新春に思う(4) |
思えば、昨年の1月11日付けのエッセイ「2024年の年賀状」の内容も、先日書いた 「初春に思う(1)」と良く似ていた。 なぜなら昨年は、戦後79年続いてきた日本や世界の状態が、もはや持続不可能となり、 「従来の政治手法や経済成長至上主義だけでは立ち行かなくなってきた。地球環境の悪化 や核戦争等による、地球の消滅の危機も現実味を帯びてきた」と予測されたからだ。 だから「国内外の緊張状態が臨界点に到達し始めた。何が起こってもおかしくはない一年 になるだろう」と述べていたが、それは今振り返っても、ある種の予兆としてあながち的 外れな言葉ではなかったと、私は思っている。 2025年の今年は、戦後80年目にあたる。 少し話がそれるが、この正月に、不朽のロングセラーである、稲盛和夫氏(注・京セラや KDDIを設立し、それらの会長や日本航空会長等を歴任)の「生き方」(サンマーク出 版)を再読した。(注・全世界で2500万部超、国内150万部超、中国500万部超 の購買部数) 初版が発行されたのは2004年8月。今から20年6か月前。 その中で改めて読み直したのが、下記の部分(要約)。 「日本は近代に入って以降、約40年の周期で大きな節目を迎えてきた。 ① 1868年→封建社会から脱し、明治維新により近代国家を樹立。 富国強兵の道を走り始める。 ② 1905年→日露戦争に勝利。世界の列強の仲間入り、国際的地位を飛躍的に向上させ る。以降、富国強兵の『強兵』に傾斜し、軍事大国をまっしぐらに突き進む。 ③ 1945年→第二次世界大戦に敗戦。焦土の中から、今度は『富国』の方向へ大きく舵 を取り、奇跡的な経済成長を遂げる。 ④ 1985年→日本の莫大な貿易黒字に歯止めをかけるべく、円高誘導、輸入促進を目的 にプラザ合意が結ばれる。 (注・1985年9月、ニューヨークのプラザホテル(トランプ氏が一時所有していた) で、米・英・西独・仏・日本の5か国が会合。アメリカはドル高が進み、貿易赤字を抱 えていた。そこで『参加各国が外国為替市場に協調介入し、ドル高を是正しよう』とい うことで合意。 すぐに円相場は1日で、1ドル235円から→約215円に。翌年には150円台と、 円高ドル安に。1987年には1ドル120円台に。 日本は円高で輸出は減少→国内景気が低迷→日銀は低金利政策に→企業は円高メリット で景気回復→低金利で土地の売買が過熱、バブル景気に→1990年初頭の株価暴落→ バブル経済崩壊。以降今日まで景気の低迷が続き、長いトンネルから脱却できない) この40年ごとの盛衰サイクルを見ると、日本は経済成長至上主義のもと、企業も個人も 利や富を求め、それを増やすことに熱心で、いまだに多くの者が上へ、先へと急ごうとし ている。 社会、経済の停滞が続き、ドラスティックな発想転換の必要が言われている今でも、この 事情は変わっていない。 しかし、そのような価値観だけでは、もはや立ち行かなくなっており、敗戦に匹敵するほ どの『次の大きなどん底』に向けて下降線を描いていき、その速度に歯止めをかけること は難しくなるはずだ。 このまま手をこまねいていては、次の40年後の2025年頃には、希望的な将来像を描 くどころか、国そのものが滅びてしまいかねない危機もはらんでいる。 このままでは、日本が破綻してしまうだけではなく、人類の住処である地球そのものを自 分たちの手で壊してしまうことになりかねない。 それと知って、あるいは其れと気づかず、沈みゆく船の中で、なお奢侈を求め、飽食を楽 しむ・・。私たちはその行為のむなしさ、危うさに一刻も早く気づき、新しい哲学のもと に新しい海図を描く必要がある」 稲盛氏はそのように警鐘を鳴らしていた。 稲盛和夫氏がこの本を書いたのは、今から20年余り前の2004年。 だが、当時と現在の日本社会を思い比べてみると、当時よりさらに現在の社会の方が、国 民の不安感と閉塞感に満ちている。一段と国力が落ちた感がある。 希望がない。活力がない。何も進んでいない。 そして、今年は稲盛和夫氏が文中で憂慮していた「2025年」になった。 プラザ合意から40年目。バブル経済で高騰した株価が大暴落した1992年から33年 目。 先日、米科学誌が終末時計を発表。地球滅亡までの時間が89秒となった。 昨年より1秒短縮され、発表を始めた1947年以降で、最も短いとのこと。 (注・終末時計は、人類滅亡の時を真夜中の0時に見立て、初期設定は残り7分。 私の誕生年も1947年。 そして現在77歳と4か月。 終末時間は、あとどれくらいだろうか。 男子の平均寿命は約81歳。 平均余命は加味せずに単純に考えると、あと4年ほど。 ただしこの数値も、戦後80年間もの間、日本が一度も戦争をせずに平和な時代だったか らだ。 だが、これからはまだわからない。明日にでもミサイルが飛び交う事態が生じたり、首都 圏直下型地震や東南海地震などが起こるやもしれぬ。 あと4年間でも日本の不戦状態が続き、大災害や不慮の事故に遭わず、致死の病気にかか らなければ可能だが。 だが「どうにもならないことで悩むのは、限られた人生の無駄遣い」との言葉もあるとお り、自分の力ではどうしようもないことに、日々悩んでみても詮無いこと。 それより「今年は、いつ、どこで、何か大変な事態に見舞われてもおかしくはない年にな りそうだ。だからその覚悟だけはしておき、その事態に襲われたらじっと辛抱しながら事 態の収束を待つのだ」と心を定めたのが、今年の元旦だった。 今年の終末までの時間は329日。 60秒×60分×24時間×329日=28425600秒あります。 健やかで悔いのない毎日を、刻んでいきたいものです。 今年を乗り切れば、来年以降の世界は新たな良い方向へ変容していく気が、私はします。 「♩負けないで もう少し 最後まで走り抜けて・・」(歌・ZARD) それでは良い週末を。 |