(公財)地域医療振興協会会長)


 人間は社会生活を営む動物である。社会生活を営む上で、一定の秩序が必要で、そのために各社会
に適合した「しきたり」が有史以前からあり、さらに近代社会になってその一部が法律という形で明
示されるようになった。
 複雑な現代社会のなかで、一定の規律を維持するためには、法律の制定が不可避であるが、人間社
会の成立の基盤となることの一つに、協力ということがあると考えられる。協力という行為は人間に
だけにみられるとは限らない。蟻の巣作り、ライオンの獲物捕り、動物の子育てなど、動物の世界で
も幅広くみられ、おそらく多くの動物は個体・種族の維持のために、ある程度協力しあうことが、そ
の本能の一部となっているのであろう。
 それでは、人間の社会の協力は動物と同じように、本能によって行われているのであろうか。それ
とも協力は人間の知恵として生みだされたものであろうか。常識的に考えると、その両者が関与して
いると考えられる。
 前置きが長くなったが、人間も協力という行為を本能的に選ぶということが、最近、機能的MRIと
いう脳の各部分の働きを調べる、新しい研究方法で明らかにされている。
 この仕事は、アメリカのエモリ―大学の研究者たちが行った17人の女性を対象にした「囚人のジレ
ンマ」というゲームで行った研究で、対象とする女性たちは「相手と協力する」、「相手を裏切る」
のどちらかの行為を選択する。その結果、損得にかかわらず、大部分の対象者は「相手と協力する」
ことを選んだという。また協力することを選んだときの脳の働きを、上述の機能的MRIで調べたとこ
ろ、空腹時に食事を与えられたとき、お金を与えられたとき、嗜好品を提供されたときと同じ脳の場
所で、その活動が盛んになったとのことである。
 この結果は、他人と協力するという決断が、自分の好む物を与えられたときと同じ喜びを、精神的
にもたらすように、人間は作られていることを示している。すなわち、協力という作業の推進に、人
間でも本能的な要因が働いていることになる。しかし、ますます複雑化する現代社会で、人間がお互
いに協力しあうためには、理性に基づいた協力の必要度が、今後ますます高まるであろう。
 当法人は「共助」を活動の基本理念としているが、一人でも多くの人に喜んでいただけたら、幸い
である。


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